TETRA'S MATH

数学と数学教育
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「わられる数=わる数×商+あまり」においても教科書にぬかりはなかった

 かけ算を、「1つ分の数×いくつ分=全体の数」で導入すると、その逆算として、「1つ分の数」を求める等分除と、「いくつ分」の数を求める包含除が考えられるということをみてきました>。そして「あまりのあるわり算」というものもあるわけで、これも3年生で学びます。基本的には「あまりのあるわり算」は包含除で考えるのが自然かと思いますが、等分除も出てきます。

 たとえば、娘が使っていた学校図書(平成16年検定済、22年発行)の小3下の教科書では、導入は包含除(23このみかんを4こずつふくろに入れる)ですが、そのあと「42このくりを,5人の子どもに同じ数ずつ分けます。1人分は,何こになって何こあまるでしょうか」という等分除的な問題が出されています。当然のことながら42cmのリボンを5等分するような問題は出されていません。

 そして4年生。ここでは「小数×整数」に限定して小数のかけ算を学んでおり、「1つ分の数×いくつ分=全体の数」というかけ算の式に照らし合わせると、整数はかならず「いくつ分」であり、そうすると当然、「小数÷整数」は「いくつ分」でわるわり算、すなわち等分除になりそうなものですが、学校図書の小4下の教科書(平成22年検定済、23年発行)をみてみると、確かに導入は等分除(5.7mのリボンを3人で分ける)なのですが、ちゃんと包含除も出てくるのです。「あまりのあるわり算」で。

 どういう問題を使っているかというと、「テープが13.5mあります。2mのテープで花かざりを1こ作ります。花かざりは何こできて,テープは何mあまるでしょうか」という問題。そしてここで、「わられる数=わる数×商+あまり」を学ぶのです。

 私は以前、このあたりの段階で「1つ分の数×いくつ分=全体の数」の順序がくずれるんじゃないかと思っていたのですが、上記のテープの問題では「13.5÷2=6あまり1.5」→「13.5=2×6+1.5」となり、見事に「1つ分の数×いくつ分=全体の数」は守られています。

 「あまりがある計算」は包含除で考えるのが自然なので、ということは「1つ分の数」でわることになり、自然、「わる数×商」が「1つ分の数×いくつ分」になるという流れです。というか、だからこそこの言葉の式になっているのかもしれません。方程式風に考えれば、「わられる数÷わる数=商」の変形は、「わられる数=商×わる数」のほうがしっくりくるわけであり。

 等分除だってわりきれないことがあるだろうに……と思いきや、ちゃんと「2.3Lのジュースを6人に同じ量ずつ分ける」という問題があって、ここでは何を学ぶかというと、「わり切れなかったり、けた数が多くなったりしたときには、がい数で求める」ということを学ぶのです。もはや小数まで世界は広がっていてわられる数は連続量なので、等分除を整数でとめるのも不自然だし、がい数を学習済みなので、こういうことができるわけです。

 あまりのあるわり算って、整数の世界の話(がメイン)という印象があるのですが、そんなこんなで、整数のわり算の段階では、「わられる数=わる数×商+あまり」の式は出せないわけです(×、+の混じった式を既習か否かも関わってくるかも)。なぜならば、等分除「全体の数÷いくつ分=1つ分の数」に適用したときに、「全体の数=(制限のある)いくつ分×1つ分の数+あまり」となってしまうので。いっそ、「等分除であまりのあるわり算ってないんだ」とすれば話はスッキリするのですが、立派でリアルな「あまりのある等分除の問題」を作ってくださっているのです。
 
 一方、東京書籍(平成22年検定済)はどうなっているかというと、やはり「小数÷整数」を等分除(3.6Lの水を3人で等分する)で導入したあと、あまりのあるわり算を計算問題として考えさせて、「13.5mのリボンから4mのリボンは何本とれて、何mあまるか」という包含除的な文章問題を出しています。

 さらに東京書籍の小6上の教科書で「分数のわり算」をみてみると、そこにあるのも等分除の発展形(3/4dLのペンキで板を2/5m^2ぬれるとき、1dLのペンキでは板を何m^2ぬれるか)ですが、もはや“等分”の雰囲気はなく、「1dLのペンキでぬれる板の面積」や「ホース1mの重さ」を求める問題になっています。

 つまり、△dLで□m^2ぬれるとき、1dLで○m^2ぬれるとすると、□÷△=○という式ができることを分数にまで発展させたものですが、○と△と□を使って「1あたり量×いくつ分=全体の量」の形の式を作ると、○×△=□となります。これも「商×わる数」の形になっているのですが、いまは「あまり」が出ないので、例の公式は関係ないということになるのでしょう。「あまりが0」というのは考えないのだな。

 いやはや、教科書にぬかりはないようです。というか、実にうまいことやってます(表面的には)。とにもかくにも「1あたり量×いくつ分=全体の量」の順序は、徹底されているようです。

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