TETRA'S MATH

数学と数学教育
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小数のかけ算の意味指導とは?(細水保宏さん)

 筑波大学附属小学校算数研究部企画・編集の『算数授業研究 VOL.80(かけ算を究める)』(2012年)を読んでいます。



 きょうは細水保宏さんのTOPIC、「小数のかけ算の意味指導で大切にしたいこと」を読んでいきます。筑波大学附属小学校の先生で、現行の学習指導要領解説の作成協力者でもある方です。

 細水さんはまず、小数のかけ算の導入風景を示しておられます。「1mの値段が80円のリボンがあります。このリボンを□m買います。代金はいくらになりますか」という問題で、□の中がどんな数だったらすぐにわかるかを問うと、1mだったらすぐにわかる、2mだったらすぐにわかる…として、子どもたちは「80×2=160」などの立式を引き出すことができる。

 「では、2.5だったら…」と問いかけると、「80×2.5」と簡単に小数のかけ算の立式をし、その答えを求める学習に展開していくことができるが、この展開での子どもたちの立式の根拠は何であろうか、と細水さんは問います。

 「2,3,5mだったらかけ算になる。数値が整数から2.5mという小数になっただけで問題文の意味は変わらないので,80×2.5になる」というふうに形式不易の考え方が基になっている、あるいは(1mの値段)×(買った長さ)=(代金)といった言葉の式を基にしている子どももいるだろう、と。

 そして細水さんはこう続けます。一見スムーズに流れている展開のどこに問題があるのであろうか、と。

 形式不易の考えでも言葉の式でも,整数の世界で成り立つものが小数の世界でも成り立つ保証はない。にもかかわらず,それを使うこと自体が数学的に問題だという意見もある。
 それ以上に,立式の根拠を意識しないで「何となくできるようになっていく」ことこそが問題なのではないだろうか。曖昧なままの理解が,小数のかけ算の応用や,小数のわり算,分数のかけ算,わり算の問題の演算決定する力を弱くしている原因なのである。

(p.46)

 で、このあと「乗法の意味の拡張」として、「幾つ分」や「同数累加」の発想から、「80×2.5は,80を1としたときの2.5倍の大きさを表す」と乗法の意味の拡張を図っていくことが必要になる、ということを書いておられます。

 また、その指導の難しさは現状でも明らかなので、幾つか感じていることを述べてみるとして、整数の乗法の場で、立式の根拠を明らかにする態度を身につけさせておく、「倍」の言葉に抵抗をなくしておく、数直線と関係を表す矢印で視覚的なイメージをつけることを示しておられます。

 ここで細水さんが提示されている図は、もちろん二重数直線です。が、私はいまだに、この図が演算決定のイメージ、後ろ盾になることの意味が理解できません。>二重数直線について思うことのまとめ(2012年夏)・2/教科書にでてくる二重数直線

 細水さんの小数のかけ算の発想はまさに「割合」の発想であり、「倍」の言葉に抵抗をなくしておくという主張と辻褄があっているし、学習指導要領解説の内容とも一致します。>学習指導要領「解説」の中で、割合の三用法はどこに出てくるか。

 問題は、「80を1としたとき」を、「1あたり量」の発想でいくのか、「割合」の発想でいくのかということ。それがどれだけ意識されているか、ということ。

 「1mあたり80円のリボン2.5m分の代金」では、長さと金額という2種類の量を使っており、これが数教協の「1あたり量」の発想です。先日、ご紹介した論文でいえば、「外比」に注目する考え方です。一方、「赤いリボンは80m、青いリボンは赤いリボンの2.5倍の長さです」というふうに、長さだけを使えば、「割合」の世界。先の論文でいえば、「内比」に注目する考え方です(赤と青の違いはありますが)。

 後者は、問題のなかに2.5倍という言葉がすでに入っているので、実際にどのような題材で小数のかけ算の導入がはかれるのか、私にはわかりません。むしろ、「赤いリボンの長さは80cm、青いリボンの長さは200cmです」という設定のなかで、赤いリボンと青いリボンの長さの関係を考えていき、そこで「倍」という言葉を使うほうが自然ともいえます。そうなると、小数については、かけ算よりもわり算を先にやる形になりますね。

 とにもかくにも、整数のときに使えたかけ算が、小数のときにも使える「保証」ってどこにあるのだろう?それは最初からどこかにあるのだろうか?という素朴な疑問が消えない私なのでした。

(つづく)

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