TETRA'S MATH

数学と数学教育
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「比的率」は外延量という考え方(4)/国際単位系SIと「単位1」

【「比的率」は外延量という考え方】
(1) 比的率とは何か
(2) 問題意識
(3) 「割合の三用法」の組み換え



(4) 国際単位系SIと「単位1」

 tetragonさんは物理の先生ですから、日々がっつり「量」に取り組まれていることでしょうし、算数・数学よりはるかにシビアに単位と付き合う日々を送っておられると思います。で、「個をmと同じように考えていいのかなぁ...」「単位1ってどうかなぁ...」と思っていた私は、tetragonさんから、国際単位系SIで4〜5年前から「単位1」という扱いをするようになったという話をきいて、びっくり。なんだそれは!?!?

 で、教えていただいたサイトの該当ページ(p.16、31、46)をまじまじと読んだしだい・・・
www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf

 というわけで、国際単位系SI(第8版/2006年)の文書の中から、いま考えたいことに関わりそうな部分を読んでいきます。まずは、超基本から(p.13)。

量(quanity)の値(value)は一般に数字(number)と単位(unit)の積として表される.

 ここですでに目から鱗・・・ 「積」なのね。「3m」は3にメートルがくっついているんじゃなくて、3×1mなのね、いや、こう書いてもいけない。3×mなのですね。つまり、m自体が単位。

単位とは単にその量の基準となる特別な例のことであり,数字は「単位」に対する「量の値」の比を表す.

 やはりそうなんだ。「m」という記号が単位なのではなく、「m」と定義されたメートル原器の長さ・・・じゃなかった「1秒の1/299 792 458の時間に光が真空中を進む距離」そのものが「単位」ということなのですね。って、ここに“秒”が入っているのはいいんだろうか?? と思いきや、ウィキペディア>国際単位系にこんな説明が・・・→「単位の定義に求められるのは何より実用性、すなわち現在の社会生活に必要かつ十分な精度を持ち、定義値が容易に実現できることである。このため、定義の独立性は意味を持たない」 実際にリアルな量を扱うんですものね・・・そんなにスパッスパッとはいかないですよね。

 つまり、「m」と定義された基準に対する量の比が、数字の部分である、と。だから、棒切れ1本をもってきて、これをbowと設定し、この棒の3つ分の長さをもつひもがあったら、その長さを3bowと呼ぶようなものなのかな、と私は思いました。ああ、それで宮下先生は、「数は量の比」とおっしゃっていたのね()。

 でも、SIの文書でいくと、「量の値は数字と単位の積」であり、数字は「量の値の比」であるならば、“量”という言葉の循環論法になりますね(と、あいかわらずスパッの頭で考えてしまう私)。上の2文をまとめると、「量の値は、一般に、単位に対する量の値の比と単位の積として表される」となるよな。… 単位とは単にその量の基準となる特別な例・・・?

 一応、英語版も確認しておきます。

The unit is simply a particular example of the quantity concerned which is used as a reference, and the number is the ratio of the value of the quantity to the unit.

 たしかにexampleで、ratioのようです。ふぅむ。

また,基本単位(base units)と呼ばれる少数の単位によって単位系を定義し,その他全ての量の単位を組立単位(derived units)と呼ばれる基本単位のべき乗の積として定義すると便利である.

 基本単位についてはあとで確認します。

科学的観点からみれば,ある量を基本単位や組立単位に分類するということは単なる決め事であり,対象の物理学的本質とは関係ない.

 はい、頭に入れておきます。

 さて、次は基本単位(p.14)。

SI における基本量は,長さ,質量,時間,電流,熱力学温度,物質量及び光度である.基本量は便宜的に独立とみなす.それぞれの基本量に対応するSI 単位はCGPM によりメートル,キログラム,秒,アンペア,ケルビン,モル及びカンデラと選定された.

 便宜的に独立とみなすわけなのですね。
 
 そして、次元について(p.15)。

組立量の次元を与える方程式において,次元指数がすべてゼロとなるような組立量が存在する.特に同じ種類の量の比として定義される物理量がそうである.そのような量は無次元(dimensionless),もしくは次元1(dimensionone)の量と呼ばれる.

