TETRA'S MATH

数学と数学教育
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メタ数学と形式主義のプログラム、なぜかサントリー「山崎」

 近藤和敬『構造と生成1 カヴァイエス研究』の第3章を読んでいます。

 「見渡す」方法としての公理的方法の歴史的変遷において、「見渡す方法」としての公理的方法を、ヒルベルト(1898年頃)以前と、ヒルベルト以後に分けてみてきましたが、近藤さんは「ここで、可能な道は2つにわかれる」と先を続けます。

 1つは、じっさいにヒルベルトがこのあとに進んだ道、すなわちメタ数学と形式主義のプログラムにつながる道。もう1つは、ヒルベルトが選ばなかったけれども、ゲーデルの不完全性定理のあとでも無傷のまま残されることになる道、すなわちカヴァイエスが選ぶ道。

 前者は、「公理系を、公理系とは別のなんらかの内容に依存することなく、それとは独立に公理系のみによって維持可能な関係の記述とみなす道」、後者は、「公理系を、公理系とは別のなんらかの内容的なものに依存した関係の記述(あるいは「規則」の「概念」による把握)とみなす道」と説明してあります。

 で、ヒルベルトは「無矛盾=存在」のテーゼを提唱する話のあと、形式体系のアイデアを検討する必要があるということで、“もう1つの重要なアイデア”として「イデアルの添加」の話が出されています。なお、この用語そのものはカヴァイエスによるものらしく、ヒルベルトは「イデアルの一般的な方法」と述べているもよう。

 ただし、「つけくわえる」という言葉は、ヒルベルトが講義のなかで使っているようです。→「ユークリッド幾何学をえるためにはたったいま定義された領域に、どのような命題をわれわれは「つけくわえる」べきであるか?」(Toepellの文献による)

 論理学と算術を前提した上で、幾何学の諸定理を証明するためには、いかなる公理を「つけくわえることが必要なのか」ということが述べられているのですが、逆にいえば、「論理学と算術だけでは幾何学の定理が証明できない」という意味にもとれます。

 ほんでもって、公理は、ほかの公理からは証明不可能なものなので、「独立性」をもっているし、不必要な公理を使うべきではないという「方法の純粋化」の問題も生じる・・・という話をきいて、なぜかサントリー「山崎」を思い浮かべた私。例の、「何も足さない、何も引かない。」のコピーを思い出したのです。

 つまり、「いらないものも、不足しているものもない」という完全な状態のこと(公理系は熟成しないでしょうが…^^;)。ほかの公理から証明可能なものや、特に必要としていないものが公理として含まれていたら(そもそも前者は公理とは言わないだろうけれど)、その公理系は「いらないもの、無駄なものが入っている」ということになるでしょう。一方、必要なのに入っていない公理があると、それはそれで困ったことになってしまうだろうし。そうしてできた、「いらないものも、不足しているものもない」公理系は、ある意味、完璧な状態であり、ここに何かを足そうとするのは、けっこう勇気がいることなのではなかろうか?

 たとえば、何かの料理で、だいたい満足できる味になったあと、もうちょっとだけ何かを加えてみたいという衝動にかられ、塩を一振りしてみて全部が台無しになることだってありそうなこと。

 もし、「山崎」に何かを加えて、山崎をしのぐウイスキー(あるいは他の飲み物、この際、食べ物でもいい)ができたなら・・・

 ほんでもって、そのあとに続く難しい話を全部がーーーっととばして、とても魅力的なフレーズがある「可解性」のところもひとまずとばして、ゲーデルの不完全性定理による影響のところもとばして、せっかちに「結論」の節へ飛んでざざざっとながめていたら、次の項目が目にとまったのです。

<4> 公理(「イデアル・エレメント」)の添加が、内容そのものを変更することになる。
  (p.110)

 ここに巻末註の番号がふってあったのでのぞきにいくと、「デザルグの定理」の文字を発見。あらま。実はつい先日、全然別のことで、この定理を確認したところであり、なんだか最近、この定理とご縁があるのです。

 で、このさい、もう第3章のまとめを読んでしまえ〜!ということで、読みにいくと・・・

したがって、カヴァイエスのかんがえる「俯瞰」は、つねに部分的であり(そして場合によっては誤りを含み)、その境界は、「問題」と「解」の弁証論的生成をとおして、つねに揺らぎ続ける。それは、まさに、第2章の結論で述べたような真理の歴史的生成の描像にほかならない。

  (p.112)

 なるほどねぇ〜〜 とはいえ、「問題」と「解」の弁証論的生成について、もう少しちゃんと読まなくちゃ・・・
近藤和敬『カヴァイエス研究』 | permalink
  

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