TETRA'S MATH

数学と数学教育
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W(ワット)という単位がつく量はどのような量なのか

 遠山啓著作集を読んでいましたが、最近、生活費の総点検をするなかでいろいろな単位に出会ったので、ここらで少しつっこんで考えてみることにしました。なお、生活ブログで電気ガス水道の使用量についてのエントリを書いています。

 電気やガスや水道の使用量の内訳を考えるとき、W、kWh、J、cal、L、m^3などの単位が関係してきますが、まずはじめに電気の計算をするなかで W を kWh にしながらふと思ったのは、W のつく量は数教協でいうところの内包量にあたるのかな…ということでした。

 WはSI単位系ではあるけれど基本単位ではなく、その他の単位や基本単位を組み立てて表すことになるようです。基本単位ではない J を使うのなら J/s となり、この J(ジュール)はガス使用量を算出するときにお世話になりました。

 まずは基本単位の確認から。

   長さ: メートル m
   質量: キログラム kg
   時間: 秒 s
   電流: アンペア A
   熱力学温度: ケルビン K
   物質量: モル mol
   光度: カンデラ cd

 その J 自体もSIの基本単位ではなく、力の単位であるN(ニュートン)を使って、N・mと表せるようです。N、J、Wを順に表していくと次のようになります。

   N → kg・m/s^2
     → m・kg・s^(−2)

   J → N・m
     → m・kg・s^(−2)・m
     → m^2・kg・s^(−2)

   W → J/s
     → m^2・kg・s^(−2)/s
     → m^2・kg・s^(−3)

 こういう話になると手にしたくなるのが、銀林先生の『量の世界・構造主義的分析』です。Wについて書いてあるところを読んでみると、W=J/sを示したうえで、「これは毎秒1Jの仕事をする速さのことである」と書いてあります(p.128)。

 さらに、J について書いてあるページにとぶと、そこはかつて複比例について考えたとき(↓)に参照したページの直後でした。

 かけ算で新しい量をつくる/テンソル積の手前にある複比例

 銀林先生の本では、複比例を考えるにあたり運送料の例がとりあげられていました。貨物の運送料が貨物の重量と輸送距離に複比例すると考えれば、重さと長さをかけたものが「輸送量」を意味している、という話です。

 そして、このような重量×長さと同種の量は物理学では仕事(work)として知られている、と話は続いていきます。「仕事=力×長さ」として。このあとcgs単位系、MKS単位系などの話が出てきて、N、J、Wが登場します。

 さて、Jはエネルギー、仕事、熱量、電力量の単位ですが、数教協的にいえばこれは外延量と考えてよいのでしょう。銀林先生は先の本のなかで、エネルギーは物理学に出てくる最も外延的な外延量だと書かれており(p.189)、常に加法的であるとしています。また、エネルギー保存則にも触れています。

 電気使用量を計算するときは、JではなくkWhという単位になりますが、同じ種類の量だと考えれば、月々の電気料金の請求が1つのkWhの数値からなされることがわかるように、加法的であるというのはよくわかります。

 なお、kWhとJの関係については、後日、ガス使用量の計算でみていきます。

 とにもかくにも、1200Wのドライヤーを月に2時間半使おうが、600Wの電子レンジを月に5時間使おうが、3kWhの電気量を使用したことにかわりはなく、その中身を区別することなく電気料金が請求されます。もっともここに、kWh→円というもうひとつの変換が加わるわけですが。>補足

 というわけで、時間をかけてはじめて電力量となれる「Wという単位がつく量」、仕事率とも呼ばれるこの量は、ますます内包量に思えてきます。

 しかし。

 「力×長さ」は、「重量×長さ」と同種の量とされているのです。数教協風にいえば、「外延量×外延量」である、と。複比例のときに見たように、外延量どうしの積で新しい量が作られるのがあのとき新鮮だったわけですが、こうして作られた新しい外延量は加法性をもっているので、これもまた外延量ということになろうかと思います。

 ということは。「外延量÷外延量=外延量」ということがありうるのだということを、いまさらのように意識したしだいです。そうなると、外延量でわると内包量になる外延量と、外延量でわると新しい外延量ができる外延量がある、ということですよね。

 これまで、外延量というのは合併がそのまま加法を表す量のことだと理解してきました。こちらのほうはまあいいのですが、内包量の説明はなかなか難しく、「そうでない量」とするのもあいまいなので、外延量どうしのわり算で得られる量だ、としてきたことが多かったように思います。

 しかし、外延量どうしのかけ算で外延量が得られることを知ったいま、外延量どうしのわり算で得られる量を内包量とは言えなくなってしまいました。複比例のときには、複内包量という言葉が出てきましたが、複外延量という言葉はないのでしょうか。

 こうなってくると、外延量・内包量という分類では語れなくなってきそうです。

 それにしても、SI単位系を見ていると、量の次元って便利で面白いなぁということと、量というのはお互いに関係しあっているのだなぁ…ということをしみじみ感じます。
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- | 2018/05/24 1:52 AM
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