 ああ、これが遠山啓の言っていた「ディメンジョンがない」ということだろうか。kg/kgのような形。無次元だから次元はないけど、次元ゼロではなくて次元1なのか。そっか、次元指数がゼロってことなんだ。kg ÷ kg = kg^1 ÷ kg^1 = kg^(1−1)=kg^0=1 で、次元指数はゼロ、次元1ってこと? それぞれの基本量の次元に記号があてられているというのも驚きました。

 で、いよいよ今回の話に直接関わる部分(p.16)。

また,SI の七つの基本量では記述することができないいくつかの量があるが,それらは数えられる個数を表わす.例えば,分子の数,量子力学における縮退度(同じエネルギーをもつ状態の数),統計熱力学における分配関数(熱的に取り得る状態の数)である.このような数の量は無次元の量,または単位1を伴う次元1の量と見なされる.

 にゃーーー

 つまり、1個と数えられるものは、「単位1」を伴う次元1の量なのですかっ。これらは「SIの七つの基本量」では記述できないのだから、だとしたら、基本量の一覧表にメートルとかとならんで「1」と示される日がくるかもしれないってこと!?!? だとしたら、けっこう衝撃的だ・・・ 「1」を存在者として認めておいてよかったぁ()ってそういう話じゃない!?^^;

 ってことはですよ。「個」とか「袋」とか「皿」とか、そして「人」とか、小学校算数でおなじみのいわゆる助数詞をつけて表されるような「1」も、SI単位として立派に認められつつあるということなんでしょうか。そういうことではないんでしょうか。うーん、なんかよくわからんけど、もしそうだったらすごい気がする・・・ だって、どうやって定義するんかっちゅう問題があると思うのです。メートルといったらメートルだけど、1っていろんな顔がありますよね・・・

 さらにp.31には、次のように書いてあります。

無次元量の他のグループには,分子数,縮退度(エネルギー準位の重なりの個数を表す),統計熱力学における分配関数(熱的に実現可能な状態の数)など個数を表す数がある.基本単位で表される組立単位とは言えないが,これら個数の計数にかかわる量のすべては,次元の無い又は次元が1 の量として記述され,単位としてSI 単位1 をもつ.このような量についての単位1は,さらなる基本単位と考えるべきかもしれない.

 私は最初にここを読んだとき、「考えるべきかもしれない」という言い回しがちょっと意外でした。こういう文書って、「こうです、こうなのです、こうします」と書いてあると思ったから。でも、第7版から第8版に向けての変更点もいろいろあるようですし、これまでも変わってきていて、これからも変わっていくのでしょうね。

 tetragonさんは、もともと上記のような立場に立っておられたそうで、だから今回(2006年)の改変のわずかな変更に気がつくことができたのかもしれない、とおっしゃっていました。ということは、自然科学界で話題騒然という事態でもないのですね。でも、基本単位の表の8番目に「1」って加わったら、なんかすごくないですか!?

 SIで認められるかどうかが問題なのか?という疑問の持ち方もありましょうが、そういう取り決めが変化していく、その背景には興味があります。量ってやっぱり、社会的なもの(自然界を含めての社会的なもの)なんだなぁ、と()。

 がしかしそうなると、せっかく区別した「度的な率」の単位である「kg/kg」と、「比的な率」のもととなる「100g/1」の1が、同じもの、ということになってしまわないだろうか?と別の悩みが生じたしだい。でもこれは、区別した「濃度20%」と「100gの20%」とを、いまだに同じ土俵で考えているからだと気づきました。そうではなくて、「濃度20%」と、「100gの20%というときの100g/1」を同じ土俵で考えればいいのですね(でも、まだやっぱり何か釈然としないものがもやもやと・・・あとでまた考えよう)。そして、「100g/1」は立派に「度」ですね。gと1は異種の単位だから。ってことは、内包量は基本的に「度」なのか!?

 三用法の組み換えでも確認したとおり、結局、「比的率」は「1」を単位と認めれば、外延量と内包量を入れ替えることで、「度」に組み替えられるということになりそうです。つまり、倍の計算は、そのまま(1あたり量)×(いくつ分)である、と。ふおー。


(つづく)

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