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圏論「sieve」、10年めの再挑戦

 『時間の正体』(郡司ペギオ-幸夫)に出てくる「ジーブ」がなんなのかわからず、悶々とした過去から幾年月。圏論で出てくるsieve(ふるい)のことだとようやくわかってきた。それにしても、どうして「シーブ」じゃなくて「ジーブ」だったんだろう?

 圏Cの対象aについて、aを終域とする射の集合で、ある条件を満たすものをaにおけるsieveというらしいのだけれど、終域ではなく始域の場合もあるようで、『時間の正体』の「ジーブ」は後者にあたる。どちらかをsieveと呼ぶと、もう一方はcosieveということになるのだろう。

 sieveのある条件というのは、圏Cの射fがその元であるならば、fと合成できる圏Cの射gがあるとき、gfも集合の元になるということ。つまり、含まれている元と合成することによりa→〇の形になるものはみな元になると私は理解した。

 aを始域とする射の集まりといえばコスライス圏のことを思い出すけれども、実際、nLab の cosieve のページには under category の文字がある。

 sieveもわかってきたことだし、『時間の正体』に出てくるジーブについて、とても久しぶりに考えてみることにした。例として以下のような出来事系列が示されている。なお、本を参考にしつつも私の理解と表現でまとめていくことにする。


 このなかに、aから始まる射はa→b、a→c、a→d、a→eの4つある。これらを元とする集合は2^4=16(通り)考えられるが、ジーブは元になっている射と合成してできる射も含んでいなくてはならないので、16通りすべてがジーブになるわけではない。

 たとえば、a→cという射を含む集合はa→dも含んでいなくてはならないし、a→bという射を含む場合は、結果的にすべての射が元となる。

 そうなると、元が1個なのは{a→d}と{a→e}だけで、元が2個になるのは{a→c,a→d}、{a→d,a→e}、元が3個になるのは{a→c,a→d,a→e}とわかる。これらに名前をつけて整理すると、ジーブは以下の7個となる。

  Sa={a→b、a→c、a→d、a→e}
  S0={}
  S1={a→e}
  S2={a→d}
  S3={a→c、a→d、a→e}
  S4={a→c、a→d}
  S5={a→d、a→e}

 このことが時間論とどう関わるかといえば、「いずれ過去になる程度を見積もる評価システム」として、「未来を見通せる出来事系列の集まり」を考えているのだと私は理解している(なお、この前に、内的限定観測者の話がある)。

 それはいいとしても、sieveを使って何をするのか、何ができるのかということが問題となってくるわけであり、それはかなりの大仕事になりそう。用語は書かれていないが、まずは真理値対象の説明がブール代数をもとに行われている(と私は理解している)。そして、ジーブを使うとどうなるのかの説明があり、束、分配束の説明を経て、排中律の乱れへと進んでいく。

 その道筋が理解できるともちろんうれしいけれど、そのためにはものすごくがんばらねばならず、そのがんばりのモチベーションがいまいちわかないのは、時間の意味論としての結論のメドがだいたいたっていることと、それを圏論で示したことになるのだろうか?という疑問があるからだった。

 実際、郡司さんも、マルコポーロさんの時間の意味論でこれ「これこういう部分が不十分だ」ということを示すために、まずはその内容を示しているのであり、肝心なのはその不十分さに対して郡司さんが何をしたのか、というところだと思うわけなのだ。

 そこまで理解するのには、10年では足りなかったと感じるきょうこのごろなのだった。
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