TETRA'S MATH

数学と数学教育
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作用する行列・作用するベクトル

 行列の1次変換の有名な実践に「小沢猫」があります。1975年頃に小沢健一先生が発案されたものです。

tomodak先生のページ↓
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/
grapes/resource/bin/LinearMap.pdf


 1つの点(xとyの組)を、1つの行列を使って移動させることで、猫ちゃんがいろいろな形、いろいろな向きに変換されます。

しもまっち先生のページ↓
http://www5b.biglobe.ne.jp/~simomac/
grimg/grp18.htm


 このときの行列は、“はたらきかけるもの”という感じがします。

 つまり、上記の行列は、拡張された「帰一法」で確認したベクトルの Y=AX という式のAにあたるものにも見えてきます。
 
 一方、お会計不透明カフェでは、不透明な単価の組に、ひとつだけ「1」を要素としてもつ縦長ベクトルをうしろからかけてやることで、それぞれの単価を知ることができました。その縦長ベクトルを組み合わせてつくったのが単位行列ですが、この単位行列はもとの行列をそっくりそのまま再現することができます。

 また、1と0の縦長ベクトルの組み合わせをかえると、はたらきかけて1列目と3列目を入れ替える行列や、全部2列目だけにしてしまう行列もできます。

  

 上記のような1と0で構成された行列は、どの行列に対しても同じ作用を起こしますが、1つの行列に対して、その行列だけに意味ある作用を起こす行列もあります。

 たとえば、逆行列。うしろからかけても、前からかけても、単位行列にすることができます。

  

 先日、ベクトルの計算について「レストランの会計」と「お会計不透明カフェ」で考えましたが、カフェの場合についてお店とグループをそれぞれ4種類にふやすと、次のような行列の計算になります。4つのお店のコーヒー、ミルクティー、ジュース、アイスクリームの単価と、4つのグループが注文した数から、それぞれの場合の合計金額を計算して並べたものです。

  

 このうち、A店でグループEが注文したときのお会計を抜き出すと、次のようになります。

  

 A店の単価の組はベクトルであり、グループEの注文数の組もベクトルですが、合計金額はベクトルではなく量です。こういうふうにベクトルと量を区別するときの「量」はスカラーとよばれているようです。

 上記の計算の答えの行列は、いわば16この内積が並んでいるようなものですが、並んでいるので、全体としては量ではなく、行列です。この行列から、1つの量を抜き出すにはどうしたらいいか?  というわけで、C店でグループFが注文したときのお会計1620円を取り出す方法について考えます。ただし、4つのお店の単価表としての行列は動かせません。ここから横長の行ベクトルを抜き出すことなく、1620円を取り出す方法について考えます。

  

 まず、いまはグループFしか考えなくていいので、かける行列をグループFのみの列ベクトルにかえます。

 
  


 こうして、合計金額が4つに減らせましたが、まだこれはベクトルです。なので、いま出た答えに行列に、今度は左から(0 0 1 0)をかけます。

  


 こうすると、1620円という1つの金額としての量が取り出せます。以上の作業を1つの式にまとめると、次のようになります。

  


 あるいは、先にC店でのお会計にしぼったあとに、グループFの金額だけを抜き出す方法もありそうです。

 この計算は、1つの行列の左右からベクトルをかけることによって、行列の中から量を抜き出す作業になっています。いってみればこれは、行列から量を抜き出す「ベクトルの作用」です。

 行列力学における状態ベクトル、およびブラケット記法は、つまりはこういうベクトルの作用の話なのだろうと、現段階の私は理解しています。
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