TETRA'S MATH

数学と数学教育
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きのう娘と「0.2×0.3」について考えてみた

 きのうの夕方、娘が学校から帰ってきたあと、宿題も終わって、毛布を敷いて2人でゴローンと休憩タイムをしているときに、小数のかけ算について話し合ってみました。以前も「こどものちかく」で書いたことですが、「紙とえんぴつ」なしで考えることの面白さをしみじみ感じるきょうこのごろです。そのかわり私自身も起こったことをその場でメモできないので、記憶しておかねばなりません。さて、どのくらい再現できるでしょうか。

 まずは、「0.2×0.3」ってどうやって計算しようか?ということを考えました。最初に娘は0.6という答えを出してきましたが、「ん?」と思ったのか、少し考えて、0.06という答えを出してきました。「0.8×9.2」の筆算では73.6という答えだったのに、今回は小数点を2つずらすということを思いついたようです。なぜそういう展開になったのかというと、おそらく「紙とえんぴつがないので筆算ができなかった」ことと、「2つとも1より小さい小数を使った」ことがミソだったような気がします。

 ほんでもって、どうして0.06になるのかということについて話し合ってみたところ、例の「小さくなる」という発想のほかに、「2×3=6は変わらないんだから……」「20×30=600なんだから、その逆をすればいい」というようなことを言っていました。ちなみに、途中途中で「うちの子、天才〜!」と親バカぶりを発揮したのは言うまでもありません、はい。

 そして今度は、「0.2×0.3」という式になる文章題を作ってみようということになりました。これは、0.2こずつのものが0.3こ分ということだけれど、0.2こずつの0.3こ分ってなによ?

 ここで2つの疑問がわきます。1つは、「小数って何?」ということ。もう1つは、「かけ算って何?」ということ。

 ちなみに娘は、かけ算よりもわり算のほうが好きなようで、しかも小数が好きらしいのです。「1÷8」によほど感動したのでしょう。これまでぜったい無理だったわり算ができるようになったこと。しかもそれがわり切れることの気持ちよさ。おかげで、絶縁した「2ケタでわるわり算」とも復縁しました。

 で、0.2を考えるにあたり、娘は「1このパンを5人で分ける」という案を出してきました。なるほど、そっか、0.2このパンね。それはそれで1切れだけど。0.2こずつ0.3人に分ける……0.3人って?

 そうこうするうち娘は、平方センチメートルという単位を出してきました。1cm^2のパンを5人で分けるというらしいのです。しかも0.3をかけると小さくなるという発想があるので、もはやそれはパンくずじゃないか〜〜ということになり、だいたいこのあたりでお互いの集中力は切れ、小数のかけ算談義は終了したのでした。

 最終的に娘が出してきた案は、「ポケモンの、より複雑な規則を作って、0.2×0.3が出てくるようにする」ということでしたが、具体的にどういう規則か……というところまでは思いつかなかったようです。

 娘が平方センチメートルを出してきたとき、私がまったく誘導尋問をしていないかというと、なんともいえません。そんなつもりはないけど知らず知らずのうちにやっていたかもしれません。というか、そもそも記憶をたどって書いているので、記憶を改ざんしている可能性も低くないわけであり。

 いずれにしろ、「私はこのように受けとめた」ということのレポートであり、すべての子どもがこうであるということではなく、ある1人の子ども(うちの娘)がこう考えた、それをある1人の人間(私)がこう捉えた、というだけの話ではあります。だとしても、そんな子どもが1人いて、そんな大人が1人いたのだ。

 娘と「0.2×0.3」について考えながら、私は2つのことを思いました。1つは、「0.2×0.3=0.06」という計算をしたときの娘は、かけ算を「計算のルール」だけを念頭において考えているということ。いわば、数の世界で小数の計算を考えています。

 しかし、「0.2×0.3」というかけ算の式が使える文章問題を作るということになると、とたんに話は難しくなります。「小数」の登場により、それまでできなかった「1÷8」というわり算ができるようになった。しかし、そうなると今度は、「かけ算とは何だったのか」というところを考えなおすことになる。あるいは、「小数でもかけ算は使えるのだろうか?」と。そういうふうに考えていくと、「かけ算」は2つの量で成り立っている、ということをあらためて思い知ります。それは、(1あたり量)×(いくつ分)の定義であろうが、(「1」とみなされる量)×(倍)であろうが、同じことだろうと思います。(長さ)×(長さ)=(面積)であっても。(追記/やっぱり、(「1」とみなされる量)×(倍)は、2つの量を必要としないかも)

 学校でやることとは話がひっくりかえっていて面白いのですが、実は教科書を作った人も、私と同じ発想を出発点にしているかもしれません。教科書では具体的に量を使ってある場面を設定し、2×3をもとにして0.2×3を理解させ、0.2×0.3を理解させるけれども、きのうの私たちは、まず0.2×0.3ありきで、これに対応する現実的な問題をさがしました。教科書の目的も、実際には針金の重さやジュースの値段を求めることにあるのではなく、かけ算を小数の世界まで拡張させるために、説明しやすい題材をさがした。そして、反転させて学ばせる。のかもしれない。そうじゃないかもしれない。

 「かけ算の順序」問題について、「小数、分数」を含む計算、および「単位量あたりの大きさ、割合」という「小学校高学年」の学習内容を念頭においた議論が(膨大な議論のなかの)どこかにないか、いずれさがしたいです(きっとあるでしょう)。探しつつ、自分でも考えていきたいです。

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