TETRA'S MATH

数学と数学教育
<< 表面をなぞってみる圏の積と巾 | main |

集合の圏や半順序圏での、積と巾

 前回、表面だけなぞってみた圏の積と巾について、もう一歩ふみこんで考えることにします。ひきつづき、メインの参考文献は清水義夫『圏論による論理学 高階論理とトポス』ですが、その他のテキストやWebページも参考にさせていただいています。

 まずは積について。

 Set(集合の圏)の場合、積は積集合 product set に相当するとのこと。記号で示すと{<x,y>|x∈Aかつy∈B}だそう。直積集合に思えるのですが、同じものと考えていいのでしょうか。direct はついていないのですが。

 それ以外に積集合って何かあるだろうか?と調べてみると、そういえばありました。いわゆる交わり、meetです。小倉久和・高濱徹行共著『情報の論理数学入門 ブール代数から述語論理まで』では、p.8で積集合(product,intersection)という用語が A∩B={x|x∈A∧x∈B}という表記とともに出てきます。

 期せずして話が次につながりました。というのも、Po(半順序圏)の積は、半順序集合における{A,B}の下限A∧Bに相当するらしいのです。なるほど、次のように考えると個人的にはわかりやすいのですが、それでいいのでしょうか。

 たとえば整数の整除関係において、6から12と18に矢が出せるけれども、3からも2からも1からも出せる。そして、3、2、1はそれぞれ6に矢を出すこともできる。だけど、12と18に矢を出せるもので、6から矢を出せる整数は(6以外には)ない。だから、12と18の「積」は6。そう考えていいのなら、積の「一番えらい」というイメージがとてもしっくりきます。>

 ただし、この場合、「一意に決まる」をどう考えればいいのかはよくわかりません。

 次に、巾について。

 Setの場合、B^Aは、AからBへの写像の一つ一つを要素とする集合とのこと。つまり、{f|f:A→B}である、と。最初は何事かと驚きました。Setでは集合が対象で、集合間の写像が射のはずなのに、写像を集めた対象があるってどういうことよ?と。

 しかしその後あれこれ調べていくうち、配置集合なる概念を知ることができました。Aの上のBの配置集合というのは、集合Aから集合Bへの写像をすべてあつめた集合のことらしく、しかもB^Aという記号が使われることがあるようなのです。

 そして、Aの元の個数がm、Bの元の個数がnだったら、AからBへの取りうる写像の数はn^mという記述を発見。
http://www.ne.jp/asahi/search-center/internationalrelation/mathWeb/Sets/Mapping2.htm

 A={ア,イ,ウ,エ,オ}、B={1,2,3}だとしたら、アの写し方が1、2、3の3通り、そのそれぞれについてイの写し方も3通り、同様にウ、エ、オの写し方も3通りずつなので、全体では3×3×3×3×3=3^5(通り) なるほどたしかに。

 そうなると、冪という言い方や指数のような表記ががぜんしっくり思えてきます(なお、「巾」と「冪」は同じものだと現段階では理解しており、メインの参考文献にあわせておもに「巾」という漢字を使っています)。結局、圏における冪は、集合論のなかの配置集合に相当する概念なのでしょうか。ただ、いわゆるベキ集合(部分集合全体の集合)と若干紛らわしい気がしないでもなく。

 ということがわかった時点で巾の定義の図をもう一度見ると、何か見え方が変わるでしょうか。

   

 圏の積を集合の直積と同じように考えていいのだとしたら、B^A×Aは「AからBへの写像」と「Aの元」の対になるので、そこからBに矢印が出るというのはなんかわかる気がします。Cについては以下のページを参考にさせていただきながら考え中です。
http://tnomura9.exblog.jp/20587411/

 では、Poの場合の巾はどうなるかというと、結論だけ示せば、B^A は「AのBに対する相対擬補元」というものになるらしいのです。記号は「A⊃B」。「⊃」って‟ならば”じゃないの?…と思ったら、森田真生さんの『哲学者のための圏論入門』で冪を「A⇒B」と表記しているところがあるのを発見↓(p.28)
http://choreographlife.jp/pdf/intro.pdf

 この相対擬補元、あるいは擬補元という用語、検索しても、思ったほど基本事項を示したページがひっかかってきません。なので、いまだ自分にとってしっくりくるページを見つけられずにいます。清水さんの本では「…は,AのBに対する擬補元(i.e. 相対擬補元 relative pseudo complement)と呼ばれる要素A⊃Bが,…」という書き方がしてあって、最初は擬補元と相対擬補元は同じものだと思ってたのです。

 しかし、もしかすると0に対する相対擬補元のことを擬補元と呼び、それ以外はAのBに対する相対的な擬補元ということで相対擬補元と呼ぶのかもしれません。前者は確かに"擬"補元という感じがします。以下のぺージなどを参考にさせていただいています。
http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/
lab/phil/kukita/others/Heyting_algebra.pdf
http://mathneko.hatenablog.com/entry/2016/04/12/015447 http://lis.mslis.jp/pdf/LIS033071.pdf

 『圏論による論理学』では、C∧A≦B ⇔ C≦A⊃B(←「≦」の「=」は一本線の表記)をみたすものとして定義されることがある、という書き方がしてあります。

 再び整除関係で考えてみます。60の約数において、A=6、B=10として、A⊃Bを求めます。そのために、C∧AがBの約数になるようなCをさがします。大きいほうからさがしたほうが能率的ですが、あえて小さいほうからさがしていきます。

 C=1のとき、1∧6=1で、1は10の約数なのでOK
 C=2のとき、2∧6=2で、2は10の約数なのでOK
 C=3のとき、3∧6=3で、3は10の約数ではないので該当せず
 C=4のとき、4∧6=2で、OK
 C=5のとき、5∧6=1で、OK
  ・
  ・
  ・

 このように調べていくと、Cにあてはまる60の約数は、1、2、4、5、10、20の6個となりました。最大の数は20なので、A⊃Bは20。こんなふうに考えていいのでしょうか?? この場合、他のCが20の約数になっていてくれるとうれしいというか、そうならないと困るのですが、実際、そうなっています。

 なんか素っ頓狂なことをやってるんじゃないかという不安でいっぱいですが、せっかくなので、これを巾の図にあてはめてみることにします。というか、これがやりたくて具体例をさがしてました。

   

 こんな理解でいいのか不安でいっぱいですし、こんなことを公開していいのかさらに不安が募りますが、このエントリひとつ書くにもえらく時間がかかっており、頭がこんがらがってきているので、逆に公開してみます。そうすることで気づくこともあるかもしれないし。

 というわけで、勘違いに気づいたときにはそのとき訂正することにして、ひとまずプロセスのひとつとして書きとめておくことにしました。あくまでも私はいまこんなふうに格闘していますということで…
圏論 | permalink

この記事に対するコメント

コメントする









  

サイト内検索