TETRA'S MATH

数学と数学教育
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編集と自由とブリコラージュ/亀井哲治郎さんの文章から派生して

 小冊子『いま,遠山啓とは』に掲載されている、亀井哲治郎さんの「『数学セミナー』と遠山啓」を読んでいます(『数学教室』2010年12月号からの転載)。前回は数学者としての遠山啓の顔をのぞいたので、今回は『数学セミナー』の編集会議に出席する遠山啓の顔をのぞいてみようと思います。

 『数学セミナー』というのは、日本評論社が出している数学雑誌で、創刊は1962年とのこと。亀井哲治郎さんは1970年に正式に日本評論社に入社し、数学セミナー編集部に配属となったそうですが、それよりも前の12月から、アルバイトとしてほとんど毎日“出社”していたのだとか。単行本の校正をしたり、編集部の人から誘われて、東京工業大学における遠山啓の最終講義を聴きにいったり。

 毎月開催される編集会議は、ある号の何かの特集や記事を議論して決めるというものではなく、“談論風発”さまざまな話題に広がっていく、そういう会議だったようです。編集部のみならず矢野健太郎さんが話題を提供されることも多く、政治や週刊誌ネタもあれば、数学をめぐる動向や数学教育に関する問題、時には好みの女性のタイプなど、笑い声が絶えることなくあっというまに3時間が過ぎていった、と書いてあります。

 そして編集部員たちは、さまざまに展開する話題を追って懸命にメモを取り、その中から多くの企画が生まれたそうです。当時の編集長の野田幸子さんが、編集会議のひとときを「編集者教育のサロンだった」と称されたこともあるようです。

 亀井哲治郎さんいわく、編集顧問の方々は、自分たち編集部の出す企画について決して“NO!”と言われたことがない、と。むしろ、自分たちの意を汲んで後押しをしつつ、さまざまな角度からさらにアイディアを出して膨らませてくださった、とのこと。それをもとに、また編集部で議論し、“自由に”企画を立てていく…という形で雑誌はつくられていったようです。

 創刊時に編集顧問を引き受けるにあたって、遠山啓は、「僕たちはいくらでもアイディアを出すから,その中から編集部が“面白い”と思うものを選んで,自由に雑誌をつくったらいい」と言ったそうで、この言葉が編集部の企画の“自由さ”の根底にあり、そして編集者がみずから育っていく基盤となっていた、と亀井さんは書いておられます。

 編集者といえば、このブログでも富岡勝さんや小林浩さんのお名前を出させていただいたことがありました()。編集者の仕事の大きさをしみじみと感じます。

 そしてやはり、松岡正剛さんのことを思い出すのですが、実は千夜千冊の317夜『悲しき熱帯』レヴィ=ストロースで、松岡正剛さんはレヴィ=ストロースのブリコラージュを自分の言葉で「編集」と言い換えているのです。

 先日も名前を出したレヴィ=ストロースは、構造主義の祖であり、平たくいえば人文科学に群論を応用した人です。そして、アンドレ・ヴェイユはレヴィ=ストロースの研究に協力しているもよう。

 そのレヴィ=ストロースが見出したブリコラージュという方法に、私はこのあいだまでほとんど意識が向かっていなかったのですが、それがひょんなことでとても気になってきたきょうこのごろ。なぜかというと、坂口恭平さんに出会ったから。

 この夏、「ニート道」(←私の勝手な造語)にハマったことは書きましたが()、pha著『ニートの歩き方』経由で坂口恭平さんのことを知り、今度は坂口さんにすっかりハマったしだい。生活ブログで『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』と『独立国家のつくりかた』の感想を書いています。↓
http://sukkiri.artet.net/?cid=43773

 そしてきのう、集英社文庫の『TOKYO一坪遺産』を読み終えました。赤瀬川原平さんの『宇宙の缶詰』の話なども出てきます。私は坂口恭平さんの使う「空間」という言葉が好きです。そして、実際に“コンパクト”でありながら“無限”でもある空間で暮らしている人、商売をやっている人たちの話をスケッチとともに具体的にたくさん聞かせてくれるのが、とても面白いです。

 なんだかずいぶん話が派生して散乱してしまいましたが、「こういうことが考えたい」というイメージは自分のなかで膨らんできていて(必然的につながっていく)、しかし言葉は追いついていかず、いまひとつそれが形になっていなくて、もう少しだけそれをクリアに(複雑なら複雑なままに)してみたい、人と共有できるように、表現できるように、解像度を上げたい、と思っているきょうこのごろなのでございます。

〔2017年11月29日:記事の一部を変更しました〕
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