TETRA'S MATH

数学と数学教育
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つなぐものの存在感/比例定数とアクリルたわし圏

 これまで出会ったなかでいちばんわかりやすい圏論の説明に触発されて思い出したことを書いています。

 (図4.1)には、左側に3本、右側に3本の矢印が描かれていますが、左を見れば各bとaを結ぶ矢印があり、右を見ればaと各cを結ぶ矢印があります。つまり「●→●」の組み合わせの図です。そして全体を見ると、矢印にはさまれたaに焦点があてられているように見え、「→●→」が中心になった図に見えます。

 この場合、「●→●」に見えるか「→●→」に見えるかは、視点のおきかたしだいですが、「●→●」を転換させて「→●→」にすることもできるように思います。

 以下、再び過去の図を使いまわして、上記のことを比例関係につなげて考えてみたいと思います。

***

 下の対応表は、あるエレベーターが上昇しているときの時間とエレベーターの高さとの関係を表したものです。途中で止まることや微妙な速度の変化は想定しておらず、単純に比例関係としてとらえてあります。(48の欄の黄色は気にしないでください)



 たてに並んだ2つの数値について、(高さ)÷(時間)を計算してみると、どこも「8」になります。



 この8は、比例定数であり、時間をx秒、高さをymとすれば、y=8xという式が成り立ちます。8に単位をつけるとしたらm/秒となり、このエレベーターの上昇する速さを示しています。

 また、2秒後から5秒後までの3秒間では16mから40mまで24m上昇しており、このときにも24÷3=8(m/秒)は成り立っています。なので、このエレベーターの動きを時間と高さという2量の関係でとらえた場合、「8m/秒」という数値が、この動きの“質”を表していると考えてもいいように思います。

 そして、対応表でたてにならんだ2つの数値の組は、瞬間、瞬間のできごとをとらえた数値の組み合わせと言うことができます。実際には、1と2の間にも、6と7の間にも、秒数はたくさんあり、どの瞬間をとらえても、「8m/秒」という“動きの質”はたもたれています。

 つまり、「時間が2倍、3倍、・・・になると、それにともなって高さも2倍、3倍、・・・になる」ということは、このエレベーターの動きのタイプ(正比例)を表しているけれど、具体的には「8m/秒」というある種の量が、この動きの質を表していると言ってもいいのではないかという気がしてきます。

 そこで、一瞬、一瞬について、時間と高さの組み合わせのカードを作ることを考えてみました。

  

 左に「時間」、右に「高さ」を置き、まんなかには「高さ÷時間」の数値を置きます。いま、矢印を示す数値はすべて「8m/秒」となるので、これらのカードを重ねてぱらぱらマンガのようにめくると、時間と高さは刻々と変わるのに、矢印の部分は止まっているように見えると思います。

     

 そうなると、このエレベーターの動きの本質は、8m/秒にあるように思えてきます。ともなって変わる2つの量を、ともなって変えさせるための、留め具のようなもの。

 この発想のもとになったのが、「アクリルたわしの圏」でした。当時、アクリル毛糸でたわしを作っていたので、たわし1個をつくるときに出てくる様々な量-----「値段:220円」「重さ:45g」「長さ:67m」「面積:275^2」を取り出して、これらを圏の対象とし、分母を始域、分子を終域にした分数を圏の射として、圏が作れないかを考えたことがあるのです。

   

 それぞれの分数を小数第2位までの概数で表して単位を添えると、次のようになります。

   

 これらの値が何を表しているかというと、丸1は1円あたりの重さ、丸2は1gあたりの長さ、丸3は毛糸1mで編めるたわしの面積、丸4はたわし1cm^2を編むのにかかる毛糸の値段、丸5はたわし1cm^2を編むのに必要な毛糸の重さです。図には示していませんが、「220円」と「67m」も結ぶことができます。ちなみにそれぞれの矢印をひっくり返した矢印も考えられます。

 射の合成は「かけ算」で考えることにして、恒等射を「1」にすれば、圏の定義を満たすのではないか…と考えたしだいです。

 エレベーターの例にしろ、アクリルたわしの圏にしろ、2つのものの間にある量は、数教協でいうところの内包量と考えられます。そして、関係を考えられている2つのものは外延量です。

 なお、数教協がいうところの外延量とは、合併がそのまま加法につながる量だと私は理解しています。それに対して内包量は合併がそのまま加法につながらない量のことなのですが、「加法につながらない量」というと曖昧なので、外延量のわり算によってできる量と考えると私はすっきりします。

 ということは、内包量は外延量がないと成り立たない量ということになり、先に外延量ありきと思えてきますが、今回まとめたことは、内包量そのものの存在感を感じるためにやってみたことです。すなわち、「●→●」を「→●→」にする試みです。

関連エントリ>抽象的な関数より、具体的な内包量
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