TETRA'S MATH

数学と数学教育

現行の指導要領のもう1つの特徴である「算数的活動」と、新指導要領全体のテーマである「言語活動の充実」について

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 1つ前のエントリで、現行の指導要領においては、第1学年・第2学年で「D数量関係」が加わったことについて書きましたが、もうひとつ現行の指導要領の特徴として、すべての学年に〔算数的活動〕が加わったことがあげられます。

 指導要領解説では、次のように説明してあります。(冊子p.8/算数(1)PDFファイルp.9)
 算数的活動には,様々な活動が含まれ得るものであり,作業的・体験的な活動など身体を使ったり,具体物を用いたりする活動を主とするものがあげられることが多いが,そうした活動に限られるものではない。算数に関する課題について考えたり,算数の知識をもとに発展的・応用的に考えたりする活動や,考えたことなどを表現したり,説明したりする活動は,具体物などを用いた活動でないとしても算数的活動に含まれる。

 この〔算数的活動〕は、第1学年から第5学年においては5項目、第6学年においては4項目設けられています。冊子p.15(算数(1)PDFファイルp.17)の一覧表がわかりやすいです。

 印象的なのは、第2学年から第6学年までの項目のなかに、「説明する活動」という文言が必ず含まれていることです。なお、第1学年では「説明する」まではいかず、「表す活動」となっています。第1学年で「オ 場面を式に表す活動」という項目があることと、第2学年で「図や式に表し説明する活動」という項目があることが気になります。

 低学年に「D数量関係」が加わったことで、式表現に重きがおかれるようになった(という印象がある)ことについてはすでに書きましたが、〔算数的活動〕においても、「場面を表したり、説明するためのもの」として、式表現が捉えられているようです。

 それ自体は否定すべきものではなく、確かに式には「どういう考えで解いたか」を表現するという役目があると私も思います。しかし、式が「場面を忠実に表す」ものとみなされるようになったことが、「かけ算の順序」問題を強化してしまったのではないか、といまでは考えています。「かけ算の順序」問題自体は、何十年も前からあったとしても、せいぜい採点のレベルだったと思うのです。しかしいまでは、先に式を与えて「これはどの場面を表していますか」というような問題も、一部の教材では登場しているようです。さすがにこれには驚きました。

 どうしてこんなことが起こってしまったのだろう…と首を傾げるなか、興味深い書籍を見つけました。

小学校新学習指導要領 ポイントと授業づくり 算数〈平成20年版〉

 著者である金本良通さん、滝井章さん、赤井利行さんは、3名とも指導要領解説の作成協力者です。そして出版社は、指導要領解説を発行している東洋館出版社です。

 私はこの書籍を直接手にしてはいないのですが、ありがたいことに「クリックなか見!検索」で最初の部分を読むことができるのです。そこには、今回の改訂は歴史に残る改訂であるとして、いくつかの特徴があげられています。

 私にとって印象的だったのは、今回の改訂が「言語活動の充実、理数教育の充実」をうたったものであることをふまえて、どうやら算数教育にも「言語活動の充実」が取り込まれたらしいということです。

 実は、このこととは別に、娘の学校の保護者会などで、気になっていることがありました。それは、教育現場に「プレゼン」という言葉が入り込みつつあることです。すでに書いたように、いま教育の現場では「説明する力」を子どもたちに求めているようで、それは大変にすばらしいことなのですが、この「説明」あるいは「表現」、その道具としての「言葉」「式」「図」というものが、妙な形、薄っぺらな形で解釈され、現場におろされてきているのではないか、という疑問をもっています(ちなみに、学校においては特に問題点は感じておらず、ただ単純にプレゼンという言葉が気になっただけなのですが…)。

 私は、今回の指導要領の改定のテーマが「言語活動の充実」と「理数教育の充実」であることをこのたび初めて知ったのですが、なぜわざわざ算数教育に「言語活動の充実」を取り込まねばならなかったのか、頭のなかで疑問符がとびまくっています。

