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鈴木健『なめらかな社会とその敵』に出てくる数式を細かく読み解いていく(5)/p.76〜78

 『なめらかな社会とその敵』(鈴木健/勁草書房/2013)の第4章を読んでいます。PICSYのシミュレータも見つけたことなので、具体的な数値でも考えていきたいと思っていますが、まずは、本に載っている文字式による証明の内容を追ってみたいと思います。

 PICSYにおける「取引」では、bさんがsさんから財を買うとすると、bさんはsさんに(通常貨幣だったら「お金」にあたるところの)評価を与えるので、bさん自身の評価は減り、bさんからsさんへの評価は増えます。この増減分をαとすると、時間(t+1)におけるbからbへの評価、bからsへの評価は、次のように表せます。

 (4.13)(4.14)

 すでに書いたように、2人だけの間の取引が行われて、行列の中の数値が2つ変わっただけでも、貢献度ベクトル(=固有ベクトル)は変わってしまいます。また、ふつうの貨幣制度のように、「だれが買うときも300円」というような意味で定価をつけることは、PICSYでは適切ではありません。

 PICSYでは貢献度が購買力に転化されるという基本原理をもっているので、定価は、売り手の購買力を同じだけ上昇させる値であるのが妥当ということになります。買い手が誰でも、売り手の購買力アップの量に変化がないような、そんな定価を考えなくてはなりません。ということで、PICSYでは次のδが定価と考えられます。

 (4.15)

 つまり、時間(t+1)における売り手sさんの貢献度は、取引のあとで、時間tにおける貢献度よりもδだけアップしているよ、と。そういうδが定価だよ、と。

 一方、上の(4.13)(4.14)でみたように、買い手側のbさんからみれば、αだけsさんに支払う(評価する)ことになります。では、αとσの関係はどうなるのか? というわけで、δとαの間の近似的な関係式は、買い手と売り手の間に強い取引関係がない場合、以下のようになるとして、次の式が示されています。

 (4.16)

 「買い手と売り手の間に強い取引関係がない」というのがいまいちよくわからないのですが、ものすごく大きな額でやりとりをしないということでしょうか? ひとまずおいといて、証明をがんばって追ってみます。

 まず、「強いループが存在しないものとする。そのためのbへの正味流入量(自己ループのEbbの効果は取り除くものとする)は不変である」として、次のような式が示されているので、私が自分の理解で勝手に説明を加えてみました。


(4.17)

 そして、式(4.7)()で示したとおり、流入量は流出量と等しいので、

 (4.18)

となります。言葉で書けば、「正味流入量+自分から自分への流入量」(すなわち流入量の合計)は、「もとあった量」(すなわち流出量)と等しい、という感じでしょうか。個人的には、ここでもまだEやcの右肩にtをつけておいてもらったほうがわかりやすいのですが……。それだったら、次の式が理解しやすくなるのです。

 (4.19)

 つまり、(4.18)の式は時間tにおけるものとみなして、これを時間(t+1)におきかえると、 

 (tamami)

となるから、(4.13)を代入して、

 (tamami)

というふうに。これから先は、もうtは省略する発想でいいのかな? 

 長くなったので、ひとまずここまで。


(つづく)

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