TETRA’s MATH

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2次・3次・4次方程式の解の公式を導くとき、何をどう添加しているのか。

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。

       *     *     *

 気がつけば、ラグランジュ・リゾルベントを考え始めて1ヶ月たちました。とりあえず一般式から始めて、ラグランジュ・リゾルベントを使って3次方程式の解の公式を導いていけることをざっとながめたのですが、あのとき体の何をどう拡大していたのかをあらためて考えていきます。

 その前に、2次方程式 ax^2+bx+c=0 でウォーミングアップ。方程式を解くということは、最終的に「x=なんとか」 の形にもっていくことですが、何しろx^2があるので、そのまますぐに「x=なんとか」を導くことはできません。そこでまずは、 (xの1次式)^2=[xを含まない式] に形をかえます。そのプロセスの一例を示すと……

 両辺をaで割って、

   x^2 + (b/a)x + c/a =0

 c/a を移項して、

   x^2 + (b/a)x = −c/a

 左辺を(x+○)^2の形にしたいので、2×○=b/a になるように、両辺に ○=b/2a の2乗を加えて、

   x^2 + (b/a)x + (b/2a)^2 = −c/a + (b/2a)^2

そうすると、

   (x+b/2a)^2 = (b^2−4ac) / 4a^2

というふうに、(xの1次式)^2=[xを含まない式] の形にできました。このあとは、左辺の指数の2を消したいので、平方根(2乗根)をとることになるわけですが、右辺の分子は平方数にはなっていないので、√(b^2−4ac)というものを加えてあげないと平方根をとることができません。

 だから結局、2次方程式の解の公式を得るために、√(b^2−4ac)をこの段階で添加してあげることになります。そうすれば、

   x + b/2a = ±√(b^2−4ac)/2a

        x={−b±√(b^2−4ac)}/2a

という2次方程式の解の公式が出てきます。

(なお、有理数体で考えるときには、出発段階から文字a、b、cを添加したうえで考えなければならないし、ζ2の添加も必要です。)

 では、3次方程式の解の公式を導くときには、何をどう添加しているのでしょうか。まずはラグランジュ・リゾルベントを定義したうえで、L^3とR^3を求めました。この段階ではLとRは方程式の係数では表されておらず(というか、それを求めるのが目的なので)、L^3+R^3 と、L^3 R^3 を手がかりに、x^2−(L^3+R^3)x+L^3 R^3 =0 に対応する2次方程式を係数(変数変換したあとの係数)でつくり、これを解くことで、L^3 と R^3 を係数で表したのでした。

 ということは、この段階で2次方程式を解いているのだから、2乗根を添加する必要が出てきます。そのあとで、今度はL^3とR^3の3乗根をとれば、LとRを係数で表せて、3つの解がLとRで表せて、係数で表せて、すなわち解の公式にもっていけます。

 結局、3次方程式の解の公式を求めるときには、2乗根と3乗根の2回の添加を行っていることになります。

 ではもうひとつ、4次方程式の解の公式を導くときはどうなのか考えます。

 まずは4次方程式に、3次のときと同様に変数変換を行い、3次の項がない式 x^4+ax^2+bx+c=0 にかえます。そして、左辺を2次式の積 (x^2−kx+l)(x^2+kx+m) に因数分解できるよう係数を決めようとすると、kについての6次式が出てきます。なので、s=k^2 とおけば、sについての3次方程式ができて、3次方程式の解の公式を使ってsが求まります。そうすると、k、l、mが求まるので、先の2次式の積が求まって、この2つの2次方程式を解いて解の公式を求めるという段取りになっています。

 ということは、流れとしては「sについての3次方程式を解く→2つの2次式を解く」というふうになっており、3次方程式の解の公式では「2乗根→3乗根」の順で添加したのだから、4次方程式の場合は「2乗根→3乗根→2乗根→2乗根」というふうに添加していくことになりそうですね。

 だったら5次以上の方程式も、同じように冪根を添加していって、解の公式を導けばよさそうなものなのに、なぜそれができないのか……というのがガロア理論の骨子かと思います。

 そういえば大事なことを書くタイミングを逸してしまっていましたが、いま問題にされているのは、「その方程式に解は存在するかどうか」ではなく、「その方程式はいつでも解けるのか」ということであり、その「解く」というのは、「代数的に解けるかどうか」すなわち四則計算と冪根だけを使って解けるかどうか、ということです。

 考えてみれば、2次にしろ3次にしろ4次にしろ、そして5次にしろ、1次方程式ではなくx^nというものが方程式に含まれているので、それを「x=なんとか」にするためには、どこかで冪根をとらなくてはならないというのは、感覚的にも納得できる話です。どこかで冪根をとるということは、一般式で考える場合、何らかの冪根を添加するということであり、そうして添加を繰り返すうちに「x=なんとか」のなんとかが係数であらわせて、したがって解の公式が導けるということになるのですね。

(つづく)

 

〔2020年4月2日〕
 リンク整理につき、記事の一部を削除しました。

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