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数学と数学教育
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1票そのものを分割する投票システム(1)/投票行列

 『なめらかな社会とその敵』(鈴木健/勁草書房/2013)の「分人民主主義」のところを読んでいます。鈴木さんは分人民主主義のための投票システムとして、「伝播投票委任システム」を提案されています。

 はやい話、自分のもつ1票を好きなように分割して投票できるシステムで、矛盾した意見に0.6票と0.4票に分けて投票してもかまわないし、だれかに委任してもいいようになっているのです。私、この投票システム、やってみたいな。でも、人によってはなんだかおかしいと感じたり、無責任だと感じる場合もあるかもしれませんね。衆議院選挙や知事選挙でこれをやってみたらどういう結果が出るのだろう? ぜいたくをいえば、一度、従来どおりの1人1票の投票と、「伝播投票委任システム」を同時にやって、結果がどう違ってくるかを見比べてみたい。

 とりあえず、具体的な投票の例で、システムの内容を確認していきたいと思います。

 いま、有権者は同居しているA、B、C、Dの4人として、今夜のごはんを投票で決めることにします。候補は、カレー、焼肉、おすしの3つ。この場合、1人の有権者は他の人に委任してもいいし、直接メニューに投票してもいいので、投票先できる相手(人・メニュー)は6項目です。自分もあわせると7項目になるので、7×7行列を考え、それぞれの要素の値で投票の割合を示すことにします。

 まず、Aさんは、断然カレー!と言っています。なので、カレーに1を投票します。Bさんは、焼肉かおすしがいいなぁと言っていて、それぞれに0.5投票しました。Cさんは特に希望がないようで、Aさんに任せると言っています。なので、Aさんに1投票。Dさんは、強いていえば焼肉がいいけど、まあ、Bさんに任せるよということで、Bさんに0.6、焼肉に0.4投票します。

 ほんでもって、これからまた行列を考えていくのですが、伝播委任投票システムでは j から i への投票値を意味するVijを成分として投票行列Vを考えるので、列和が1になるような行列を考えていくことになるらしいのです。PICSYのときと違いますね。なお、PICSYのときには出てきていなかったような気がする「確率遷移行列」という言葉がVにあてられています。そして、ベクトルを行列の右からかけるような形の式が出てきます。

 なお、メニューは人にも他のメニューにも投票しないわけですが、「反復計算のときに票をそこに蓄積させたいという技術的な理由のため」、メニューからメニューへの投票を表す3×3の部分は単位行列になります。すなわち、自分自身に1を投票するような形になります。こうなるとメニューの投票についても、列和が1になって、具合がいいですね。

 というわけで、投票行列は次のようになります↓


  

(つづく)

鈴木健『なめらかな社会とその敵』 | permalink
  

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