TETRA’s MATH

<< 結局勉強する偶置換・奇置換、交代群 | main | ガロア理論のどこまで納得していて、何に煮詰まっていて、これからどうしたいのか(2) >>

ガロア理論のどこまで納得していて、何に煮詰まっていて、これからどうしたいのか(1)

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしてきましたが、どうも袋小路にはまってしまったようなので、ここらでいったん整理してみることにしました。

 結局、ガロア理論については何も書いていないに等しい状態であるものの、その骨子はなんとなくつかめてきました。方程式を解くときには、冪根を添加していかねばならず、冪根を添加すると体は拡大する。一方で、解の置換についての群を考えると、体が拡大するのと対応して群が縮小していく。その群の縮小は、正規部分群の連鎖になっていて、最終的には単位元だけの群にまでいきつく。いきつけたときに、方程式が解けるということになる。

 体の拡大と群の縮小の対応は、とある数値からみてもきれいに対応している。すなわち、2乗根を添加して体を拡大すると、そのときに正規部分群がつくる剰余群の要素の数は2になる。3乗根をとれば、剰余群の要素の数は3になる。

 3次方程式を例にとると、最初の段階でL^3とR^3を求めるために2次方程式をつくったときに、2乗根を添加していて、そのときに6つの解の置換は、[123][231][312]と[213][321][132]の2つに分けられる。言い方を変えると、L^3を求めることで[123][231][312]にしぼられる。そして、Lを求めるために3乗根をとったときに、[123][231][312]は、[123]にしぼられる。

 このとき登場する数値は、すべて「素数」になっています(というか、2と3だけですが)。ガロアは第一論文で、添加する冪根はp乗根(pは素数)だけを考えればいいとしたらしいのです。たとえば6乗根を添加したかったら、2乗根と3乗根を順番に添加すればいいので。6√○=3√(2√○)だから。

 先に見たように、2乗根を1つ添加すると、群は2個の剰余類に分割されました。3乗根を1つ添加すれば、3個に。つまり、p乗根を添加すると、剰余類はp個に分割されることになります。pは素数なのだから、縮小した群がつくる剰余群の要素数も素数になっているはず。このあたりのことは、感覚的にもわかります。2乗根をとるまえに2つのものがいっしょくたになっていたと考えると、2乗根をとればそれは2つに分かれるだろうし、3乗根ならば3つだろうし。

 そして4次方程式の場合は、2乗根→3乗根→2乗根→2乗根と添加していくことになり、正規部分群の連鎖で、剰余群の要素数は、24個→12個→4個→2個→1個と数が減っていくのです。この連鎖が、正規部分群の連鎖で示した、S4→A4→H4→C2→E4に対応します。

 5次以上になると、このように、正規部分群の連鎖が作れません。5次方程式の場合は解の置換は120通りで、最初の正規部分群は60通りあるのだけれど、このあと剰余群の要素数が素数になるような正規部分群が作れないということらしいのです。そもそも、自分自身と単位群のほかに正規部分群がない(ということについての証明が、遠山啓『代数的構造』に載っています)。

 プラスアルファの話として、正規部分群の連鎖であらわれる剰余群たちは、みんな巡回群になっているのだと思います。すなわち、ある1つの操作を繰り返すことですべての要素をつくれるような形。A4の場合は、これに[2134]を反応させるとS4に入っていてA4に入っていない要素をつくれるし、もう1度反応させるともとにもどります。また、H4に[1342]を繰り返すとA4のすべての要素をつくれます。

 ほんでもって、何に行き詰まっているかというと、まずは、ガロアの添加元(↓)の意味が理解できずにいます。

r=ζp^1θ1+ζp^2θ2+ζp^3θ3+・・・+ζp^(p−1)θp−1+ζp^pθp

 θが根であればラグランジュ・リゾルベントの一般式になりますが、θは根ではなく根の有理式です。これをどう具体的に作ればいいのかかがわからないのです。なお、添え字の数値が1ずつ増えているのは、ある条件を満たす置換を施しているから。なお、r^p∈Kの証明はわかるし、面白いです。ここはラグランジュ・リゾルベントと関わりが深いと思うので、是非とも理解したい。

 そして、2次方程式、3次方程式と同様に、4次方程式についても具体的に解の置換の集合が縮小されていく様子をみてみたいのに、それを実感できずに困っています。

 4次方程式の解の公式を求めるときには、2乗根→3乗根→2乗根→2乗根の添加で体を拡大していくのだから、単純な形で考えると、X^2=P → X'^3=Q → X''^2=R → X'''^2=S という順番で方程式を解く流れになるはずだと思うのですが、実際の解法をみてみると、確かに「3次方程式を解くなかでの2乗根と3乗根の添加→2つの2次方程式を解くなかでの2乗根2回の添加」という段取りになってはいるものの、それと解の置換がうまく対応していかないのです。というか、それを具体的に示せない。

 最初の正規部分群は交代群なのだから、交代群の置換のみをゆるす2次方程式が出てくると気持ちいいのですが…

 3次方程式の場合はきれいでした。ラグランジュ・リゾルベントのうちのL3(1)^3を考えたとき、解の置換によって2つの結果が出てくることがわかり、これが剰余類が2つになることに対応していたから。

 思えば、解の公式が導けるのは4次までなのだから、具体的な体の拡大&群の縮小をみることができるのは、2次・3次・4次方程式の3パターンだけです。ところが2次はシンプルすぎてかえってわかりにくい。3次はちょうどいいといえばいいけれど、体の拡大&群の縮小の段階が2段階だから、やっぱりさびしい。それに、複数確かめられるから具体的なのであって、そうなると4次方程式の場合がどうなるのかみてみないと、やっぱりしっくりこないのです。

 しかし、ラグランジュ・リゾルベントの定義式そのままの形で話を展開しているページになかなか出会うことができません。ちなみに、先日リンクした、ラグランジュ・リゾルベントでがんばっておられる方は(ブログのタイトルがフィボナッチ数列だ^^〜)、私が勘違いしていなければ、最終的にはL4(2)についての6次方程式、つまりL4(2)^2についての3次式を使っておられると思うのです。↓
http://blog.livedoor.jp/sh11235/archives/25311677.html

 このときにくくれる解の置換は、4次方程式のリゾルベントと格闘するの巻で示した L4(1)^4+L4(3)^4 と同じになるかと思います。たぶん。

 もしかして、4次方程式の場合の最初の「2乗根→3乗根」は、6次方程式を3次方程式とみなして、3次方程式を「2乗根→3乗根」として解くこととは対応していないのでしょうか。

 何かの2乗の3次方程式ではなく、何かの3乗の2次方程式とみなせるものができていれば、2乗根で2つに分けられ、3乗根で3に分けられて、それがクラインの4元群になってくれるととっても気持ちがいいのだけど。

 で、すっかり煮詰まってしまって、どうしたものかと思い、『数学ガール/ガロア理論』の巻末にある「参考文献と読書案内」をざっとながめていたのです。そうしたら、ある1冊の本に心がとまりました。その本に心がとまったそのことが、何かのメッセージだと感じました。しかし果たしてその道は、ドゥルーズ『差異と反復』にもどる道と同じ方向なのだろうか…と首を傾げつつ、本の到着を待っているところです。

 きっとへんなこといっぱい書いていると思いますが、気づいたその都度、訂正していきます。とりあえず経過記録ということで。

(つづく)

読書記録(ガ2) | permalink
  
  

サイト内検索