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数学と数学教育
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学習指導要領「解説」の中に出てくる、言葉の式

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 これまで、学習指導要領解説において、式による表現がどのように捉えられているかということを見てきましたが、今度は、実際に指導要領解説のなかで「言葉の式」がどのようにあらわれてくるかを見ていきたいと思います。

 まずは、算数の全体的なことについて述べた第2章から。ここでは「言葉の式」という言葉そのものが出てきます。
 式には,2+3,□×5,x−5などのような式と,2+3=5,□×3=12,a×b=b×a などのような等号を含む式がある。また,(単価)×(個数)=(代金)のような「言葉の式」もある。
(冊子p.51/算数(1)PDFファイルp.58)

 次に出てくるのは、意外にも、第3学年の内容においてです。しかも、意外な形で。
 ものの重さを測る場合には,そのものを直接測ることができないので容器などに入れて測る場合がある。この場合には,「(正味の重さ)=(全体の重さ)−(容器の重さ)」という関係が用いられることになる。
(冊子p.104/算数(2)PDFファイルp.121)

 この式は教科書ではほとんど出てこないのではないでしょうか。公式の意味合いがないので。逆に、かけ算を「言葉の式」で表しているところがないのが、意外でした。きのうのエントリで示したように、かけ算の意味については、文章で説明しています。

 次に出てくるのは、第4学年の除法に関する式。この式は指導要領本文にも出てきます。
 第4学年では,被除数,除数,商,余りの間の関係を調べ,次のような式の形に表すことを指導する。
  (被除数)=(除数)×(商)+(余り)
(冊子p.119/算数(2)PDFファイルp.138)

 なお、(被除数)=(商)×(除数)+(余り)という式を並べて書くことはしていません。

[関連エントリ]「わられる数=わる数×商+あまり」でも、教科書にぬかりはなかった。

 そうしていよいよ(?)、第4学年の長方形の面積の公式です(指数表現は「^」の記号で示します)。
このとき縦や横の長さを,1cmを単位として測っておけば,その数値について(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))の計算をした結果が,1cm^2を単位とした大きさとして表されることになる。このことより,
  (長方形の面積)=(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))
という公式が導かれる。
(冊子p.126/算数(2)PDFファイルp147)

 (縦)×(横)だけではなく、(横)×(縦)が加わったことには経緯があるらしいのですが(後日、確認します)、ここで2種類の式を記載したということは、裏を返せば、そのほかの式は1種類か示されていないから、それが正しい順序という解釈にもつながりかねない、ということは言えるかと思います。

 そしてこの(長方形の面積)=(横)×(縦)の形の式は、学校図書の教科書において、小学校6年生の反比例のところでそのまま使われています。指導要領解説が保証してくれているのだから、心置きなく堂々と使えますね。

 これはあくまでも私の推測ですが、横の長さをxcm、縦の長さをycmとして、面積を12cm^2にすると、(横)×(縦)=(面積)から x × y =12 という反比例の式がつくれて、方眼紙にグラフをかいたときにx軸が横、y軸が縦となることにきれいに対応するから、そうしているのではないかな…などと考えてしまいました。

 小耳にはさんだ話では、長方形の面積の公式が(縦)×(横)で固定されることはよくない(公式として順序が固定されてしまう)という発想から加わったときいているのですが、実はこんな裏事情があったりして…などと、つい勘ぐってしまいます。(^^;

 ちなみに、第5学年の直方体の体積の式は、次のように示されています。
したがって,長方形の面積を求めた場合からの類推によって,縦,横,高さを測ることによって,計算で体積を求めることができることを理解し,(直方体の体積)=(縦)×(横)×(高さ)という公式を導くことになる。
(冊子p.152/算数(2)PDFファイルp.177)

 さすがにここで6種類の式を書くことはしなかったようです。

 最後の第6学年では、なぜか(  )ではなく罫囲みでかけ算の式が出てきます。ブログで罫囲みはできないので[  ]で示します。分数表記は「記号/」を使います。
 例えば,「1mの重さが3/4kgの棒があります。この棒2/3mの重さは何kgでしょうか。」の問題においては,「3/4kgを1とみたとき2/3に当たる重さ」と言葉で表したり,[1mの重さ]×[棒の長さ]=[棒の重さ]の言葉の式に当てはめたり,数直線に表したりして,3/4 × 2/3 ととらえられるようにする。
(冊子p.167/算数(2)PDFファイルp.195)

 いまは深く突っ込みませんが、ここを読んで、あの論文を批判したことを、半分、あやまらなくちゃいけないな、と感じました。指導要領解説が、「1とみる」と「1mあたり」を区別していないのですね。

 あとは、円の面積や角柱・円柱の体積の公式を表す「言葉の式」が出てきて、速さの公式「(速さ)=(長さ)÷(時間)」が出てきます。

 ほんでもって、「言葉の式」ではないのですが、比例の式についてどう書いてあるかも見ておくと、
 比例の関係を表す式は,(ウ)の商を k とすると,y = k × xという形で表される。
(冊子p.177/算数(2)PDFファイルp.207)

と書いてあります。

 なお、(ウ)の商については、
(ウ)二つの数量の対応している値の商に着目すると,それがどこも一定になっているということ。
(同上)

と説明してあります。

 私はこの比例の記述を読んで、ちょっと安心しました。安心すると同時に、あの教科書のページに対する疑問が一層ふくらみました。少なくとも指導要領解説は、比例の式として「y=x×k」は示していないからです。

 それもそのはずで、正三角形の1辺をxcm、まわりの長さをycmとしたとき、比例定数を3とする y=3x という比例の式ができることはできるけれど、この「3」は二量の関係としての商というよりも、xからyを出す根拠としての3であり、話が転倒している印象が否めません。

 たとえば、そのあとの〔算数的活動〕において、比例の関係を用いて問題を解決することの例として、「たくさんの紙の枚数を調べる場面」「巻いてある針金の長さを調べる場面」などの例が出されていますが、三角形のまわりの長さは比例関係を使わなくても、1辺が10cmなら30cmというふうに単体で考えればすむ話です。

 いずれにせよ、比例の式をわざわざ「y= きまった数 × x」と「y=x × きまった数」の2種類示して、第6学年にまでかけ算の順序をひっぱっている責任は、指導要領解説ではなく、教科書会社にあると私は思いました(他の会社の教科書についてはまだ確認していません)。

 だから、なんでもかんでも指導要領解説のせい、ということではなさそうです。

(つづく)
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