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数学と数学教育
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遠山啓の幾何教育論をまとめた一冊

 遠山啓著作集の数学教育論シリーズをぱらぱらとめくっていたら、7の「幾何教育をどうすすめるか」の一冊に心がとまりました。はたと気づけばこれまで、遠山啓が幾何教育についてどう語っているのかを、まとまった形で読んだことがありませんでした。

 大きな組み立ては、「幾何教育を改造する視点」「ユークリッド幾何の再検討」「幾何教育の展望」「幼児の空間的表象―ピアジェの研究の紹介」「幼児の自然発生的幾何学―ピアジェの研究の紹介」となっており、1950年代後半から1960年代前半にかけての文章を中心としてまとめられています(一部60年代後半のものを含む)。

 まず面白かったのが、オープニングの「図形教育の新しい視点」のなかに出てくる“生活”の話でした。生活単元学習のなかで強調された“生活”は、生活一般ではなく“消費生活”であり、“生産生活”はそのなかからは脱落していて、生産の脱落した消費生活だけを目安にしていくと、数の知識はたしかに必要だけど(金勘定)、図形の知識はほとんど不要であるといってよく、消費的であった戦後の生活単元学習では図形教育がほとんど無視された…というような内容の話です。

 ちなみに、森毅が語る、「遠山啓」の時代の区分でいえば第一期の終わり頃の文章ということになるので、生活単元学習の話が出てくるのでしょう。遠山啓の生活単元学習批判については次のエントリでざっくりまとめてあります。>遠山啓の生活単元学習批判の概要をもう一度おさらいしておく

 個人的には、数教協っぽい図形の題材として、比較的新しいところで多面体や敷き詰め、少し古いものとしてピックの定理、だいぶ古いものとして折れ線の幾何などが思い出されます。

 もっともこれは、数教協関係者の母の影響や何度か行った全国研究大会の記憶からそう思うので、それぞれの題材が数教協のメインストリームなのか、発表者独自の題材なのかはよくわからないままです。

 母が昔、数教協のレポートは図形分野が面白いと言っていたことがありました。他の分野のように方法論が確立されておらず、個性的で新しい発表に出会える機会が多かったのでしょう。

 著作集にもどると、遠山啓はユークリッド流の幾何教育の問題点をペリー運動をからませながら語ったうえで、その教育的意義についても触れ、ではどうすればいいかということで折れ線や方眼の幾何についての議論を展開し、その他の幾何分野についても具体的に論じていきます。

 なお、ペリー運動については、過去に別の文献をもとにした関連記事を書いています>ペリー、ムーア、クラインの教育改革運動

 遠山啓はユークリッド『原論』の特徴を「測度の不在」「三角形分割」「定木とコンパス」の3つにまとめ、折れ線や方眼の幾何といったものを提案しているのですが、それに対して「遠山啓らしいなぁ」としみじみ感じる私です。

 方眼については個人的にはほとんど印象にないなぁ…と思いつつ気づいたのは、そういえば数学教育協議会のマークは方眼にV字型の図形をあしらったものだということ。マークの由来がサイトのQ&Aにありましたが、詳細なエピソードはわかっていないもよう↓

http://www004.upp.so-net.ne.jp/ozawami/qa/hajimeni.htm#q6

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