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数学と数学教育
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ベクトルの「正規化」はやはり理解必須だった。

 鈴木健『なめからな社会とその敵』に出てくる数式を細かく読み解いていく(2)/p.70の続きとp.72において、正規化は理解必須ではないというようなことを書きましたが、やっぱりこれも、もう少しちゃんと考えておくことにしました。

 水槽のアナロジー()では、操作を何度繰り返しても変わらない水の量を整数で示すと、(40L、35L、38L)になりました。このとき、水槽の水の量の合計は、40L+35L+38L=113Lになります。固有ベクトルは、何倍かしてもいいのだから、もし、合計の水の量を1Lにしたいのであれば、水槽Aには(40/113)L、水槽Bには(35/113)L、水槽Cには(38/113)Lの水を入れておけばいい、ということになります。なので、合計の水の量を3Lにしたいのであれば、それぞれ3倍すればいいわけであり、小数で求めると、順に、約1.0619、約0.9292、約1.0088となります。Excelで求めた数値()もそのあたりに落ち着いています。

 で、以前、「正規化」について大間違いな記述を残したまま書きかけのエントリを公開したことがあったのですが、あのとき確か、113Lがノルムであるような書き方をしていたと思うのです。

 だけどこの場合、ベクトルのノルム、つまり(40、35、38)という3つの数の組をベクトルとして考えたときの“大きさのようなもの”は、√(40^2+35^2+38^2)=√4269で、約65.3376となります。ノルムはやはり矢線で考えたほうがわかりやすく、空間座標で原点と点(40,35,38)を結ぶ線分を直方体の対角線とみなすと、その長さは√4269となり、この方向の矢線で長さが1となるものの終点の座標は(40/√4269、35/√4269、38/√4269)となります。こういう形にするのが、いわゆる「正規化」なんだろうと思います。

 40L、35L、38Lというのはそれぞれ水の量なんだけれど、これが3つの数の組となったとき、つまりベクトルとなったとき、それはもう「単なる水の量」からとびたち、3つで1つの新たなものになるのだと思います。その、新たなものになったうえでの“大きさのようなもの”が、ノルムなのだな、と。

 だから、正規化をすると、(40、35、38)のそれぞれを約65.3376でわって、だいたい(0.6122、0.5357、0.5816)となるわけですが、水の量の合計を3Lにしたいときに、つい、この値を3倍したくなります。しかし、そうではなくて、この3つの数値をたした1.7295をもとにして、和を3にするためには 3÷1.7295=1.7346(倍) くらいすればよい、と考えなくちゃいけないわけですよね(何かにつけ桁数の区切り方がきわめて適当ですみません)。そうすると、(0.6122、0.5357、0.5816)→(1.0619、0.9292、1.0088)となり、先の数値と一致してとりあえずほっとします。でも、なんだかきつねにつままれた気分。不安。

 とにもかくにも、PICSYの貢献度ベクトルって、そういうふうに定義されているのですよね↓

  →  

 だからやっぱり、正規化の理解は必須でした。

 PICSYについて考えているときにわからなくなるのは、扱っている数値が普通の「300円」とか「1980円」とかではなく、また1割引きとか20%増しでもなく、単位のない小数がとびかっていて、それが行列のなかの要素なのか、固有ベクトルであるところの貢献度ベクトルのなかの数値なのかがわからなくなるところです。水槽のアナロジーでは、行列の中の数値は「ポンプが送り出す水の量の比率」だったし、固有ベクトルは「水の量」だったのだけれど。

 たぶん、普通の「お金」や「金額」で考えているうちは、わからないのでしょうね。1枚の値打ちが変化していく「自分株券」のようなものと考えるのがコツなのかな。やっぱり、ワークショップなどで実際に体験するのが、いちばん話は早いのかもしれません。

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