TETRA'S MATH

数学と数学教育
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「比的率」は外延量という考え方(10)/複比例のこと

【「比的率」は外延量という考え方】

(1) 比的率とは何か
(2) 問題意識
(3) 「割合の三用法」の組み換え
(4) 国際単位系SIと「単位1」
(5) 「単位」の深みにはまる
(6) 割合のイメージ
(7) 比例の式のとらえ方
(8) 遠山啓の「水槽」について考える
(9) 倍がつくる正比例関係 



(10) 複比例のこと

 私はこのブログで複比例という言葉を3つのエントリの中で使っています。どれも長方形の面積と関連させて出してきています。

「長方形の面積=タテ×ヨコ」の意味
高橋誠『かけ算には順序があるのか』(岩波書店)を読んで考えたこと(4)/個人的にはここが要(かなめ)
正比例から始まる「森ダイアグラム」の意味・4/線型代数のイメージ(その2)

 それで、このたびtetragonさんとあれこれお話しさせていただくなかで、面積とは別の目的意識も持ちつつ複比例について考えようとしていたときに、「あれ・・・!? 私は複比例を誤解しているぞ・・・」ということに気づいたしだい。複比例を誤解しているというか、複比例と長方形の面積を直接つなげて考えるのはおかしいということに気づいたというか。

 私は複比例というものに対して、独立変数を2つもっているという大まかなイメージを抱いていました。そのこと自体は間違っていないと思うのですが、長方形の面積の式において、たての長さも横の長さもまったく“対等に”変数になれるという感覚が、“同時に”変数になれるという感覚につながってしまっていたのです。

 複比例ときくと、銀林浩『量の世界・構造主義的分析』を思い出します。しかし、銀林先生は面積の例を出してきていません。そもそも、複比例のところはちゃんと読んでいなかったと思う。じゃあ、この感覚はどこからきたのか・・・自分で結びつけちゃったのか・・・?と思いきや、どうやら森毅の影響を受けていたもよう。

 複比例関数というのは、入力が2つ、出力が1つであるような関数z=f(x,y)のうち、xとyが独立に変化できて、xを一定にたもてばzがyに比例し、yを一定にたもてばzがxに比例するような関数であり、一般式はz=axyになるようです(aが比例定数)。

 ちなみに銀林先生は、貨物の重量xt、輸送距離ykm、運送料z円で例を示されています。実際にこういう料金体系が存在するかどうかはわかりませんが、運送料が荷物の重量にも輸送距離にも比例するというのは、それなりに納得できる設定です。しかし、この場合、重量と輸送距離をかけた値が運送料になるわけではありません。つまり、そのまま長方形の面積とは結びつけられない。

 もし結びつけるとしたら、せめて、たての長さがxcm、横の長さがycm、高さが3cmの直方体の体積zがz=3xyとなる、そういう場合について考えなければならないのではなかろうか、と思いなおしたのです。高さを1cmにすれば、比例定数が1となり、結果的にz=xyとなって、こうなると長方形の面積の公式で、確かにxを固定すればzはyに比例するし、yを固定すればzはxに比例しますが、これは、かけ算の式を正比例関係としてとらえるときとは別の話ですよね。森毅も、「複比例型の“乗法”」と言っているわけであり。

 いや、さすがに私も、長方形の面積の公式を複比例関数だと思っていたわけではないのですが、いま考えたい長方形の面積の公式の特殊性を、複比例という言葉で語ってはいかんな…ということに気づいたという、そういう話です。

 (7) 比例の式のとらえ方で、いろいろなかけ算の式を示しましたが、単位の観点から見れば、長方形だけ特殊です。かけあわされている2つの量の単位が同じなので。「1あたり量×いくつ分」のかけ算は、大抵、「1あたり量」と「いくつ分」が入れ替え可能だということはこれまでも見てきたわけですが(いわゆるトランプ方式など)、長方形の面積の場合、そのような入れ替えのための解釈が必要ありません。縦と横の区別は図形の置き方の区別であり、他の場合の入れ替えとは性質が異なると思うので。だからこそ、交換法則を学習するときに、「長方形型にならべた図」を用いるのだろうなぁ、と思っています(助数詞について考え方がかわりそうなことは(4)に書きました)。

 Googleで「複比例」を検索すると、2番目と3番目に「わさっき」内のページがひっかかってきましたので、文献のほうをリンクさせていただきます。あいかわらず、文献の研究を細やかにされているのですねぇ〜(^^)
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120418/1334700739


(つづく)

 

〔2017年11月28日:記事の一部を変更しました〕

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