 たとえば、指導要領解説の冊子p.47(算数(1)PDFファイルp.54)の“「D数量関係」」の領域のねらい”のところに、こんなことが書いてあります。
 また,「式」は,算数の言葉ともいわれるように,事柄やその関係などを正確に分かりやすく表現したり,理解したりする際に重要な働きをするものである。また,式を読み取ったり,言葉や図と関連付けて用いたりすることも大切である。
 さらに、冊子p.50〜51(算数(1)PDFファイルp.57〜58)には“式の表現と読み”という項目もあり、式の働きが4つ、式の読み方が5つ示してあります。このような指導要領解説をもとに教材が作られれば、「次の式はどんな場面を表していますか」といった問題が、挿絵のなかから答えを選択する形で出されるのも不思議はありません。この問題は、「5+3で答えが求められる問題を考えましょう」とは意味が異なります。ある意味、正反対です。

 後者は、1つの式がいろいろな場面に適用できるからこその問いですが、前者は1つの式には1つの場面が対応すると考えての問いです。何しろ「式」が事柄を正確に表現しているものとされているから、その式にあてはまる場面は、選択肢のなかではただひとつに決まる、ということになってしまうのでしょう。

 たったひとつのたし算、たったひとつのひき算から、たし算・ひき算の意味を学ぶことはできません。「異なる別の場面が、同じ式で表現できて、同じ計算で答えを求めることできる」ことを知るには(指導要領解説にもそれに近いことが書いてあることは書いてあるのですが)、つまり「違うのに同じだね」を感じるためには、違う場面(加法であれば合併や増加、減法であれば求残や求差)が複数必要であり、そのために用意するようなものなのに、いつまでもその「違い」に注目させていては、算数の目的が果たせない。

 式が、ある場面を正確に表現しているのなら、いつまでもその「場面」にこだわらざるを得ず、結果的に、同じ式、同じ計算なのに意味が違う、ということが強調されることになってしまいます。だとしたら、現状のような教科書・指導書になってもしかたがないといえばしかたがないです(でも、教科書・指導書・教材を編集する人は気持ちわるくなかったのだろうか? 気持ちわるくてもそう作るしかなかったのか?)。

 というわけで、教科書会社や教材会社が、指導要領を拡大解釈した、深読みした、という部分がまったくないわけでもないかもしれないけれど、指導要領解説自体に、検討すべき点が多々含まれていると感じています。

(つづく)
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平成20年の改定で、低学年においても「D数量関係」の領域が設けられたこと

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 小学校の学習指導要領では、算数の内容が「A数と計算」「B量と測定」「C図形」「D数量関係」の4領域に分けて示されているのですが、第1学年・第2学年に関しては、過去の指導要領ではD領域がありませんでした。しかし、平成20年の改定では第1学年・第2学年にも「D数量関係」が設けられ、全学年通してこの4領域となっています。指導要領解説(冊子p.9/算数(1)PDFファイルp.10〜11)では、次のように説明してあります。
 今回の改訂では,低学年においても「D数量関係」の領域を設けることとした。これによって,第1学年から第6学年までにわたって,「A数と計算」,「B量と測定」,「C図形」及び「D数量関係」の4領域ごとの内容が示されている。

 実際には次のような形で加わっています。


現行の指導要領本文から抜粋]

<第1学年>
D 数量関係
(1) 加法及び減法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすることができるようにする。
(2) ものの個数を絵や図などを用いて表したり読み取ったりすることができるようにする。

<第2学年>
D 数量関係
(1) 加法と減法の相互関係について理解し,式を用いて説明できるようにする。
(2) 乗法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすることができるようにする。
(3) 身の回りにある数量を分類整理し,簡単な表やグラフを用いて表したり読み取ったりすることができるようにする。


 このうち第1学年の(2)と、第2学年の(3)は、統計的なものの見方につながるということで、高学年のD領域につながる項目と私は捉えています。その他の部分は式表現に関する文言になっており、過去の指導要領で「A数と計算」のなかに入っていたものが、わざわざ別立てで強調されている形になっていると言えます。

