TETRA’s MATH

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クラインの4元群/レヴィ=ストロースもからめて寄り道

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。

       *     *     *

 ひきつづき4次方程式のリゾルベントと格闘している最中ですが、気分転換も兼ねてクラインの4元群についてざっと眺めておくことにしました(ちなみに『数学ガール/ガロア理論』にこの名は出てきません)。

 4次方程式のガロア群の連鎖のなかで要素数4つのH4という群が出てくるのですが、これはいわゆる「クラインの4元群」になっているのです。元は[1234][2143][3412][4321]の4つ。[1234]のほかは、[1234]のうちのどれか2つを入れかえて、残りの2つも入れかえた形になっています。

 クラインの4元群については、論理学の中の群論的構造でその名を出しましたが、あのときちょっとだけ触れたレヴィ=ストロースのカリエラ型婚姻規則のことについてもう少し詳しくみていきます。といっても、帰ってこられなくなると困るので、寄り道程度でおさまるように。

 ちなみにレヴィ=ストロースというのは言わずとしれた構造主義の祖であり、平たくいえば人文科学に群論を応用した人です。協力者には数学者のアンドレ・ヴェイユがいました。

 今回の参考文献は山下正男『思想の中の数学的構造』(ちくま学芸文庫)です。なお、橋爪大三郎『はじめての構造主義』にもカリエラ型婚姻規則について書かれた部分があるのですが、いままでちゃんと読んでこなかったこの部分をこのたび初めてマジマジと読んでみたら「???」の状態に……。また、山下正男さんの本のなかでもよくわからない部分が……。

 そのあたりのことについて次のページに詳しくとりあげてあり、助かりました。感謝!↓

■犬Q日記>伝統論理学の数学的構造
http://ccoe.main.jp/easy_Diary2/ dia2011.html#September11_2011

 もうひとつ、別の方のページもリンクしておきますね。

■数学屋のめがね>
レヴィ・ストロースの「親族の基本構造」における群構造の理解
http://blog.livedoor.jp/khideaki/archives/51808939.html

 さて、ではその内容をざっと見ていきます。

 オーストラリアのカリエラ族は、部族内に4つのセクションをもっているそうで、これを仮にA、B、C、Dとすると、結婚できるのはAとBの人、CとDの人だけなのだそうです。そして、夫A+妻Bならば、子どもはDに所属し、夫C+妻Dならば、子どもはBに所属します(夫を先に書くことに深い意味はありません、そろえないとわかりにくいのでそろえます)。また、夫D+妻Cの子どもはAに所属し、夫B+妻Aの子どもはCに所属します。

     夫A+妻B → 子どもD
     夫C+妻D → 子どもB
     夫D+妻C → 子どもA
     夫B+妻A → 子どもC

 そうすると、子どもの性別によってその後の婚姻関係が変わってきます。いま、夫婦のタイプを上から順にM1、M2、M3、M4とし、子どもが男性である場合の婚姻のタイプを、両親がM1であればf(M1)というふうに表し、子どもが女性である場合の婚姻のタイプを、両親がM2であればg(M2)で表すとすると、

  f(M1)=M3、f(M2)=M4、f(M3)=M1、f(M4)=M2
  g(M1)=M2、g(M2)=M1、g(M3)=M4、g(M4)=M3

という関係が成り立ちます。

 この規則で磯野家・波野家・フグ田家を分けてみました。参照:ウィキペディア>サザエさんの登場人物

    A…波平の父、サザエ、カツオ、ワカメ、タイ子
    B…波平の母、マスオ、ノリスケ
    C…フネ、なぎえの夫、タラオ、イクラ
    D…波平、なぎえ

 fというのは、男の子を生むことにより新しいカップルを生み出す作用であり、gというのは、女の子を産むことにより新しいカップルを生み出す作用と考えればいいのかもしれません。そうすると、波平の両親は波平を生むことでf(M1)を行い、波平夫婦はサザエを生むことでg(M3)を行い、サザエ夫婦はタラオを生むことで、タラちゃんが結婚したらf(M4)を行うことになります。それはそうと花沢さんはBセクションに入ってるんでしょうか!?^^

 この、カップルの組み合わせ[M1 M2 M3 M4]を元と考え、新しいカップルの組を生み出すことを「演算」と考えて、群がつくれるかどうかを考えたいのです。先の一覧をもう一度。

  f(M1)=M3、f(M2)=M4、f(M3)=M1、f(M4)=M2
  g(M1)=M2、g(M2)=M1、g(M3)=M4、g(M4)=M3

 Mを省略して数字だけで考えていくと、親世代が[1234]であったら、息子たちの婚姻タイプは[3412]となります。1と3、2と4を交換した形です。そして、その息子たちの婚姻タイプは、[1234]となってもとにもどります。

 また、娘たちの婚姻タイプは、[2143]となります。1と2、3と4を交換した形です。こちらも、次の娘たちの婚姻タイプは[1234]にもどります。

 さらに、[1234]の息子たちの世代[3412]の娘たちの世代の婚姻タイプは[4321]となり、これは[1234]の世代で1と4、2と3を交換した形になってます。娘たちの息子世代も同様に。ということは結局、婚姻カップルの変遷の組み合わせは{[1234],[3412],[2341],[4321]}となり、クラインの4元群になっている、というわけです(たぶん)。

 レヴィ=ストロースの『親族の基本構造』を読んでいないので(Amazonですごい値段〜)、何かと不安は残りますが、これ以上立ち入ると寄り道でなくなってしまうので、もとにもどりまーす。

(つづく)

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