TETRA'S MATH

数学と数学教育
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John が walk(s)に作用する/略式モンターギュ文法

 谷村省吾さんの「物理学者のための圏論入門」()p.5では、圏論の融通無碍さが語られており、aからbへ向かう射fの正体・解釈は固定されていないことについて述べられています。

 それは「aからbへの変化」とも考えられるし、「aからbへの通信・連絡」とも考えられるし、「aからbへのプレゼント」かもしれないし、「aはbの祖先である」「aはbよりも小さい」「aならばbである」という関係かもしれない。

 aとbを結ぶ矢印はいろいろな関係を表すことができる…というわけです。矢印といえば思い出す、『圏論の歩き方』第12章。

 『圏論の歩き方』第12章/見える矢印、見えない矢印
 http://math.artet.net/?eid=1422228

 あらためて読み返すと、次のことが気になってきます。(p.207)
 これらの「見えない矢印」は,実にさまざまの意味をもっています.中でも重要なのは,矢印ABが,
  AがあるからBがある/AがなければBがない
を意味する場合ではないでしょうか.実際,先ほど述べた「代謝のネットワーク」や「遺伝子発現の機構」にはこの種の矢印がふんだんに存在しています.
 これは,一見数学における「AならばB」と似ているようでありながら,異なるものです(むしろ「反対向き」であり,かつ,「順序」や「時間」といったことを捨象しない立場).
 たとえば,AがあるからといってBが「必ず」あるとは限らない.むしろ,「蒔かぬ種は生えぬ」といったような関係をあらわす矢印と見るのが適切です.決定論とは注意深く切り離したうえで,これを「因果関係」と呼ぶことはさほど的外れではないでしょう.
 こういう話になるとまた、宿題にしたまま進展のない仏教の縁起のことを考えたくなるのですが、今回は少し方向を変えてみることにしました。というわけで久しぶりに手にする、清水義夫『圏論による論理学 高階論理とトポス』。

 圏の定義や各種用語の確認でお世話になってきたものの、それ以外の部分はまっっったく理解できないままでした。それがようやくほんの少しだけ面白くなってきました。第1章は関数型高階論理を扱っており、その1ページめで、一階の述語論理が万全なものではないことが述べられています。

 たとえば、「ジョンがメアリーを殴ったことが原因で、メアリーは失明した」を、一階の述語論理で

  P(a,b)⊃Q(b)

  a:ジョン、b:メアリー
  P(x,y):xがyを殴った、Q(y):yは失明した

と形式化して捉えることは、明らかに的確さを欠いているし、そうかといって、事象と事象との因果関係を表わす述語(R(x,y):xはyの原因である)を導入して、

  R(P(a,b),Q(b))

と形式化した場合、この形式化は明らかに一階の述語論理を逸脱している、と。一階の述語論理は強力な論理ではあるけれど、表現力には限界があり、より豊かな表現力をもった論理を用意することが是非必要となってくる…ということで、その一例としての関数型古典高階論理λ-h.o.l.なるものの説明に入っていきます。

 少し先に進んだ§1.4では、λ-h.o.l.の応用例として、略式モンターギュ文法なるものが出てきます。最初に出されている例文は

     John walks.

で、これを構文解析すると「自動詞walk(s)に固有名Johnが作用したことによって生成される文である」とみなされるらしいのです。

 自動詞に固有名が作用して生成される文だなんて、なんだか面白いです。自然言語の表現である自動詞walk、固有名Johnに、それぞれλ-h.o.l.の項を対応させる翻訳規則があり、Johnのほうは関数になっています。なので対応する項にはλが入っています。

 なお、λについては、以前、数教協のブラックボックス風に考えたことがあります↓

 ちょっとだけλ記号に慣れておく
 http://math.artet.net/?eid=1419159

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この記事に対するコメント

このエントリは、Twitterへのリンクの関係で(画像が気になったので)、新しいURLで再投稿しました。コメントの通知はきていないので、非公開にしたほうにコメントはいただいていないと思いますが、念のためご報告まで。
tamami | 2017/04/27 11:48 AM
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