TETRA’s MATH

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「x^3−2」を因数分解するとき/多項式の既約・可約、既約多項式の性質

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。ネタばれ注意でありながら、章立ても超えて我流(文字通り“自分の流れ”)で書いています。

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 群からいったんはなれて、ここらで多項式のことを考えてみたいと思います。お題は「x^3−2」という式の因数分解。

 x^3−2 は、2の3乗根(このブログの文中では3√2と表すことにします)のない世界では、因数分解することができません。

 しかし、2の3乗根を加えると、x^3−2=(x−3√2)(x^2+3√2x+3√4) というふうに、因数分解できます。

 さらに、1の原始3乗根であるωを加えれば、x^3−2=(x−3√2)(x−3√2 ω)(x−3√2 ω^2)というふうに、もう一段階、因数分解することができます。

 このように、どの世界で考えているかで、因数分解できる場合とできない場合があるわけですが、これ以上因数できないとき、その多項式は既約であるといい、まだ因数分解できるときに可約である、というようです。つまり…

  x^3−2
    ↑Q上の既約多項式
  =(x−3√2)(x^2+3√2x+3√4)
    ↑Q(3√2)上の既約多項式2個の積
  =(x−3√2)(x−3√2 ω)(x−3√2 ω^2)
    ↑Q(3√2,ω)上の既約多項式3個の積

 同様に、「x^2+1」は、有理数体Q上では因数分解できないので既約だけれど、iのある世界では(x+i)(x−i)と因数分解できるので、「x^2+1」は複素数体C上では可約となります。

 ちなみに、体Q(3√2)には有理数体Qが丸ごと入っていることを、Q(3√2)⊃Q と書いたり、Q(3√2)/Q と書いたりするようです。Q(3√2)はQの拡大体で、QQ(3√2)の部分体ということになります。

 さて、既約・可約という言葉の「約」は、なんとなく分数の「約分」を彷彿とさせます。これ以上できる・できないということからも。また、因数分解というとやはり素因数分解を思い出すわけですが、実際、多項式の世界は整数の世界は何かと対応するもよう。

 いってみれば、既約多項式というのは、これ以上分解できないのだから、整数の世界の「素数」のようなものと考えればよさそうです。

 ほんでもって、f(x)とg(x)という2つの式があり、f(x)はある体上の多項式で、g(x)は同じ体上の既約多項式だとすると、f(x)とg(x)が共通の根を持つならば、f(x)はg(x)で割り切れるという性質があるらしいのです。

 たとえば、有理数体上の多項式として f(x)= x^4−1 を使い、既約多項式として g(x)=x^2+1 を使うと、f(x)とg(x)は共通の根iをもっています。そして、f(x)=(x^2+1)(x+1)(x−1)となることから、f(x)はg(x)を丸ごと因子としてもっており、f(x)はg(x)で割り切れる、ということがわかります。

 これは、ある整数Nと素数Pがあって、NとPが共通の素因数をもつならば、NはPで割りきれる(例:整数9と素数3があって、9と3は共通の素因数をもっていて、9は3で割り切れる)ということを、多項式の世界で言っているようなものです。

 なんだかとてもあたりまえのことのように聞こえますが、g(x)がその体上で既約というところがミソなんだろうなぁ、と思いました。そして、f(x)とg(x)が1つ共通の根をもっていたら、f(x)はg(x)のすべての根をもつことになります。先の例でいえば、f(x)とg(x)は共通の根iをもっていて、g(x)は−iも根としてもっているのに、f(x)がiは根としてもつが−iは根としてはもたない、という状況はありえない、と。(と書いていて、何かがかすかに不安なのだけれど……)

 これは、実際に自分で根を指定して、そこからある体上での既約多項式の例を考え、もうひとつ別の可約な多項式を考えてみるとわかりやすいです。たとえば√2を共通の根としてもつ2つの多項式を有理数体上で考えると、g(x)=x^2−2 という例がつくれて、f(x)としては x^4+x^2−6 などの例がつくれます。f(x)=(x^2−2)(x^2+3)と因数分解できるので、やっぱりf(x)はg(x)をまるごと因数としてもっており、したがって、f(x)はg(x)で割り切れるというわけです。

(つづく)

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