TETRA’s MATH

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その根をもつように式を作る/最小多項式、正規拡大

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。ネタばれ注意でありながら、章立ても超えて我流(文字通り“自分の流れ”)で書いています。

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 さて、1つ前のエントリで、自分で根を指定して、そこから式を作るとわかりやすい、ということを書きました。それについてもう少し考えていきます。

 たとえば、√2を根としてもつ式は、x^2−2 だけではなく、2(x^2−2)でも、(x+1)(x^2−2)でもいくらでも作れてしまいます。そのいくらでも作れる式に何か条件をあたえて、1つだけにしぼりたい。

 その条件は、式をできるだけシンプルにしてくれるものであってほしいです。次数はできるだけ小さいほうがいいし、係数も1を希望。で、そのような条件を満たす多項式を、最小多項式というようです(定義の書き方があいまいですみません、ウィキペディアの最小多項式の下のほうに、「体論における最小多項式」という項目があります)。

 a=√2の場合でいえば、2(x^2−2)=2x^2−4 は、x^2の係数が1ではないから最小多項式ではないし、(x+1)(x^2−2)=x^3+x^2−2x−2 は3次式で、√2を根にもつ多項式として x^2−2 という2次式があるのだから、やはり最小多項式ではない、ということになります。

 で、ある根をもつ式を作ることに慣れるために、もうちょっと複雑な根を考えます。お題は(√2+√3)。せっかくなので、『数学ガール/ガロア理論』とは違う道筋で求めてみます。

   x=√2+√3
   → 両辺を2乗して、x^2=5+2√6
   → x^2−5=2√6
   → 両辺を2乗して、x^4−10x^2+25=24
   → x^4−10x^2+1=0

 よって、√2+√3 を根にもつ多項式 x^4−10x^2+1 ができました。これが最小多項式がどうかはちゃんと証明しなくちゃいけないことのようですが(3次式や2次式では本当に作れないのか)、とにもかくにも、こんなふうにしてある数を根にもつ多項式を作ることができるわけなのでした。

 ちなみに、x^4−10x^2+1=0 を解くと、解は、√2+√3、−√2+√3、√2−√3、−√2−√3 の4つ出てきます。私は x^2=X とおき、もとの方程式を X^2−10X+1=0 として考えました。そうすると、解の公式から、X=5±2√6となり、ここで2つ出てきて、さらに平方根をとるときに2つに分かれるので、合計4個となります。

 根から式を作るときには両辺を2乗するので1通りしか道筋はないけれど、式から根を求めるときには平方根をとるときに道がわかれるので、√2+√3を根としてもつ多項式を作ったら、その多項式は別の根ももっていることになります。

 別の根ではありますが、見た目からもわかるように、これらの根はばっらばらのものではなく、1つの方程式で結ばれた根たちです。こういうときに共役という言葉が役に立ちます。つまり、√2+√3をもとにして、これを根とする式を作ると、その式は、√2+√3 の共役な他の根ももっている、というわけです。

 さて、話は変わって……というか、話はもどって、1つ前のエントリで示した x^3−2 の因数分解について再び考えます。これは、Q(3√2,ω)の世界までいけば、(x−3√2)(x−3√2 ω)(x−3√2 ω^2)というふうに、1次式の積に因数分解できました。ここまでくると、x^3−2 の根がすべて体に含まれていることになります。こういうふうに体を拡大することを、正規拡大というようです。そのひとつ前の、ωのないQ(3√2)の世界では、3√2 ωや3√2 ω^2 が体に含まれていないので、正規拡大とは言えません。

 つまり、Q(3√2,ω)まで拡大すれば、それはQ(3√2,3√2 ω,3√2 ω^2)でもある、というわけです。

(つづく)

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