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数学と数学教育
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鈴木健『なめらかな社会とその敵』に出てくる数式を細かく読み解いていく(7)/p.78のさらにつづき

 『なめらかな社会とその敵』(鈴木健/勁草書房/2013)のp.76〜78に載っている数式を細かく読み解いているところです。いま、(4.21)について考えています。

 さて、売り手sさんへの流入の差分まできました。

 (4.21)の前

 次は流出の差分です。本ではσ(1−Ess)となっていますが、これはこういうことでしょうか?

 (tamami)

 なるほど、流入の差分も流出の差分も、最終的な形に「t+1」は入っていないので(そうなるように変形したのですが)、もう「t」も消してよさそうですね。

 で、流入の差分と流出の差分が等しいので、

 (4.21)の前

という等式ができて、ここからσが求められます。

 (4.21)

 なお、(4.20)から(4.21)にいたる流れは、本の中では次のように示されています。



 そういえば肝心のことを書くのを忘れていましたが、自然回収によって生成されるEbbは予算制約として導入されたものであり、メンバーはこの予算制約の範囲内で他の人と取引をすることになります。

 で、鈴木さんは上記の式を導出したあと、「それゆえ,売り手の自己評価(予算制約)が高ければ高いほど,買い手にとっての価格は低くなる」と書いておられ、これは、Essが大きくなると1−Essは小さくなり、(4.12)の右辺の最初の分数の分母も小さくなるので、σが一定のとき、分子にあるαも小さくなって、買い手にとっての価格は低くなる、ということなのだろうと理解しました。予算制約を大きく取ろうとすると(使えるお金を少なくしようとすると)価格が安くなるのですね。

 ほんでもってこのあと、(4.21)の右辺で「1−Ess」をとりさった(1−Ess=1とみなした)ものが示されて、これは買い手から売り手へのフローの差分である、そのため、価格はほぼ流入量の差分になる、と書いてあります。

 結局、上の式で示した「売り手への流入の“差分”」というのが、買い手から売り手へのフローということになり、これがσ(1−Ess)とイコールで結ばれて(4.21)の式が出てくるのだから、1−Essをきわめて1に近いものと考えるという意味で“ほぼ”、σになるということなんだろうと私は理解しました(が、いまいちすっきりせず)。

 とりあえず文字式は追えましたが、具体的な数値の取引で考えないと、さっぱりイメージがつかめないですね……。


(つづく)

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