 同じ変化が、もともと「D数量関係」領域のあった第3学年についてもみられます。


平成元年改定の指導要領本文から抜粋]

(1) 数量の関係を式で表したり、それをよんだりすることが漸次できるようにし、そのよさが分かるようにする。
 ア 数量の関係を公式の形に表したり、それらをよんだりすること。
 イ 数量を□などを用いて表したり、それに数を当てはめて調べたりすること。
(2) 資料を表やグラフで分かりやすく表したり、それらをよんだりすることができるようにする。
 ア 日時、場所などの簡単な観点から分類したり、整理して表にまとめたりすること。
 イ 棒グラフのよみ方及びかき方について知ること。

平成10年改定の指導要領本文から抜粋]

(1)資料を表やグラフで分かりやすく表したり、それらをよんだりすることができるようにする。
 ア 日時、場所などの簡単な観点から分類したり、整理して表にまとめたりすること。
 イ 棒グラフのよみ方及びかき方について知ること。

現行の指導要領本文から抜粋]

(1) 除法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすることができるようにする。
(2) 数量の関係を表す式について理解し,式を用いることができるようにする。
 ア 数量の関係を式に表したり,式と図を関連付けたりすること。
 イ 数量を□などを用いて表し,その関係を式に表したり,□などに数を当てはめて調べたりすること。
(3) 資料を分類整理し,表やグラフを用いて分かりやすく表したり読み取ったりすることができるようにする。
 ア 棒グラフの読み方やかき方について知ること。


 平成10年の改定で内容が厳選された際に「式表現」への言及がなくなっているのですが、平成20年の改定で内容が増えるにあたり、平成元年の内容が復活するだけではなく、「除法が用いられる場面を…」という具体的な指定(A領域から移行)や、「式と図を関連付けたりすること」(新設)といった文言が加わっています。

 そういう意味では、「解説」のまえにすでに指導要領の段階で、「式の意味」に重きがおかれるようになっている、ということは言えるのかもしれません。

 なお、高学年では、関数的、統計的なものの見方、あるいは文字式、方程式につながる式の捉え方、公式としての式の捉え方がD領域に入れられています。

 指導要領で算数が4領域に分けて示されているのは、「算数の内容の全体を見やすくし,内容の系統性や発展性を分かりやすくするため」(指導要領解説冊子p.9/算数(1)PDFファイルp.10より)らしいので、低学年のD領域は高学年のD領域につながると考えてもいいのではないかと思います。

(つづく)
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「かけ算の順序」問題について思うこと(2013年版)と、学習指導要領「解説」について

 小学校で「かけ算の順序」が固定されて教えられていることが、ネット上で論争になるようになって久しいです。特に小学2年生のかけ算の学習時期にあたる2学期の後半でよく話題になるようで、Twitter歴6ヶ月の私は、なるほどこんなふうに盛り上がっていくのか〜と、はじめての「掛順 on Twitter」を体験しました。どなたかがおっしゃっていたように、年末の恒例イベントとなりつつあるのかもしれません。

 私自身も、これまで「かけ算の順序」問題に関連する話題を、けっこう書いてきました。カテゴリーも作りました。しかし、後で述べるような辛さから、これらのエントリをばっさり削除したい衝動にかられることがたびたびありました。だけど、どなたかの何かのヒントになるかもしれないと思い、そのままにしておいたし、そういう私の心情の“つぶやき”に対してリプライもいただけたので、やっぱりそのままにしておこうと思ったしだいです。

 そんなこんなで、まったく無関係でもいないけど、ある程度の距離もたもつようにしていたこの問題なのですが、今年は少しだけ踏み込むことになりました。(そうは見えないかもしれませんが・・・)

