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数学と数学教育
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江本伸悟さんの行列のテキストを読みながら

 『なめらかな社会とその敵』(鈴木健/勁草書房/2013)についてあれこれ検索するなかで、この本の中に出てくる「行列」を理解するためのテキスト(PDFファイル)を見つけました。江本伸悟さんという方が書かれたもののようですが、どのサイトに属しているんだろう?ともとをたどったら、アシル治療室というところに到着。治療室で数学サロンを行ったときの資料なのだそう。治療室で数学サロン! 面白いなぁ。なるほど、こちらはこのアプローチからの「からだ」なのですね。「ファイルダウンロード」のページに、たしかに「2/17数学サロン資料」がありました。江本さんは物理畑で非線形科学を専攻されている方のようですね。

 で、私としては、やはり『なめらかな社会とその敵』のなかの固有ベクトルの定義が気になっているのです。固有ベクトルは、一般的には、Ax=λx、すなわち(行列)×(ベクトル)=(固有値)×(ベクトル)の形で定義されていると私は認識していて、それが『なめらかな社会とその敵』では、xA=λxというふうに、(ベクトル)×(行列)=(固有値)×(ベクトル)という形をしているので。

 なんだか久しぶりに、「かけ算の順序問題」を思い出します。かけ算に順序が“ある”場合の例として、行列どうしの積が出されることがよくあると思うのですが、行列とベクトルの積の場合はどうなんだろうなぁ・・・と。実際、行列の中身を転置すれば、どちらでもよくなるのですが、転置しないといけないわけであり、少なくともMaximaくんはAx=λxの定義を採用しているようなので、どうでもよくなっていないのでございます。どちらの定義が「一般的」なんだろう?と考えているうちに、固有ベクトルの歴史も気になってきました。

 

 このことを気にしているのは私だけなんだろうか??と、ちょっとさびしくなって検索してみたものの、特に違和感を感じている人は見つけられないので、私だけかもしれません。そうなのか……。いや、私も、定義が示されていればどっちでもいいと思うのですが、ちょっと気になったものですから。(もしかするとxA=λxのほうが一般的なのだろうか?)

 ほんでもって、江本さんも xA=λx で固有ベクトルを定義されています。そりゃそうですよね、『なめらかな社会とその敵』の理解のための資料だから。そしてこの資料のなかで、行列を「ベクトルを変化させるもの」と紹介されています。

 そういう話になると、かつてこのブログで書いた作用する行列作用するベクトルかけ算における「ハタラキ」という言葉の整理のことなどを思い出します。あるいはちょっと派生してベクトルで主客反転を考える---「あなたはだれ?」のことなど。

 江本さんのテキストを読んでいると、固有ベクトルを xA=λx と定義する方法は、行列のほうを「ハタラキ」と考え、そして、「モノ(?)×ハタラキ」の順で定義するものなのだなぁ、と思えてきます。

 ベクトルを横ベクトルで考えると、文中でもそのままの形で表せるので、便利といえば便利かもしれませんね。ただし、PICSYの評価行列では、メンバーを上から並べるので(自分から他への評価を横に並べて行和が1になる)、貢献度ベクトルをあわせて示すと、縦に並びます。でも、その状況は貢献度ベクトルを縦ベクトルで考えても同じなので(評価行列でメンバーが横に並び、貢献度を示すとこれも横に並ぶ)、どっちがどっちということもないですね。

 まあ、どうせ行列で縦幅とられるのだから、ベクトルも縦にしたほうが、逆に横に広がらなくて省スペースかもしれないですね……って、だんだん発想が森毅っぽくなってきた!?(いや、私は原稿料は関係ないけど)

鈴木健『なめらかな社会とその敵』 | permalink
  

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