TETRA'S MATH

数学と数学教育
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で、トポスって結局なに?

 圏論に興味をもちはじめて少したった頃から、つかずはなれず気になっていたトポスという言葉。自分がそれを理解できる日がくるようには思えなくて、理解しようともしてきませんでしたが、トポスについても谷村さんはわかりやすく道案内してくれます。>「物理学者のための圏論入門」()のp.7

 トポス(topos)とは数理論理学の一分野で、圏論の発展版のような理論であること。おおざっぱにいえば、圏のモノ射f:a→bを「aならばbである」という論理関係のように解釈できる体系であること。トポスでは真理値概念をかなり柔軟に拡張し、YesとNoの2択ではなく、ある種のグレーゾーンを設けること。

 という話を読んだときに頭に浮かんだのが、サブオブジェクト・クラシファイアーだったのでした。実際、トポスの定義には subobject classifier Ω が存在するという条件が入っていますし、清水義夫さんの本でも、トポスに入るためにまずこれを定義するという話の流れになっています。

 では、さっそくというかとりあえずというか、トポスの定義をのぞいてみることにします。清水義夫『圏論による論理学 高階論理とトポス』で2通り示されているうち、定義1のほうをみていきます。なお、Eという記号(ほんとは白抜き)はエレメンタリ―・トポスからきているようです。

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定義1(トポス)

 圏Eが下記の条件(1)〜(4)をみたしているとき,圏Eは「トポス」(topos)と呼ばれる.
(1) Eには,終対象1が存在する.
(2) Eには,Eの任意の二つの対象A,Bについて、その積A×Bが存在する.
(3) Eには,Eの任意の二つの対象,A,Bについて、その巾B^Aが存在する。
(4) Eには,subobject classifier Ω が存在する。

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 (3)のB^AはAが指数のようにBの右肩につく表記です。英語では exponentiation だそう。つまりは「冪」と同じで「べき」と呼んでいいのでしょうか? でも、「べき」じゃ変換してくれないのよね…

 「巾」の定義には任意の二つの対象の積の存在が含まれているので、上記定義1の(3)は(2)を前提にしないといえないことなのでしょう。また、前回みたように、subobject classifier は終対象1の存在あってのことなので、(4)は(1)がないと言えないことかと思います。

 定義2に目を移してみると、(1)、(3)、(4)は同じですが、(2)は、任意の対象からなるA→C←Bについて、そのp.b.が存在すること、となっています。終対象1の存在とp.b.の存在から積の存在がいえるようなので、そうなると定義1と同じになる…ということなんだろうと理解しています。

 定義1のほうでいえば、終対象1と積と subobject classifier の存在から equalizer の存在がいえて、積と equalizer の存在からp.b.の存在がいえる、という具合です。

 で、定義1の(1)〜(4)から、始対象、直和、pushout も存在する、というわけです。

 と書いたけれど、なんのことやら。

 とにかくトポスにはいろいろな基礎概念が存在しているらしいのです。

 それはそうとして、定義1の(1)〜(3)までの条件を満たす圏は、とくに「デカルト閉圏」と呼ばれるとのこと。cartesian closed category で通常CCCと略記されるそうなんですが、これっていわゆるカルテシアン閉圏と同じものなのでしょうか?

 いわゆるといってもカルテシアン閉圏がなんであるかは私は知りません(結果的にいま知りかけているわけですが)。知らないけれどよく出てくるので名前は覚えてしまったという。そして興味はどこに向かうかというと、もし同じものだとしたら、なぜデカルト閉圏がカルテシアン閉圏とよばれるのか、ということ。

 さっそく検索をかけると、こちらのページを見つけました↓

 JAAA自動化推進協会>自動化こぼれ話(134)カルテシアン  http://www.jidoka.net/serv/kaishi/jaaa-kaish-kobore-134.html

 おー、なるほどー! そのカルテシアンとこのカルテシアンが同じカルテシアンなのかどうかはわかりませんが、とにかくひとつ勉強になりました。

 さて。

 トポスの定義はわかりました。ソラらで言えといわれれば言えそうです。しかし、その意味するところはあいかわらずまったくわかりません。いったいこの概念で具体的に何ができるのでしょうか。私はこの概念から何か恩恵を受けることができるのでしょうか。

 ということについてはいまだわからずにいるし、これからもとうぶんわからないような気がしますが、これまで理解しようともしなかった『圏論による論理学』の<結び>が、その内容はわからないままに、少し読めるようになってきました。

 <結び>は、関数型高階論理やトポスが「普遍論理」(と仮に呼ばれている論理)の有力候補であることをテーマとして書かれてあります。普遍論理の条件として、汎用性、汎通性、自然性があげられており、トポスとこれらの条件の関係について述べられていくのです。

 そのうち私が気になっているのが「自然性」です。先ほどみたように、トポスは、積、巾、終対象1、subobject classifier Ω の4つから始まるわけですが、この4つが私たちの知性の基本的な性格にどのように対応しているのかについて語られています。

 今回はこれ以上詳しくみていくことはしませんが、<結びの結び>において、ライプニッツの夢でもあった普遍数学に触れられていることが、あらためて印象に残りました。
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