 ひとつには、やはりTwitterを始めたことが大きいと思います。

 それから、いろいろと現状を知るにつけ、私がこれまで違和感を全開にしてきた二重数直線のことを含め、小学校の算数を全体的に検討したいという気持ちが強くなってきたということもあります。

 さらに、この辛さに耐えられなくなった、ということもあります。もしかしたらこれがいちばん大きい理由かもしれません。

 何が辛いかというと、実は小学校算数の現状ではなく、その惨状を訴える声のアグレッシブかつ反復エンドレスな語調・論調が辛いのです。もちろん、かけ算の順序を固定することに強く反対する人の中にはいろいろな人がいると思うので、それらを十把ひとからげで語ることはできませんが(逆の立場もまたしかり)、でもやっぱりときどき辛い。そして、ある種の不安がずっとつきまとっています。この不安をなんとか表現できないだろうか……と考えているのですが、なかなか言葉が見つかりません。

 立場としては、私は「かけ算の順序にこだわり続けることに反対」なのですが、だからこそ、その反対の仕方が気になってしまうのかもしれません。というわけで逆に、かけ算の順序に強くこだわる人の声は、ほとんど耳に届かないという状況になっています。まあ、実際の現場がそうなっているので、あたりまえといえばあたりまえのことかもしれません。

 何に不安を感じているのか、その言葉を見つけるためにも、はやく自分の勉強にもどりたいのだけれど、もうどうにもこうにも辛いので、学習指導要領「解説」を手にするところまできてしまいました。もし、この指導要領「解説」が、法的には拘束力がないのに、検定において実質的に拘束力がある(と検定教科書会社が思っている)のであれば、1社のみならず複数の会社が版をおしたように「かけ算の順序」にこだわるようになったこと、二重数直線を多用することになったことの説明がつくのではないか、と思い始めています。実際どうであるかはわかりません。

 私は、中学校に比べれば個性豊かであったはずの小学校の算数の教科書が、題材の選び方においてはひきつづき個性があるのにも関わらず、少なくとも「かけ算の順序」と「二重数直線」については、ほぼ同じ立場、あるいは近い立場をとっていることが不思議でした(私の問題意識はかけ算ではなく二重数直線のほうにあったので、前者については「そうであるらしい」というまた聞きの段階です)。

 だから、教科書会社って意外と狭い世界で、結局どの会社も、その時代に有力な学説か、流行の方法論か何かを参考にして作ってるのかしらん? あるいは意外とお互い情報交換してるのかな? なんてことも考えてしまっていました。

 しかし、実際に拘束力のある指導要領には大したことが書かれていないのに、それについての丁寧すぎるほどの「解説」が存在しており、拘束力がないとされているので俎上にあげることもできず、しかし教科書会社はこれをもとに教科書をつくり、指導書をつくり、教師はその教科書と指導書をもとに授業を行い、教材会社はそんな教科書を参考に教材をつくるという構図が成り立っているとしたら、いろんなことの説明がつきます。誰も責任を負わなくていい構図になっていることの説明です。

 ところが。これでスッキリと思いきや。

 まだ、解説を十分読み込んでいないのですが、比例の扱いについては、依然、説明がつかないのです。「解説」における比例の説明には、まともなことしか書いてありません。(全体にわたる比例の捉え方ではなく、小学6年生の実際の「比例の学習」について)。

 学習指導要領「解説」には15名の作成協力者がいるようなのですが、だれがどこを担当したのかはわかりません。なお、当時の肩書きは、大学の先生が6名、小学校の先生が5名、教育委員会の指導主事が2名、中学校の先生が1名、フリーアナウンサーが1名となっています。ちなみに文部科学省の編集者は5名。

 もしかしたら担当といったものはなく、それぞれの協力者の意見を取り入れながら、文科省が編集したのかもしれませんが、いずれにせよ「この記述の根拠・参考文献・背景がもっと知りたい」と思っても、たどっていくことが難しい、そんな冊子になっています。念のために書き添えておくと、かけ算の順序や二重数直線をだれがいい出したのかの“犯人”さがしをしたいのではないのです。何がどうしてこうなったのかを知りたいのです。

