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圏論「コスライス圏」、名前と記号のあれこれ

 圏論を学ぼうとすると、たくさんの「コ○○○」に出会う。

 コドメインから始まって、コイコライザーとかコプロダクトとかコユニットとかコリミットとかココーンとか。これらの「コ○○○」は、コを省いた「○○○」の言葉があるのでコをつけて新たな言葉にできるのだと私は理解している。

 それを言うなら、三角関数にだってcosine、cosecant、cotangentがある。つまり、「コ」は「余」なのだと思う。そういえば余事象という用語もある。

 日本語で考えれば「余」は「それ以外」という意味を表すと思うのだが、なぜ英語では「co-」(共に)になるものが「余」に対応するのだろう? ペアをなしている一方に対する他方と考えれば「余」、2つでペアをなすことができるという意味で「co-」なのか、と思ってみたり。それとも「余」や「co-」の意味が違うのか。

 先日、話題に出てきたスライス圏についても、コスライス圏という相棒がいる。このことに関して、圏論の学び始めで大変お世話になった檜山正幸さんのブログに、なんでもかんでも余をつけるのははイタダケナイナーということで、自分はオーバー圏、アンダー圏と呼ぶことにする、という主旨のことが書いてあるのを見つけた。

檜山正幸のキマイラ飼育記(はてなBlog)
オーバー圏、アンダー圏

 なお、檜山さんも『現代思想2020年7月号 特集=圏論の世界』に「ソフトウェアの数理モデルと圏論」というタイトルで寄稿されている。

 私も、オーバー圏、アンダー圏がいいな、とそのときには思った。

 がしかし、人間やはり慣れというものがあり、一度、スライス圏やコスライス圏で書かれた文献を読む経験をすると、この言葉に慣れてしまって、別の言葉に変換するのが逆に大変になってくる。

 オーバー圏、アンダー圏という呼び方は、何をもってしてオーバー、アンダーと言っているのか、もとの意味はわからないのだけれど、たぶん、上方の対象からなる圏、下方の対象からなる圏という意味なのではないかと推測している。

 自分としてはその逆で、Aに向かうということ、Aが矢印の先にあるという意味でオーバー、Aから向かうということ、Aが矢印の元にいるというイメージでアンダーを考えるとわかりやすいと思っていた。なんて書くと、混乱してしまうのだけれど。

 これに記号表記が加わると、自分としてはさらに混乱してしまう。

 同じく圏論を学び始めのころお世話になった清水義夫『圏論による論理学 ―― 高階論理とトポス』(2007年)では、スライス“圏”という言い方はされていないが、「スライス」という圏について述べてあるところはあり、「↓」という記号が使われている。CのBによるスライスは「C↓B」というふうに。そして、CのBによるスライスは、CのBによる「カンマ圏」とも呼ばれることがある、という内容の注意書きが添えられている。コスライスは見当たらない。

 この書き方だとスライス圏とコンマ圏がイコールになってしまうが、まんまイコールではないと私は理解している。「↓」がどこから来たのかわからないのだけれど、私としては、「↓」はアンダーのイメージがあってわかりにくい。もしかすると、先にアンダーの発想があったのだろうか?

 ちなみに、『圏論の道案内』(西郷+能美)では、コンマ圏は一般射圏という呼び名になっており、一般射圏に「コンマ」のルビがついている。そのことについては本でも注釈が少し書いてあるが、あえてそうしているらしいという話を以下で読んだ。なお、このページはソーシャルボタンがついているので、リンクOKと判断した。

gihyo.jp
『圏論の道案内』発売記念 西郷甲矢人先生講演会 レポート
 第3回 自由な発想で圏論という景色を眺めてみよう
https://gihyo.jp/science/serial/01/category_theory_report/0003

 なぜコンマ圏というかというと、昔、コンマを使って表していたからだ、という話はほかでも読んだことがあるのだが、『圏論の道案内』では、「いろいろな記号があるが、どれもイマイチのような感じがする」という話も書いてあった。

 とにかく、「ここではこういう表記をするよ」と最初にことわればいい話なのだろう。

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