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圏論「圏の同型と圏同値」、段階的に考える

 随伴関係の雰囲気だけでもなんとか感じたくて旅に出るだけ出てみて、迷子になっていったんうちにかえって、装備点検中にこんがらがっているところ。

 これらを整理しなくても、随伴関係の雰囲気だけ味わうことは可能かもしれないけれど、部屋のなかがごちゃごちゃしていて出かける気になれないので、せめてもう少し整理することにした。

 ひとまず別のガイドブック『圏論の歩き方』をのぞいてみたら、p.89に
 自然変換で各成分が同型射であるものを自然同型(あるいは自然同値)といいます.
と書いてあった。実はウィキペディアの「自然変換」でも自然同型と自然同値は同じであるような言いまわしを見かけていて、「結局、同じことなのかな?」とは思っていた。

 ここはひとつ、ふつうの圏圏の圏関手圏について、素朴な図を描きながら考えてみることにする。なお、同型を表す「=の上に〜がのった記号」を、文中では「〜=」と示す。

 まずは、ふつうの圏について。以下の(1)の条件を満たす射fを同型射といい、この場合、対象間も同型となって「〜=」で結んで表記される。ここはいい。

図1


 次に、圏の圏。圏を対象とすると、関手が射となり、以下の(2)の条件を満たせば「圏の同型」が言える。記号も「〜=」が使われている。ここも、ふつうの圏と同じことなので、よしとする。なお、『圏論による論理学』では、条件(2)をみたすような関手Fは、「同型関手」(isomorphism)と呼ばれることがあるとしている。これも上記の同型射と対応するので、わかりやすい。

図2


 そして、関手の合成と恒等関手を結ぶ「=」が「〜=」にかわると、「圏同値」となる。なお、圏同値を表す記号は特に見当たらない。

図3


 最後に、関手圏。関手が対象で、自然変換が射なのだから、「関手圏の射として同型射であるような自然変換を自然同値と呼ぶ」のなら、次のようになるはず。自然変換sは勝手に名付けて登場させたもので、条件(4)も自分の考えで書いた。

図4


 これまでの流れで名前をつけるならば、可逆である自然変換を「同型自然変換」と呼び、対象としての関手を「関手の同型」と呼べばよかったんじゃなかろうか? そういえばウィキペディアの「自然変換」のページに「自然同型(あるいは自然同値もしくは函手の同型)」と書いてあったっけ。

 はたと気づけば、『圏論による論理学』でも『圏論の道案内』でも、圏同値は自然同型・自然同値をもとに定義されている。それはつまり、自然同型・自然同値の定義により関手の同型がつくれて、圏の同型の条件の「=」を少し緩めて「〜=」にできて、圏同値がつくれるということなのだろうか?

 圏論を学ぶ身としては、上記のように、ついつい「矢印」たちを低次から、つまり「射」「関手」「自然変換」の順で考えたくなるけれど、もともと圏論というのは自然変換を定義したくてつくられたもので、そのために関手の概念が必要になり、そうなると射・対象の概念が必要になった、という話を読んだことがある。『圏論の道案内』でもそのことに触れてある。

 最初のふつうの圏で考えれば、同型射というのは「行って帰って何もなかったことにしてくれる相手がいる」ように見える。簡単に言えば、「行って帰って同じ」と。そして、対象間の同型は「行って帰って同じになれる対象どうしはほぼ同じ」というふうに見える。

 「=」だと「同じ」で、「〜=」だと「ほぼ同じ」だとしたら、圏同値の関手は「行って帰ってほぼ同じ」であり、圏同値の圏は「行って帰ってほぼ同じ相手はほとんど同じ」ということなんだろうか?

 『圏論の道案内』では、このことを「ズレを許す」という言葉を使って説明してあるように思う。
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