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数学と数学教育
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「比的率」とは外延量という考え方(15)/これから考えたいこと

【「比的率」は外延量という考え方】

(1) 比的率とは何か
(2) 問題意識
(3) 「割合の三用法」の組み換え
(4) 国際単位系SIと「単位1」
(5) 「単位」の深みにはまる
(6) 割合のイメージ
(7) 比例の式のとらえ方
(8) 遠山啓の「水槽」について考える
(9) 倍がつくる正比例関係 
(10) 複比例のこと
(11) 図形における比率から、「デカルト座標平面線分算」へ
(12) 様々な「1」が混在してしまうこと
(13) 円周率のこと
(14) 加法保存性と比例定数



(15) これから考えたいこと

 「比的率」は外延量という考え方について長いこと書いてきました。まだまだ考えたいことがありますが、これから先、話が派生していったり、移っていったりすることもあるかと思いますので、ひとまずこのシリーズを一段落させたいと思います。というわけで、課題点として残ったことをまとめておきます。



 まず、(14)で考えようとしていた2つのうちのもう1つについて。これは多次元量の等分除・包含除について考えてみたかったのでした。(9)で示したように、多次元量の正比例関係をベクトルと行列でとらえると、包含除は「いくつ分」にあたるベクトルを求めればいいので逆行列をかけることが相当しますが、等分除の場合は比例定数を求めなくてはならないので一筋縄ではいきません。

 参考文献にしていたのは『数学の目・算数のすがた』(瀬山士郎/日本評論社/1993年/p.101〜102のあたり)です。瀬山先生は等分除のことを微分型わり算と呼び、普通は線形性だけを扱う多次元量の世界ではこのわり算は考えず、包含除を拡張した形で考えると、書いておられます。そしてベクトル解析の話がほんの少しだけ出てくるのですが(dvとなるところが2ヶ所duになっているような気がするのは私の勘違いだろうか・・・)、さすがにこのあたりは付焼刃の勉強では無理そうです。ただし、等分除そのものの発想ではないですが、拡張された帰一法が、それに近いといえば近いのかもしれません。



 次に考えたいのは小学校の比例の学習で出てくる、「y=きまった数×x」と「y=x×きまった数」の2通りの比例関係について。「1辺の長さxcmの正方形の周の長さycmを y=x×4 と表現しようが y=4×x と表現しようが、どちらでもいいのだ」というかけ算の順序固定の問題ではなく、私にとっては比例定数は「1あたり量」という発想があったので、そこをどう考えるのかという問題が自分のなかで整理されていない、ということです。

 なお、かけ算の順序問題に関連してついでに書いておくと、初等数学教育をとりまく、私が感じる“ねじれ”を整理してみる
私は、「小数×整数」と「整数×小数」を別の学年で教えると解釈できる指導要領にも、かけ算の順序固定の発想が含まれていると認識しています
と書きましたが、あのあとtetragonさんとお話ししながらつらつら考えるにつけ、やはり被乗数・乗数と「記号×」の前後関係を別ものと考えれば、指導要領には「かけ算の順序固定」の発想は含まれていないといえる余地はあるなぁと思えてきました。教科書会社の解釈の問題である、と。しかしそうなると、やはり乗数・「被」乗数ということで、かけ算を構成する2つの数値は役割が違う、ということは指導要領も言っているのですよね。



 もうひとつ考えたいのが、高橋誠『かけ算には順序があるのか』(岩波書店)を読んで考えたこと(4)/個人的にはここが要(かなめ)でとりあげた、積分定数さんの「速さの問題における、1あたり量といくつ分」の読み替えのことです。なお、その後の意識の変化については、ちょっと比例の話を広げてみる>エレベーターとアクリルたわし圏もどきで書きました。

 「時速4kmで3時間歩いたときに進む道のり」は、普通の「1あたり量×いくつ分」の式で書けば、「4km/時×3時間」となります。「1時間あたり4kmの3時間分」ということですが、これを「3km/(km/時)×4km/時」と解釈できるかどうか、という話です。当初私は単位の形に注目して納得したのだろうと思います。こうすることで、かけ算は比例を前提にしていることがより浮き彫りになった、と。

 なお、『かけ算には順序があるのか』の初版では「「時速1kmあたりで3km歩く道のりの、時速4km分」という解釈が示されていましたが、やはりこれは勘違いだったらしく、その後の版では訂正されているようです。つまり、「時速1kmあたりで3km歩く“時間”の、時速4km分」ということになろうかと思います。

 一度納得したはずなのですが、そのときの感覚が思い出せなくなっており、「1あたり」の「1」として「速さ(km/時)」を認められるかどうか、という疑問がわいてきたわけなのです。加速度などの場合は、たとえ単位が重なっていくとしても、「1あたり量」はいつも1時間なり1分なり1秒なりの時間なのでわかりやすいのですが。

 そこで、1枚のお皿が4つあれば4枚になるように、時速1kmを4つあわせて時速4kmにできないかどうか考えてみました。たとえば、時速1kmで進む長〜い台車があり、その台車の上を時速1kmで走る台車があり、さらにその上にも台車、そしてまた台車を考えると、いちばん上の台車は、地面からみれば時速4kmで動いていると考えていいですよね。この場合、いちばん下の台車が3km進むのにかかる時間は3時間であり、そのあいだにいちばん上の台車は地面から見ると12km進んでいる、と。

 このように、いったん道のりをかませて、「いちばん下の台車は3kmを3時間で進む」→「3時間で他の台車は3kmずつ進む」→「3km/台×4台分」というふうに解釈すると、確かに「3km」は「遍在」しているように見えます(私は図示して考えるときに、いまのところこの案しか思いついていません)。「3km/(km/時)」は本来3時間なのに、不思議です。そして、それぞれの台車の速さが違っていた場合は、3km/時が平均のようにして見えてくるかもしれません。このあたりまだまだ考察が足りないので、もう少しつっこんで考えてみたいです。

 もし、こういう入れ替えが可能だとすると、「記号×」をはさんだ左右の数値をどんどん入れ替えることができて、同じ「3×4」でも「4×3」でも、あわせ鏡のようにして無数の解釈ができるのかもしれませんね。3段階以上では具体的な世界ではちょっと大変かもしれないけれど、これを抽象的に考えていったらどういうことになるのか、という興味もあります。
 
 なお、速さのこの問題を、takehikomさんが複比例とからめて考察されているページを見つけていたので、リンクさせていただきます↓
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120215/1329252792

 複比例については(9)で書きました(その後、森毅の別の記述も見つけました)。私も面積について、片方を固定すれば片方に比例する、という発想から複比例的なものととらえていたのですが、それを言えば、すべてのかけ算にあてはまってしまうのですよね。複比例というよりは、段階の違う比例、といったほうがいいのかもしれませんが、このあたりもまだ整理できていません。でも、「トランプ配り」が「1回」という新しい単位を導入するのに対し(そうしなくてもできるのかもしれませんが)、速さのほうは、使う単位は同じで、組み立て方がかわっていくわけであり、それが分数で構成されていくというところが面白いなぁ、と思っています(速さも先ほど「台」を導入して説明したし、結局同じことかもしれませんが)。



 いままとめられるのはだいたいそんなところです。

 このような思考の機会を与えていただいたことに、あらためてtetragonさんにお礼を申し上げたいです。ありがとうございました〜!!(^^)/ 「比的率」という視点に限定せずに、この話を発展させられていけたら・・・と思っています。
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