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数学と数学教育
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谷村省吾『理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何〜双対性の視点から〜』のp.24〜25とp.200に感動する

 2月の末に、谷村省吾『理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何〜双対性の視点から〜』(2006年/サイエンス社)という本を買いました。まだ読んではおらず、そばに置いておいてたまにぺらぺらめくっている状態です。この本のことを知ったのはだいぶ前で、買ったつもりでいたのに、まだ買っていなかったことに気づいて購入したしだい。ちなみにその背中を押してくれたのは檜山正幸さん(ていうか、檜山さん経由で知ったのだったかな?)。↓
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20070122/1169425937

 ざざざっとながめてみて、すでにp.24〜25とp.200に感動しております。なので、カヴァイエスにもどる前に、その部分についてちょっと書いておきたいと思います。

 著者の谷村省吾さんは数学者ではなく、専門は理論物理だそう。理論物理を専門としている方がトポロジー・圏・微分幾何学に関する入門書を書いた理由の一つは、現代の理論物理にはトポロジーや微分幾何学の方法が普及していて、自分もそれをよく利用している研究者なので、学生や研究者がこれらの数学にもっと親しみを持って、これらの数学を使ってもらえたらよいと思ったから、とのこと。また、トポロジーや圏論や微分幾何学は素人には近寄りがたい「高級な数学」ではなく、この世界に生起する出来事を語るためのとても自然な言語であり、これらを自分の言葉として活用できるようにしておくと,いろいろなことが生き生きと見えて楽しいですよ、ということを伝えたいとも書かれてあります。

 そしてもう一つ、「正規の数学者ではない私の方が数学の解釈や意味を多くの読者に伝えやすいだろうと思うからである」ということも動機になっているようです。由緒正しい数学書では定義・定理・証明を整然と書くというスタイルが確立していて、平易な言葉で説明するところまで手が回らないものだけれども、自分は数学者ではない身上の気軽さから、証明などそっちのけで、この数学を通して数学者や物理学者は何を語りたかったのか、何を見ようとしているのか、という本音や意味論、心意気みたいなものを議論できる立場にいる、と。

 数学も物理学も人の営みである.人の営みである以上,作った人が何に注意を払ったか,何を大事だと思ったか,という意思の働きが必ずその学問に吹き込まれている.数学を学ぶということは,そこに込められた意思や視点まで汲み取って学ぶことだと思う.

  (「まえがき」より)

 ああ、そういう本を読みたかった気がするなぁ・・・ かといってこの本はざっくりとした数学者列伝、数学史的読み物というようなものではまったくなく、まさに数学の入門書だと思います。数学の本を読みたいが証明はひとまずわきにおいといて(証明してくれた人を信じるから)、まずはその“意味”を教えてほしい、という気持ちが(特に圏論に対して)強くある自分にとっては、このうえない本なのかもしれません。こういう本がもっと増えるといいなぁ・・・ でも、数学者がこういう本を書くのはかなり勇気がいることでしょうし、ストレスフルなのでしょうね。どのジャンルの本も、そのジャンルのまっぽす専門家ではなく、隣接領域にいてよく知っている人に書いてもらうのがいちばん面白くてわかりやすいのかもしれません。

 さて、谷村省吾さんがこの本を通してもっとも伝えたかったことは何かというと、「双対(そうつい)性」という視点です。世界の深くて普遍的な本質を捉える「まなざし」として。

 双対ときいて私が最初に思い出すのは正多面体における双対関係のこと、なかでも正四面体の自己双対のことです。双対多面体とはある多面体の頂点と面を入れ替えた(という言い方はわかりにくいですが)多面体のことであり、過去のエントリでは「とれたての定理です 第5巻」から/正多面体の双対関係とヴァーチャル多面体の話で説明のための図を示しています。このエントリでは正六面体(立方体)と正八面体の双対関係を示す図になっていますが、同じことを正四面体にすると、正四面体は頂点も面も4つなので、やっぱり正四面体ができます。

 また、論理学のことをちょっとかじったときには、「束」の双対律の存在感のことと、ブールはベキ等律は発見していたが双対律は発見していなかったことなどを知り、面白いなぁと思いました。>ブールが発見していた「ベキ等律」論理学の幾何学的表現と双対原理

 さらに、最近、デザルグの定理に縁があると書きましたが、デザルグの定理も自己双対的な定理らしいのです。確かこの定理との縁の始まりは、銀林先生が圏について説明する中で出てきたのを読んだときだと思うのですが、直接つながる話なのかどうかはまだわかりません。あと、遠山啓の本でもどこかで出てきていたような記憶がうっすらとあるものの、何の話だったかは思い出せず・・・。そしていちばん近いところでは、近藤和敬『カヴァイエス研究』の脚注で出会いました。>メタ数学と形式主義のプログラム、なぜかサントリー「山崎」

 ほんのさわりだけ書くつもりでしたが、いざ書き始めると、第1章についてだけは、ある程度のことを書いたほうがいいのかもしれないという気になってきました。第1章のお題は何かというと、「外延と内包の双対性」です。

(つづく)

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