 というわけで、学習指導要領「解説」を本気で読み込んでいくには、相当時間がかかりそうで、どこまで関わるか自分でもまだ決めていないのですが、とりあえず気のすむまで読んでいくことにしました(年は越さない予定^^;)。

 なお、学習指導要領「解説」は、web上ではここからたどれます。↓
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 位置づけについては、こちらに書いてあります。↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/ chukyo/chukyo3/016/siryo/05063002/003.htm

(つづく)
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現行の算数の教科書は、「子どもの主体性」や「自らの力で考えること」の意味を勘違いしていることを、こんな比喩で考えてみた。

 先日知った、以下の資料を読みながら考えたことを書いていきます。なお、これは教育出版というひとつの会社の資料ですが、これをもとにして現在の算数の検定教科書全体を考えることができると私は思っています。むしろ、こういう資料をweb上で公開していただいていることは、大変にありがたいです(他社もさがせばあるのかもしれません)。

 後日、学習指導要領の「解説」も検討したいと思っていますが、現段階ではとりあえず、教科書会社に対する意見として書かせていただきます。

■教育出版>線分図・数直線の指導の系統
https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/ view.rbz?pnp=100&pnp=109&pnp=237&nd=237&ik=1&cd=1934

 私が「乗法,除法のための数直線」に出会ったのは、2011年6月のことでした。当時小学校4年生だった娘が、「テープ図がわからない」と言ってきたのがきっかけです。私にとってテープ図というのは、上記資料p.2の上から2番目のような図(加法,減法のテープ図)だったので、「あれ? 最近はわり算の筆算をやってたんじゃなかったかな……□を使った式でもやっているのかしらん?……でも3年生のときにやってたよな……」と不審に思っていると、かけ算・わり算のテープ図だと言うのです。ちなみに、娘の学校の自治体は学校図書の教科書を採択しています。

 首を傾げながら教科書をのぞいてみると、上記資料のp.2のいちばん下に示されている図で、上側をテープ図にした図が描かれてありました。目盛りの取り方は「乗法・除法の数直線」と同じなので、「乗法・除法のテープ図」から「乗法・除法の数直線」への過渡期の図でもよびたいような図です(私は現在、このような図を一括して二重数直線とよんでいます)。また、教科書には、4つの数値の関係を表にまとめたものも載っていました。

 初耳ならぬ初目の図でした。最近の教科書はこうなってきているのか、と驚くとともに、背後に何か・・・何らかの意図を感じました。早い段階から、比例を導入しようとしているな、と。

 「めんどくさくて、わからない」という娘に、私はこの図の“使い方”を教えることをしませんでした。問題を解くために図があるのか、この図を理解することがかけ算・わり算の学習なのか、わからなくなってしまうから。

 上記資料の冒頭には、こんなことが書いてあります。
 新学習指導要領では,子どもが算数の学習に「目的意識をもって主体的に取り組む」ことを重視し,4つの領域を横断する形で「算数的活動」を具体的に示しました。なかでも,「計算の意味や計算の仕方を,言葉,数,式,図を用いて考え,説明する行動」は,低学年から高学年にわたって繰り返し例示されており,極めて重要な活動として位置づけられています。
 「計算の意味や計算の仕方」を考えたり説明したりするときに用いる図として,最も頻繁に用いられるものに線分図・数直線があり,教科書でも繰り返し登場します。しかし,線分図・数直線を自分でかいたり操作したりして考えられる子どもは意外に少ないようです。線分図・数直線は,自然にかけるようになるものではなく,そこには系統的な指導が必要となります。
 そこで,本資料では,線分図・数直線がどのような系統で登場するのかを,平成23年度から使用される教科書『小学算数』をもとに解説します。線分図・数直線を活用して,子どもたちが自らの力で計算の意味や計算の仕方を考えられるようになることを,そして算数の学習を創り上げていく楽しさをもっと実感できるようになることを願っております。
 もともと二重数直線に違和感を感じていた私は、この文章を読んで、あらためてこう思いました。教科書会社は、子どもが「主体的に取り組む」ことや、「自らの力で計算の意味や計算の仕方を考えられる」ということの意味を、大きく勘違いしているな、と。

