TETRA'S MATH

数学と数学教育
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プランクにヒントを与えた無限等比級数

 量子力学の入門本を開くと、まず「空洞放射」の話が出てきます。でも、最初から丁寧に理解しようとするとなかなか先に進めない……。「黒体ってなに?」「エネルギースペクトルってなに?」「ピークが高振動数側にシフトするってどういうこと?」という具合に。

 で、何かとっかかりはないかなぁ、と思ってページをめくっていたら、無限等比級数の式が出てきました。

  

 ここから空洞放射に切り込めました。よかった。

 さて、空洞放射についての実験結果のグラフ(横軸:振動数、縦軸:エネルギー)は、右側に裾野が広がる山のような形になっています。

 で、古典論の法則に基づいた式(レーリー-ジーンズの法則)でグラフをかくと、エネルギーは2次関数的に増えていくので、振動数が小さいところでは重なるのだけれど、実験結果の山の頂上少し前からはなれていって、あとはものすごーく離れてしまうことになります。

 これに対してウィーンは、古典粒子が熱平衡にあるときに従う「ボルツマン分布」というものをもとにして式を補正し、その結果、山型になって山頂から裾野にかけてはよく重なるグラフができました。でも、今度は振動数が小さいところでどうしてもあわさらない。

 実験結果とぴったり重なるような式はどうしたら得られるのだろう? 振動数が小さいときにはレーリー-ジーンスの式になり、大きいときにはウィーンの式になるようにすればいいのだけれど……。

 そんなグラフの式を見つけたのはプランクさん。ウィーンの式に「−1」を加えるだけで、実験結果とぴったり重なる式ができちゃったそうなのです。

  


 空洞放射の実験結果と

  ・振動数が低い部分でのみ重なる「レーリー-ジーンズの式」
  ・振動数が高い部分でのみ重なる「ウィーンの式」
  ・全体と重なる「プランクの式」

を見比べてみます。

  
  (『なるほど量子力学機拌湿絏躾傭より)

 どこが違うかというと、緑・黄色・ピンクの部分です。

 vが大きくなると黄色とピンクをほぼイコールで考えていいことは納得できます。

 でも、どのくらい大きいんだろう?

 もともと空洞放射の実験は、鉄を熱したときに、だんだん赤くなってそのうち白っぽくなっていくことを古典論では説明できないことから始まっていると思うので、可視光線の周波数を考えればいいんでしょうか? 3×(10^13)Hzくらいだそうです。だとすると、確かに十分大きい。1をひいてもほとんど影響はなさそう。

 では、振動数が低いほうについてはどうなんだろう? vが小さくなると、緑とピンクは近づいていくはずなのですが。で、ここで登場するのが指数関数の級数展開。

  

 xが小さい場合、後半はほとんど考えに入れなくていいので、2次以降の項を消してみます。(なぜ2次なのか、その目安はなんなのだ?とつっこみたい気分ですが、とりあえずおいておいて)

  

 これに x=hv/kT を代入してみると、

  

なので、プランクの式のピンクの部分はレーリー-ジーンズの式の緑の部分と同じになります。

  

 なるほど〜!

 プランクは次のような無限等比級数をもとにウィーンの式と自分の式との違いを吟味し、ある重要な結論に達したのだそうです。(by『なるほど量子力学機拌湿絏躾傭

  

 その結論というのは「空洞に閉じ込められた光のエネルギーは連続ではなくとびとびになっている」というものです。

 で、『なるほど量子力学機戮任蓮⊃尭或νの光のエネルギーを E=hν とし、光がとることのできるエネルギーはこの整数倍しか許されないと考え、そこからずーっと計算をしていってプランクの式までもってきています。

 という仮定を、プランクはどうやって見出したのだろう?

 で、プランクさんがどう考えたのかはわからないけれど、自分としてはプランクの式から無限等比級数に達してみたかったので、テキストに書かれてある式を逆にたどってみながらアレコレ考えていたのです。

 が、そこでハタと気づけば、hというのはプランク定数。すでにウィーンの式に入っています。これはどういうことなのだ?

 と思いきや、検索して見つけられるページでは、どれもウィーンの式にプランク定数hは出てきません。

 というか、E=hν の中のプランク定数hは結論だったんじゃなかったっけかな? そこから量子力学が生まれていったのではなかったかな・・・? 『なるほど量子力学機戮hが先に出てきているのは、話をわかりやすくするため、ウィーンの式とプランクの式の違いをわかりやすくするなんでしょうか。(補遺にボルツマン分布のことが詳しく載っているので、それをちゃんと読めばわかるのかもしれません。)

 「プランクの式」と「無限等比級数」と「エネルギーの整数倍」と「プランク定数」……これらはいったいどういう順番で展開されていったのか興味がありますが、そのためにはもっといろいろ本を読まなくちゃいけないようです。なお、ウィーンの式の段階で「光は粒子である」という仮定はすでに立てられていて、そうすることでウィーンの式は生まれたらしいです。

 プランクは、「光のエネルギーは連続ではなくとびとびの値しかとれない」ということから、すぐに「光は粒子である」という結論は出さなかったようです。いずれ古典論で解明できるだろうと期待していたのだとか。

 そして、プランクの式を見て、光は波ではなく粒子であるという提案をしたのがアインシュタインさんでした。

 実験結果にあう式を導き出すための計算上の便宜から生まれた仮定が、物理を大きく変えることになったのだなぁ、と感じています(そういう認識でいいの?)。というか、ひょっとすると物理ってそういうこと?


【余談】振動数を表す記号はブイではなくギリシャ語のニューだということ知りました。あちゃー。これまで全部ブイにしてきちゃったよ。そういえばブイは速さで使うことが多いもんなぁ。テキストはすぐ書きかえられるけど、数式の画像を全部書き換えるのは大変だなぁ。  でも、このブログのフォントだと・・・      ブイは v      ニューは ν  おんなじやん!?
〔2018年3月24日追記〕

 複数に分けて書いていた記事をひとつにまとめ、整理しました。

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