TETRA'S MATH

数学と数学教育
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言葉遊びでブラケット

 確か「エルミート行列」を検索してたころだと思いますが、ブラ・ベクトル、ケット・ベクトル、ふたつあわせてブラケットというお笑いコンビのようなベクトルの話をあっちこっちで見かけて、なんだか難しそうな話だなぁ、と思いながら素通りしていました。きっと自分には関係のないことだろうと、理解しようともしなかった。

 でも、『なるほど量子力学』のなかの説明を読んでいたら、ああ、そういうことなのか、と少しわかってきた感じです。ちなみに考案者はディラックさん。

 で、ブラ・ケット記法の前段階の「行列から情報を取り出す操作」について、言葉遊びをしてみることにしました。物理的な意味はもちろん数学的な意味もない、ただのお遊びです。×0は消す、×1は残す、「たし算」は「文字をつなぐ」という約束にして、次の行列を考えてみます。

  

 この行列の右から列ベクトル(1 1 1)をかけてやると、

  

となり、列ベクトル(ちから うまい うどん)ができます。でも、このままでは最初の行列と最後の列ベクトルの区別がつきにくいので、もうバラバラにできないという意味をこめて、いちばん最後の列ベクトルの成分を漢字で表すことにします。

  

 今度はこれに、左から行ベクトル(1 0 1)をかけてやります。

  

 力饂飩ができました(「力」はともかく「饂飩」は平仮名のほうがおいしそうなんだけどな・・・)。なお、(1 0 1)ではなく(0 1 1)をかけてやると「旨い饂飩」ができます。

 次は、最初の行列に、右から列ベクトル(0 1 0)をかけてみます。

  

 そう、「かまど」が取り出したいんだけど、まだ部品だけで合体していないので、左から行ベクトル(1 1 1)をかけて、

  

 竃が出てきました。

 今度は次のような行列を考えてみます。

  

 まず、右から列ベクトル(1 1 0)をかけて、

  

 次に、左から行ベクトル(1 1 0)をかけて、

  

 これらの操作をまとめて次のように書くことにします。

  

 同じように、右から列ベクトル(0 1 1)、左から行ベクトル(0 1 1)をかけてやると、

  

 きしめんになります。

 では、右から列ベクトル(1 0 1)、左から行ベクトル(1 0 1)をかけてやると、何が出てくるでしょうか?

  

 答えは白文字になっています→ たくあん

(わたしはおなかがすいているんだろうか?)

 今回の場合、列ベクトルと行ベクトルの数字は同じ並びになっています。縦に並んでいるか、横に並んでいるかの違いで。こういうふうに、同じ数字の並びを縦から横へ変えることは、一種の転置と考えてよさそうです。

 で、複素数で考えるときには、転置のみならず複素共役を考えることになるそうです。たとえば右からかける列ベクトルを(1 i 1−i)とすると、左からかける行ベクトルは(1 −i 1+i)という具合に。このとき、右からかける列ベクトルを |> という記号で表して、これがケットベクトル、左からかける行ベクトルを <| という記号で表して、これがブラベクトル、2つをあわせると <|> となってかっこが閉じるので、ブラケットということのようです(この洒落はホントの話)。かっこが閉じたときに取り出されるものはベクトルではなくスカラーになっています。

 右、左からベクトルをかけてこういう操作をすることは、行列というただの文字の並びから「饂飩」や「竃」や「たこやき」などの単語を引き出すこと ―― 行列力学でいうならば「物理量」を取り出すこと ―― になるのでしょう。……なるのかな??


〔2018年3月24日追記〕

 分けて書いていた記事をひとつにまとめ、整理しました。
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