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圏論「冪」、ものと働き

 「冪」という漢字には「おおう」という意味があるらしい。確かによく見れば「幕」という感じが含まれているし、しかも「幕」にワかんむりがかぶさっていてなんだかすごくおおわれている感じはする。

 「冪(べき)」と聞いてまず思い起こすのは、累乗のこと。次に思い浮かべるのは「べき集合」。いわゆる部分集合全体の集合。このあたりまでの冪はなんとなく「べき」と平仮名で書きたい気分。

 そして、圏論にも「冪」が出てくる。まずは『圏論による論理学』(清水義夫)の定義の図を見るだけ見ておく。なお、この本では「巾」の漢字表記になっており、一意的に存在する射の点線記号は採用されていない。本を参考に自分で描き起こしたこの図を図1とする。

  図1
  


 次に、『圏論の道案内』(西郷甲矢人・能美十三)の次の記述に目を向ける(右肩に小さなAがついているBはB^Aと示した)。
AからBへの写像全体の集合を B^A と書いたりするが、圏論における冪はこれを一般化した概念だ。より正確にいうと、この集合と先ほど述べたような「ものから働きへ」を支える写像との組を一般化したものだ。
(Kindleの位置No.2910-2912)

 AからBへの写像全体の集合B^Aなるものがあったのか。べき集合と紛らわしいのだけれど。少し調べてみたところ、どうやら配置集合と言われるものであるらしく、ブルバキはこれを冪と呼んだとの注釈も目にした。

 上記引用部分からわかるように、『圏論の道案内』では「冪」のところで「もの」と「働き」の話が展開されており、私にとっては懐かしい響きだった。しかも、「もの」を「働き」と思ったり、「働き」を「もの」と思ったりするという話になっており、ますます懐かしい。

 そういう話を聞くと、図1の「B^A×A→B」の見え方も変わってくる。AからBへの写像とAの組からBが出力されるように見えてくる。ちなみに、射についている ev というのは evaluation のことで、『圏論による論理学』では「値づけ」、『圏論の道案内』では「評価射(evaluation morphism)」と呼んでおり、『圏論の道案内』ではevalと書いてある。

 『圏論の道案内』ではAからBへの冪の定義を「一般射圏(コンマ圏)(A×()→B)の終対象」としてあり、こうなるとコンマ圏を理解せねばならず、これがまた一仕事というかそれなりの大仕事なので、そこまで理解するのは今後の宿題にするけれども、その話を聞いたあとで図1を見ると、なんとなくそんなふうにも見えてくる。

 ところで、図1には積から積への射が含まれていて、しかもそこに射のかけ算が示されていたりする。ここはおさえておきたい。『圏論による論理学』の図を、向きを変えて示すと次のようになる(図2とする)。なお、射についての説明は省略している。π1とπ2が2つずつあって紛らわしいのだけれど、そのまま書いた。

  図2
  


 図2を次の図3の左側のように描きかえれば、右側のふつうの積の図と同じような感じになるな、と思った。

  図3
  


 なので、図1のC×A→B^A×Aを射の積の定義にしたがって『圏論による論理学』を参考に図示すると、以下のようになる。

  図4
  


 ちなみに『圏論による論理学』でも、「Setの場合を考えると,A,Bを集合として,B^Aは{f|f:A→B}といえる」と書いてある。
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