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『圏論の歩き方』いきなり第17章/可換図式の「筆順」

 『圏論の歩き方』第2章を読んでいるところですが、ここでいきなり「第17章 圏論のつまづき方」の一部を読んでみたいと思います。

 というのも、次は「直積」について見ていこうとしていたところ、やっぱり『圏論の歩き方』だけで理解するのはきびしいなぁ…と思い、また谷村さんのテキストをのぞいていたら、直積を説明するときの図の形の違いが気になってきたのです。

 で、『圏論の歩き方』にもどってぱらぱらとページをめくっていると、第17章のなかの ″可換図式の「筆順」″ が目にとまったしだい。ということは、いい感じで圏論につまづいているということでしょうか私!?

 そうそう、本で勉強していると何が困るって、1つの図や数式がどんなふうに書かれたのか、細かいところでその「筆順」がわからないことですよね。

 私の場合、圏論に出てくる飾り文字、花文字というのでしょうか、くりんくりんしたアルファベットのあの字体はなんなのかというところから検索を始めなくてはならない状態でいます。「C」はわかるんだけど(っていうか、たぶん「C」なんだろうと思える)、「O」っぽいやつが出てきたところがあって、それが「O」なのかなんなのか、どんなふうに書けばいいのか、本で読んでいてもわからない。また、そんなことをいちいち説明するわけにもいかないですよね。

 そういえばかつて恒等射について考えたときにも、図を分解して段階的にみていったことがありましたっけ。この理解でいいのかいまだよくわからないままですが。↓

恒等射(同一矢)とはなんであるかをもう一度考える
http://math.artet.net/?eid=1305876

 これに似ているひし形の図が、直積でも出てきます。矢印の方向や種類がちがいますが。

 どうやって描くのかというと、次の図の青、緑、赤の順になるらしいのです(本の図はカラーではなく、3段階に分けて示してあります)↓

     
        X×が直積であるとは
        かってなZfに対して
        こういう射が一意に存在する

  ※ 赤い射は〈fg
    破線の矢印は「存在してしかも一意」と読む。

 一方、谷村省吾『理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何〜双対性の視点から〜』では、ひし形ではなく、矢尻のような形の図が示してあるのです(Pが上図の×にあたる)。↓
   
     

 直積になるための条件が示されたあとこの図が出てきて、「つまり,AXAYというAから発する2本の矢は,APという1つの矢に束ねられ,いったんPを通ってから枝分かれする矢として表現できる」という説明が加えられています。こうなると少しイメージが違ってきますよね。

 なお、圏論の場合、直積というのは、対象X×Yと、そこから出ている2つの射をあわせた3つ組をさすようです。谷村さんのテキストの図でいえば、(P,p,q)がXYの直積ということのようです。(追記:『圏論の歩き方』の第1章では、対象そのものを直積と呼ぶ記述もあるようです。はて。)

 直積については、谷村さんのテキストのほうが十分な行数が割かれていて、なおかつ卑近化した例で説明してあるのでわかりやすいのですが、こちらでイメージをつかんだあと『圏論の歩き方』を読むと、なるほどと思えてきます。

 それらのイメージをふまえて、私は次のように考えてみました。以下、(*)から(*)まで、あくまでも我流の解釈・表現でございます。

(*) 集合XYの直積というのは、Xの要素とYの要素のペア(x,y)からなる集合のことだけれど、これを例のごとく要素を使わずに表現するにはどうしたらいいかと考えた場合、やっぱり対象間の関係性で語るとよさそう。

 で、直積にあたる集合にはXの要素とYの要素の両方が入っているけれど、XにはYの要素が入っていなくてYにはXの要素は入っていないので、この3つの間に矢印をつけるとしたら、XX×YYとするしかないだろう。これを、X×Yから情報を取り出すとイメージしてみる。

 対象間の関係で語るために、直積に立場の近い対象Zをもうひとつもってくる。立場が近いというのは、X×Yと同様に、XYの両方に矢印が出ている、XYの両方の情報をもっているということ。

 X×Yの場合、必要な情報をみんなそろえていて、しかも余計なものはないのだから、XYに関する情報の過不足のなさの度合いはZよりX×Yのほうが上のはず。だから、からX×Yに矢印を出すことができる。(一意に決まるということをどう表現したらいいのかについてはまだぼんやりしています)(*)

(なお、私は「情報を取り出す」という表現をしましたが、実際には「射影写像」という言葉を使う必要があるのだと思います)

 谷村さんは直積を説明するにあたり、卑近化した例として次のような集合を使っておられます。詳しい説明は省略しますが、これだけでもかなりイメージしやすくなるのではないでしょうか。

 X={赤,黄,緑}
 Y={甘い,辛い,酸っぱい,水っぽい}
 A={レモン,りんご,スイカ}

 f(レモン)=黄
 g(レモン)=酸っぱい
 h(レモン)=(黄,酸っぱい)

 一方、『圏論の歩き方』では、先ほどの図式のインフォーマルな読み方が2通り示してあり、そのうちの1つは谷村さんの「枝分かれ」のイメージに近いのですが、2つめでこんな読み方がしてあって面白いです。X×YXY両者に作用しているもののうち一番えらいものであり、ほかのZfgを通じてXYにちょっかいを出そうという際には、まずX×Yに〈fg〉を通してお伺いをたてなければならない、と。この「お伺いのたて方」〈fg〉を仲介射(mediating map)と呼ぶのだそうです。なるほどー。

(つづく)
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