 本来であれば、「主体的に取り組む学習」は、「題材(問題)そのものを子どもたちが見つけてくる」レベルで論じるべきだと思っています。しかし、それを教科書に求めるのは筋違いだとも思います。言い換えると、教科書は根本的に、「子どもの主体的な学習のためのもの」ではないと私は思っています。そのような役目は担えないし、担う必要はない。教科書が心を砕くべきことは、子どもの主体性を損なわないこと、そして、子どもの主体性を損なわない授業を作ろうとする教師の仕事を邪魔しないことだと思うのです。

 しかし、教科書を作らないわけにはいかない。したがって、なんらかの形で子どもたちに「自らの力で」計算の意味や計算の力を考えられることを目的とした内容にしなくてはいけない。かくして、使いこなせるようになれば便利であろう道具を駆使するという構図になってしまったのだろうと想像しています。道具を与えれば、「自分で」解けるようになるだろうということを、「自らの力で」と思ってしまってはいないか?

 さらに、「線分図・数直線を自分でかいたり操作したりして考えられる子どもは意外に少ない」ということが、「線分図・数直線は,自然にかけるようになるものではなく,そこには系統的な指導が必要となります」という発想につながっています。二重におかしな話です。

 たとえていうならば・・・…

 いま、きゅうりの浅漬けを作るために、きゅうりを切りたいとします。でも、そばに包丁がない。どうしようか? 何かほかに刃物はないか。刃物がなかったら、それに近いものはないか。定規はどうだ!? 糸で切れないか!? この際、ちぎっちゃう!? あ!そういえば、いまの目的はきゅうりを切ることではなく浅漬けを作ることなので、袋に入れて硬いものでたたいてみたらどうだろう?...

 こういう試行錯誤が、「自らの力で解決する」ことだと思うのです。なのに教科書は、この商品の使い方を教えようとする。↓
http://store.shopping.yahoo.co.jp/royal3000/x556.html
(あくまでも比喩ですので、メーカーの方、お気をわるくなさいませんよう〜)

 この商品を使いこなせることが、「自らの力で考える」ことだと思ってしまう。

 本来だったら、「何を作りたいか?」という段階から考えたいけれど、ひとりひとりが作りたいものを考えて、それで授業を構成していくのは、やっぱりなかなか大変だから、今回は「きゅうりの浅漬け」というお題にしてみよう。そこまでは教科書の役目かもしれません。

 そのために、きゅうりの切り方の種類を示してもいいし、浅漬けの作り方を教えてもいい。

 でも。

 クルールココシザーはいらないでしょう?

 (あくまでも比喩ですのでぇ!……
  なお、比喩のための道具を検索しているときに見つけて、
  このたび初めて知った商品です。)

 「こういう便利で面白いものがあるんだよ、使い心地いい人はどうぞ」ならば、それもまた一興かもしれません。でも、これ1本でなんとかしようとすることが、料理の「創造性」につながるとは到底思えないし、“たたききゅうり”の路線でいくことにして、いままさにすりこぎを手にしている子に、ココシザーを渡すのは迷惑だし、滑稽です。それよりもなによりも、最初からココシザーを与えてしまったら、他の方法を考えなくなってしまう。それこそ主体性や自らの力で解決する姿勢をそぐ、余計な道具ではないでしょうか。

(ただ、幸いにも、二重数直線は現場ではそれほど“便利な道具”としては浸透していないかも…という印象をなんとなくもっているきょうこのごろです。使ってはいるようですが。)

