TETRA'S MATH

数学と数学教育
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「比的率」は外延量という考え方(7)/比例の式のとらえ方

【「比的率」は外延量という考え方】

(1) 比的率とは何か
(2) 問題意識
(3) 「割合の三用法」の組み換え
(4) 国際単位系SIと「単位1」
(5) 「単位」の深みにはまる
(6) 割合のイメージ



(7) 比例の式のとらえ方

 現在、小学校で比例を学習するときは、「ともなって変わる2つの量○、△があり、○が2倍、3倍、・・・になると、それにともなって、△も2倍、3倍、・・・になるとき、△は○に比例するという」というような定義になっています。また、小6に入ってからxやyなどの文字を取り入れ、「=きまった数×」という比例の式が公式のようにして教科書にのっていると思います(いつぞやの調査のメモがおおざっぱすぎて、きちんと把握できず・・・涙)。>小学校算数教科書6社のプチ比較(小5における比例の導入) また、中学校ではy=axで定義して、2倍、3倍、・・・については比例の性質のような扱いになっているのではないかと思います。(ちなみに、それぞれの変数側ですでに「倍」が出てきていることについてはのちほど考えます)

 そんなこんなで、比例の式はかけ算の形に表されるわけですが、いま、比例定数と変数の区別がつかないようにするため、y=ax を、左右ひっくりかえして記号「×」を入れ、文字も変えて、A×B=Cで考えることにします。

 A×B=C は単純なかけ算の形をしているので、例はたくさんあります。「1人にA個ずつB人の子どもにみかんをくばったときのみかんの総数はC個」、「1mあたりの重さがAgの針金Bm分の重さはCg」、「AkgのB倍はCkg」、「たてAcm、横Bcmの長方形の面積はCcm^2」、「時速AkmでB時間進んだときの進んだ道のりはCkm」などなど。

 A個/人 × B人 = C個
 Ag/m × Bm = Cg
 Akg/1 × B倍 = Ckg  ←さっそく分母の1を採用
 Acm × Bcm = Ccm^2
 Akm/時 × B時間 =Ckm

(このなかで、単位の観点から見ると面積だけが特殊ですが、こちらについてものちほど考えることとします。)
 
 そして、かけ算の形をしているAとBのどちらかの値を変数とみなし、残りを定数として求めれば、一応は比例の式ができあがります。言い方をかえれば、AかBかのどちらか一方を定数として固定すれば、残りを変数としてCとの比例関係が成り立つと言えそうな気がしてきます。

 もし、小学校で、「1あたり量×いくつ分」の順序にこだわり、しかも「y=きまった数×x」を公式のようにしてこだわるとすると、比例定数としてみなせるのは「1あたり量」だけ、ということになるはずです。なお、比例の式が公式のように示される前から、2量の関係を式で表すということはしていると思います()。

 だから、そういう比例のみにしぼって話を進めているなら「あっぱれ」だと思っていたのですが、そうはなっていなかったので、予想外のことに「ちっ」と舌打ちしてしまったのでした(^^;>「ともなって変わる量」の学習に出てくるかけ算の式・2 (東京書籍)

 なお、学習指導要領においては、小6の内容のなかに「比例の関係について理解すること。また,式,表,グラフを用いてその特徴を調べること。」とあるので、もしかしてもしかしたら、小6で式が出てきたあとは、1あたり量が定数になる比例のみを出してきているかもしれません(未確認)。
【学習指導要領/小学校/算数】
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/san.htm

 で、もし、「y=きまった数×x」という式に対しても、公式のようにして強くこだわる先生がいたら、高学年で困ったことが起こるはずなのですが、いったいどう対応しているのだろう?というのがかねてからの疑問でした。そうしたらやはり、こういうことが起こっているようです。↓
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1273260777

 1辺の長さがxcmの正方形のまわりの長さをycmとしたときの比例関係で、「1あたり量×いくつ分」のかけ算の式で書けば「y=x×4」となりますが、これだと「きまった数」があとにくるので減点されたという話です。

 私の印象では、少なくとも小5までは、“比例関係における”「1あたり量」と「いくつ分」の区別はほとんどなされていない感触があります。区別を意識していないというよりも、それらを区別して比例を考えることをしていない、という感じです。これまでさんざん区別してきていますから、区別はあるのですが、それと比例との関係をほとんど考えていない、と言えばいいでしょうか。

 さらに、かけ算、関数、モノとハタラキ (1)の最後の図からわかるように、遠山啓なきあとの数教協の本でも、「倍」や「割合」を比例定数としている比例がバリバリに出てきていて、出てくるどころかあのセクションの構成からいうと、そこから話が始まっています。これまでは、「倍」や「割合」を「1あたり量のかけ算」とは別に考えていたので、整理がつかなかったのですが、「もとにする量×倍」も「1あたり量×いくつ分」も同じであると考えれば、結局、「倍」や「比的率」を定数とする比例は、先の正方形のまわりの長さと同様に、「いくつ分」を定数とした比例関係ということができると思えるようになりました(円周率のことなどについてはまたあとで考えます)。

 数教協の「量の理論」としては、本来であれば、そうなると話は比例の定義・導入に集約されていくの後半で示したように、「1あたり量をもとにした量的比例→単位あたり量から微分へ」と進むのが筋だと思うのです。しかし、須田先生も増島先生も井上先生も、(私の記憶では)大学または中学・高校の先生で、小学校の先生ではありません。高校までいけば、あれこれ説明がつけやすい理論ですが、小学校高学年では、割合と比も学習しなくてはならないので、何をどう解釈し、どうつなげてどう進めればいいのか、とても苦労する理論になってしまっていると感じています。もはや理論というよりは、「ブラックボックスや水槽を使えば数教協風」といったような、そんなニュアンスになっているといっても過言ではないかもしれません(「かけわり図」は私にはあまり馴染みがないので、よくわからず・・・)。

 しかも、先ほど「遠山啓なきあとの・・・」と書きましたが、遠山啓がいるうちから、比例の導入は混乱しています。おそらく遠山啓としては、比につなげることを意識して、比例を(動的なものをとらえる)関数の第一歩としてとらえさせるために“シェーマ”として水槽を提案したのでしょうが、これから先を意識するあまり、これまでの流れを意識しなかったのか、比例定数がもろに「比的率」になってしまっているのです。そのことについて、見ていきます。

(つづく)

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