TETRA’s MATH

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「ランチには、コーヒーまたは紅茶がつきます」

 「AまたはB」を「A∨B」や「A∪B」で考えると、Aのみ成立、Bのみ成立、AとBの両方が成立のすべての場合がOKですが、そうでない“または”もあります。

 たとえば喫茶店で「ランチには、コーヒーまたは紅茶がつきます」と言われ、コーヒーと紅茶のどちらか一方しかつけてもらえないのならば、この場合の“または”は「どちらか一方のみ」の意味になります。

 このような“または”を「排反的選言(排他的選言)」というそうです。なお、ランチのコーヒー紅茶の話は野矢茂樹『論理学』に書いてあって、登場人物の一人である道元が「非論理的な喫茶店だな.」と言っていて可笑しいのですが、この本の中では排反的選言に▽の記号が当てられ、公認されている記号ではないと断った上で、あらたな真理関数が定義されています。

 さて、ブールは、「そして(かつ)」に×、「あるいは(または)」に+の演算をあてて論理の計算を行いましたが、“または”としてこの「排反的選言」を選んだそうなのです。

 だから、1+A は「1∪A」から「1∩A」をのぞいた部分となり、1−A と同じになります(ベン図でいえば四角の中のAの円の外側の領域)。さらに、1+A=1−A から A+A=0 が導けますが、「A∪A」から「A∩A」をのぞくと0なので、辻褄があいます。ということは、ブールが発見していた「指数律」は「・」に対する「ベキ等律」(x・x=x)だけであり、「+」に対しては成り立っていなかったんだな・・・。

 という話を知ったのちに『情報の論理数学入門』を読むと、理解するのが億劫だった「ブール環」に、がぜん興味がわいてきます。テキストでは、次のようにしてブール環の話が始まるのですが((+)は丸付きプラス↓)

 これまでみてきたように、ブール代数は通常の体における代数とはかなり異なった体系であるが、いろいろな点で似ているところもある.実際,ブール代数(B;+,・)において、次のような加法的な演算(+)を定義すると
        def
    x(+)y=( ̄x・y)+(x・ ̄y)  (x,y∈B

代数系(B;(+),・)は単位的可換環となる.
そんなことしたらダメだとはもちろん言わないけれど、「なんでわざわざここで新しい演算を定義して環をつくる必要があるのだろう? いま束を感じ取ろうとしているんだからしばらく環を出さないで欲しい〜」という妙な抵抗感があった私にとって、おおもとのブールの加法が排反的選言であったというエピソードは、ブール環を理解してみたいという気持ちを呼び起こすきっかけになりました。

(つづく)
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