 以前、「比的率」は外延量という考え方(12)/様々な「1」が混在してしまうことというエントリで、とある授業研究を取り上げましたが、あのときも同じことが起こっていました。最後のまとめの部分を、もう一度書き出します。

http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp:8080/dspace/
bitstream/10191/13193/1/41_25-32.pdf
(p.32)
 問題場面から比例的な関係を見いだしていたものの,数直線やテープ図に適切に表すことができた子どもはほとんどいなかった。それに対し,橋本は,カエルの体長ととぶ長さにある関係を数直線に表すことで,二つの数量にある比例的な関係を顕在化することができた。
 高学年の橋渡しとなる中学年の段階で,比例的に推論するための道具として,数直線やテープ図を積極的に使っていくことが大切である。二つの数量を比例的に推論する活動とテープ図などに表す活動とを意図的に設定することが,子どもの比例的な見方を育てることになると考える。
 はじめの2行は、こう言い換えることができないでしょうか。→「数直線やテープ図に適切に表すことができなくても、問題場面から比例的な関係を見いだすことはできる」と。

 なお、この授業研究の「本研究の目的」では、次のようなことが書いてあります。引用ではなく、私なりの要約です。↓
「比例的に推論するための道具として、二重数直線は有効に用いられる可能性があると言われているが、実際に授業で使ってみると、子どもたちは比例的に推論するための道具としてうまく使えない。有効に使うためには、子どもたちが、対応する二量の関係や比例的な関係を見出す必要がある。」

 本末転倒で自家撞着な堂々巡りになっていると感じるのは、私だけでしょうか。

 教育出版の資料のp.8にも、こう書いてあります。
 数直線を活用できる子ども,活用しようとする子どもを育てるには,乗数や除数が整数の段階から読み取りを丁寧に指導し,その機能を理解させていくことが大切です。

 完全に話が転倒しています。

 「数直線を活用できる子ども,活用しようとする子どもを育てる」ことが、算数教育の目的ではないということは、さすがに教科書会社の方々にも同意していただけるのではないでしょうか。

 算数教育の目的とは何かということ、そのために教科書には何ができるかということを、教科書会社の方々にあらためてしっかりと考えていただきたいし、次の改定のときまでに、十分検討していただきたいと願っています。
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「線分図・数直線の指導の系統」を示したwebページ

 Twitter経由で、以下のwebページを知りました。

■教育出版>線分図・数直線の指導の系統
https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/ view.rbz?pnp=100&pnp=109&pnp=237&nd=237&ik=1&cd=1934

 すばらしい! いえ、すばらしいのはもちろん中身ではなくて、こういう資料を公開してくださっていること&見つけてくださったことです!! なんでもかんでも検索に頼らずに、ときには関係サイトから丁寧にたどっていかないといけないなぁ〜!と思うことでありました。

 数直線がどう系統づけられているのかわかるうえ、何がありがたいって、こういう資料がweb上で公開してあると、教科書をスキャンして画像を取り込んだり自分で描き起こしたりする必要なく、リンクして線分図について語れることです。手間が省けます。(^^ヾ もちろん、これは教育出版というひとつの会社の資料ではありますが、現在の算数教育全体を考えるうえで、とても参考になります。

 作業を始めたはいいけれど、どうしたものかと考えあぐねていたところ、ナイスタイミングで教えていただいてよかったです。ありがとうございました!(^^)/

 特に、p.8の「乗法、除法の数直線の機能とその指導」は大変参考になります。教科書会社って、こういうふうに物事を考えるのですね〜〜

 とにかくこの資料のなかに、いままで教科書についてブログで書いてきたことが全部入っているように思いました。ただし、小6の比例の学習そのものについては触れられていないようですね。教育出版では、比例の学習で二重数直線は出てこないのかしらん?

 それから、指導要領解説の算数編もweb上で見られることがわかったので、そちらもリンクさせていただきます。
http://www.shizuoka.ac.jp/kyouyou/License_renewal_25/ text/0821_kunimune_text.pdf

 きょうはひとまずリンクまで!

(ちなみに、最近はこどものちかくで算数の話題を書いています。)
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