TETRA'S MATH

数学と数学教育
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カヴァイエスが挙げている「乗法の反復としての指数」の例

 近藤和敬『構造と生成1 カヴァイエス研究』の第3章を読んでいるところですが、ちょっと先にとんで、「第4章 操作と概念の弁証論的生成」の第2節の一部をのぞいておきたいと思います。ここは、カヴァイエスによる「理念化」のヒルベルト的解釈について述べてあるところで、1854年のデーデキントの議論のことが書かれてあるのですが、どうしてこういう話が出されているのかはひとまずおいといて、「乗法の反復としての指数」の例だけを抜き出します(p.120〜121)。まんま引用ではなく、学校数学の学習体系も考えあわせながら、指数の拡張についてみていきます。

 現在、学校で累乗を学ぶのはおそらく中1だと思いますが、2×2×2=2^3といった式を使って説明していることでしょう。「2を3回かけあわせることを、2^3と書きます」という言葉による説明もあるかもしれません。教科書でどうなっているかは未確認(というか忘れてしまった)ですが、たとえばこんな感じで。↓
http://posi-nega.juniorhighschool-math.net/multiplication_division/involution.php
http://buchiyamato.web.fc2.com/ruijoutoshisuu.html

 この段階では指数は「回数」ですから、基本的には正の整数だけが想定されており、1/2回や、0.87回や、−3.89回といったものは、

この定義の直観的な意味解釈においては含まれないはずである。

で、

これが「形式化から逃れる操作」である。

というわけです。

 指数が負の整数に拡張されるのは高校になってからで、手元にある少し古い世代の教科書では、数学兇了愎関数に入る前段階で指数法則を学んでおり、指数が分数、無理数まで拡張されています。検索してみつけたとあるサイトによると、数学Bで複素数まで拡張できることがわかると書いてありましたが、実際に複素数乗が出てくるのかどうかは未確認です。

 本にもどると、指数を含む計算では、反復の回数をあらわす指数においても a^x × a^y = a^(x+y) および a^x ÷ a^y =a^(x−y) と定式化することは可能であり、このこと自体はもともとの「反復としての指数」という定義の範疇内にある、と話は続きます。

 しかし、この式を、そのような直観的な定義という制限から解放し(これを解放するための条件が問題となることについて、このあと書かれてある)、この関係式自体を抽象的で普遍的な定義としてみなすならば、この式はxとyを変数とする連続関数となり、その連続関数を成立させるしかたでxやyに代入されるべき要素を決定することが可能になります。そして、xやyに代入されるべき要素の範囲は、負の数や有理数や実数の範囲内となります(近藤さんとはほんのちょっと違う書き方をしています)。

 ただし、そこでは、もはやもともとの直観的な意味解釈であった「乗法の反復としての指数」という定義は、その形式的に拡張された定義においては、部分的にしか維持されていません。

これが、「理念化」による「一般化」の方法のもっとも原始的な事例の1つである。
近藤和敬『カヴァイエス研究』 | permalink
  

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