TETRA'S MATH

数学と数学教育
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拡張された「帰一法」

 「10cmで2gの針金は、30cmで何gになりますか」

という問題を出されたとき、私だったら、30÷10=3(倍)、2×3=6(g)という計算をすると思います。30cmという長さは10cmという長さの3倍なので、重さも3倍になる、という考え方です。しかし、

 「7cmで35gの棒は、15cmで何gになりますか」

という問題だったら、35÷7=5(g/cm)、5×15=75(g)と計算しそうです。15cmが7cmの何倍かと考えるのは面倒なので、1cmあたりの重さを利用して、15cm分の長さを求める、という考え方です。 

 これらの考え方にあえて名前を与えることにして、前者を「倍比例」、後者を「帰一法」とよぶことにします。

 倍比例も帰一法も2段階の計算で答えを出していますが、倍比例の場合は、最初の段階で出てくる「3」は量ではありません(といていいかどうかには微妙な問題がありますが)。これに対して後者の帰一法の場合は、最初の段階で出てくる「5」も量です。ただし、長さでも重さでもない、「1cmあたりの重さ」という新しい量です。

 別の言い方をすれば、倍比例では最初に同じ種類の量どうしを計算(長さ÷長さ)しているのに対し、帰一法では最初に違う種類の量の計算(重さ÷長さ)をしています。

 そうして、どちらの場合も、針金や棒は均質であることを前提にしています。

 さて、上記は小学校での算数の問題として考えた場合ですが、これが中学校での比例の練習問題だとすると、解法が変わってきます。

 「7cmで35gの棒は、15cmで何gになりますか」

   棒の重さは棒の長さに比例するので、
   棒の長さをxcm、重さをyg、比例定数をaとすると、
   y=axと表せる。
   x=7のとき、y=35なので、35=7aより、a=5
   よって、y=5x
   これにx=15を代入すると、y=5×15=75

 この場合の比例定数5は棒1cmあたりの重さなので、比例定数を求めることで答えを出す方法は、帰一法そのものということになります。つまり、aの値は、x=1のときのyの値であるので、「帰一法」というネーミングもぴったりです。

 さて、この問題を多次元量のベクトルの考え方にあてはめて考えます。レストランでの会計お会計不透明カフェも、かっこの中に4つの数値が入っていて、いわば4次元の世界を考えていましたが、こちらは「1次元」の世界です。つまり、7cmで35gの針金の関係を、

       (?)(7cm)=35g

と表す世界です。(  )は本来「要素の組み合わせ」つまりベクトルなのですが、要素が1つしかないもんだから、どちらも単に数値をかっこでくくったものになっています。

 これを帰一法で解くというのはどういうことかというと、(?)に(1cm)をかけたときの値(5g/cm)を求めるということです。

       (?)(1cm)=5g/cm

 したがって、15cmの重さは、

       (5g/cm)(15cm)=75g

となります。

 逆に言えば、お会計不透明カフェでの合計金額をY円、単価の組をA、それぞれいくつ注文したかの組をXとすれば、Y=AXという正比例のような式ができます。単価の組み合わせであるAが変わらない限り、いくつ注文するかで合計金額は決まるので、Xが決まればYが決まります。

   
  
 
 お会計不透明カフェでは、このAの要素をどうやって求めたかというと、

   

をかけることで、それぞれの単価を出すことができました。このように、多次元において
 
     
     

に対するYの値を並べたものは、いわば正比例での比例定数のようなものになります。遠山啓は『量とはなにか〈2〉』p.203において、これを“拡張された帰一法”と呼んでも差し支えないだろうと書いています。

遠山啓 | permalink
  

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