TETRA’s MATH

<< 鈴木健『なめからな社会とその敵』に出てくる数式を細かく読み解いていく(1)/p.69,70 | main | 転置行列にしても固有値は変わらないことの確認 >>

鈴木健『なめからな社会とその敵』に出てくる数式を細かく読み解いていく(2)/p.70の続きとp.72

 『なめらかな社会とその敵』(鈴木健/勁草書房/2013)のp.69〜72に出てくる数式を細かく読み解いているところです。

 いま、(4.1)から(4.4)まで読みました。このあとは、次のような式が示されています。

 (4.5)

 これは、「通常の線形代数では,cバー(tamami注:λ=1のときの固有ベクトルを構成する各々の数値と思われる)はユークリッドノルムが1になるように正規化する」という説明のもと示されている式です。

 「通常ではこうするよ」ということで、一応示されているのだと思います。ここでは特に理解必須でもなさそう(>やはり必須でした)。ノルムというのは、平たくいえばベクトルの「長さ」にあたるものだと思いますが、水槽のアナロジーでは水の量の組を考えており、(40L,35L,38L)の“長さ”って何よ?という素朴な疑問が生じます。

 そこで、いったん矢線としてのベクトルを考えると、たとえば座標平面上で、原点と点(3,4)を結ぶ線分の長さは、直角三角形の斜辺として考えると、三平方の定理を使って、√(3^2+4^2)=√25=5と求められます。また、(40,35,38)についても、座標空間のなかの点と考えれば、直方体の対角線の長さとして、√(40^2+35^2+38^2)=√4269というふうに求められます。

 このへんまでは「長さ」ですが、数値が4以上になった場合どう考えるの?と首を傾げてしまうわけであり。でも、数値が4以上になった場合も、とりあえずこれまでと同じように考えて、それぞれの数値の(絶対値の)2乗をたして平方根をとったものを、そのベクトルの“長さのようなもの”にしよう、というのがノルムの考え方なんだろうと現時点での私は理解しています。

 そして、すでに見てきたように、固有ベクトルはたくさんあるので、そのうち“長さ”が1であるものに代表させようというのが、「正規化」の意味なのかな?と思っています。なので、上の式は、「固有ベクトルのなかの数値すべて(c1,c2,c3,……,cN)について2乗して加えたものが1になるようにしてあります」ということを言っているのでしょう(2乗して加えたものが1ならば、その正の平方根も1になり、“長さのようなもの”も1になるので)。

 で、PICSYのモデルでは、貢献度ベクトルcは次のように定義されます(μは定数)。

 (4.6)

 cバーは固有ベクトル(のうち正規化されたもの)だから、それの定数倍も固有ベクトルであり、それはどういう定数倍かというと、ベクトルの要素の和がNになるように調整したもの、ということなのでしょう。水槽が5つあったら、水の量の和が5になるように、人が100人いたら、貢献度の和が100になるように。ちなみに本では、この次で水槽のアナロジーが出てきます。

 ほんでもって、p.57の表にもどると、ここでA、B、C、D、E5人の取引を考えたときの、「評価行列」と「貢献度」の表が示されています。ほんとうはF、G、H、…とまだ続くのでしょうが、それは「…」で示されています。ちなみに、計算サイトで計算しようとしたところ、私のパソコンの能力のせいなのか、タイムアウトで強制終了となってしまいました。なお、「貢献度」の和は4.99444なので、確かに約5になっています。
 
 このあと水槽のアナロジーの説明を経て、p.72に以下の式が示されています。水槽iに入ってくる水の量と出ていく水の量が、すべての水槽で一致することを表したものです。

 (4.7)

 EijやEjiは行列のなかの数値(ポンプの能力)を表しており、ciやcjは水槽の水の量です。(行列やベクトルじゃなくてそれを構成している数値なので問題はないのですが、この順序だとベクトルを右からかけているように思えますよね。そうなると固有ベクトルの式は、Ec=λcのほうがわかりやすいんだけどな)

 ほんでもって、私が水槽のアナロジーを考えたときに水槽Cの水の量をcとしたため、貢献度cと記号が重なって紛らわしいので、水槽の記号を1、2、3にかえ、ポンプの能力をE、水の量をcで表すことにすると、たとえば水槽2から水槽3への水の移動の比率はE23、水槽2の水の量はc2と表せます。なので、水槽2から水槽3に移る水の量は、E23×C2となります。

 そうなると、水槽2に入ってくる水の量は、E12×c1+E22×c2+E32×c3となり、これは E■2×c■ の■に1、2、3と順に入れていって計算してたした結果です。また、水槽2から出ていく水の量は、E21×c2+E22×c2+E23×c2となり、これは E2■×c2 の■に1、2、3と順に入れていって計算してたした結果です。

 貢献度というのはいわゆる固有ベクトルにあたるものなので、操作の前後で水の量に変化はないことになり、たとえば40L入っていたら、40L出ていって、また40L入ってくるようなものなので、「入ってくる水の量=出ていく水の量=もとの水の量」という式が成り立つことになります。それがすべての水槽で成り立つよということを、上記の式は言っているのだと思います。

 以上が、「第4章 PICSYのモデル」のなかの、「4.1 一般的な評価システムとしての静的モデル」に出てくる数式です。すでに書いているように、これを貨幣システムに応用するためには、動的なモデルに組み替えていかねばならないのでした。

(つづく)

読書記録(な) | permalink
  
  

サイト内検索