結局勉強する偶置換・奇置換、交代群
結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。
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4次方程式のリゾルベントはまだ解決しておりませんが、結局、偶置換・奇置換、交代群も勉強しておくことにしました。『数学ガール/ガロア理論』に交代群は出てきていなかったよな?と思いきや、ちゃんとあるところ(別のところ)で出てましたね、さすが!
きょうは『数学ガール/ガロア理論』からは離れます。というか、最近ちょっと離れ気味〜
これまでカードの入れかえをイメージしつつ解の置換について考えてきたわけですが、たとえば4枚のうちの2枚だけをお互い入れかえて、ほかは動かさないような入れかえのことを、互換というのだそうです。それぞれの置換はいってみれば互換をつなげたものと考えることができますが、このなかで偶数個の互換による置換を偶置換、奇数個の互換による置換を奇置換というようです。
たとえば、[3214]は1と3だけの互換で1個だから奇置換、[2143]は1と2、3と4の2個の互換だから偶置換ということになるかと思います。ちなみに[3214]は、[1234]の左2枚を交換して[2134]としたのち、まんなか2枚を交換して[2314]にして、さらに左2枚を交換して[3214]となると考えてもいいので、1つの置換を互換の組み合わせで示すとき、その表し方は一通りではなさそうです。ただし、偶数か奇数かは一致する、と。
で、こうなってくると、まんなか2枚を入れかえることを[1324]と書くのは紛らわしいので、これからは(2 3)と書いていきたいと思います。「2と3を入れかえる」という意味で。[1234]---(1 2)---→[2134]---(2 3)---→[2314]---(1 2)---→[3214] という具合に。
ほんでもって、偶置換の全体を交代群というらしいのです。つまり遇置換の集まりは群をなす、と。単位元も遇置換だから、単位元があってよかったね、という感じ。4枚のカードの入れかえでいえば、クラインの4元群の要素になる形のものはまさに偶置換だし、それ以外にも、
(1 2)(1 3)→ [3124]● (1 2)(1 4)→ [4132]○
(1 2)(2 3)→ [2314]○ (1 2)(2 4)→ [2431]●
(1 3)(1 4)→ [4213]● (1 3)(3 4)→ [3241]○
(2 3)(2 4)→ [1423]○ (2 3)(3 4)→ [1342]●
があります。なお、先に書いたように、( )( )の部分の表し方はいろいろあろうかと思います。●の4つ、○の4つは、群にはなれないけれど、まるでクラインの4元群のような関係性になっていますね。
この12個の要素からなる交代群は、4枚のカードの入れかえの全体S4の部分群となっているわけですが、なんと、対称群(カードの並べかえやあみだぐじの群)の交代群は正規部分群になるのだとか。
もはや正規部分群が遠い昔の話になってしまいました。正規部分群とはなんだったかというと、もとの群の要素を左から反応させても右から反応させても結果が同じになるような部分群のことでした。
少し見方を変えると、3次の場合でいえば、S3の要素の1つをa、正規部分群をC3とした場合、C3★a=a★C3の左から、aの逆元をかけると、a^(−1)★C3★a=C3となり、正規部分群というのは、もとの集合の要素の逆元とその要素で挟み込んだ場合、自分自身と一致するような、そんな部分群だと捉えることもできます(このあたりの参考文献は遠山啓『代数的構造』です)。
具体的に確認すると、
S3={[123],[231],[312],[213],[321],[132]}
C3={[123],[231],[312]}
(例1)[231]★{[123],[231],[312]}★[312]
={[231],[312],[123]}★[312]
={[123],[231],[312]}←C3
(例2)[321]★{[123],[231],[312]}★[321]
={[321],[213],[132]}★[321]
={[123],[312],[231]}←C3
正規部分群以外だとこうはいかないのかどうか、C2a={[123],[213]}でやってみると、
(例3)[231]★{[123],[213]}★[312]
={[231],[321]}★[312]
={[123],[132]}←C2aにならない
(例4)[321]★{[123],[213]}★[321]
={[321],[231]}★[321]
={[123],[132]}←C2aにならない
※ただし、[213]のように、結果がC2aになる相手もいる。
考えてみれば、(遇置換)★{遇置換の全体}★(遇置換)は、{遇置換の全体}のなかでぐるぐるまわしているだけだから結果は{遇置換の全体}となることがわかるし、(奇置換)★{遇置換の全体}★(奇置換)の場合は、(奇置換)★{遇置換の全体}で、それぞれの要素がいったん奇置換になり、そのあとまた奇置換を施してそれぞれの要素が偶置換にもどるので、やはり結果は{遇置換の全体}にもどるというのは、そりゃそうだろうな、とは思います。
じゃあ、中央の集合が奇置換全体の集合でも同じことが言えるんじゃなかろうか?と思うわけなのですが、結局あれですかね、単位元が入っていなくて部分群になれないという、そういう問題なんですかね。どうなんでしょうか。
ちなみに、対称群のなかの遇置換と奇置換の個数は同じになるのだそうです。1つの遇置換に、ある置換を1回施したら奇置換になるわけで、その相手ももとの集合にいるわけであり、逆のこともいえるから、同じ数ずつになってくれないと困るといえば困ります。
ってことは、解の置換について考えるとき、最初の正規部分群はいつも交代群で、それはつまり全体の半分であり、最初の一歩の剰余類はつねに2つということになりそうですね。剰余類のところで出てきた{C3,C3★[213]}がまさにそのことを表している感じがします。→遇置換の集合と奇置換の集合の2つに分けられて、奇置換の集合は偶置換の集合に、ある1つの置換を施したものだ、と。
(つづく)