TETRA'S MATH

数学と数学教育
<< メタメタさんが「かけ算の順序」についての本を出版されます | main | 「お会計不透明カフェ」と単位ベクトル >>

ベクトルの内積を「レストランの会計」で考える

 高校でベクトルの内積をどう教えているのか、また、私はどう教わったのかを調べてみることにしました。

 まず、自分が高校生時代に使っていた参考書(『チャート式 基礎と演習 数学IIB』/数研出版/昭和56年発行)をのぞいてみます。(ベクトルは下線をつけて表しました↓)

0でない2つのベクトルabがある。定点Oが始点となるように平行移動して、OA=aOBbと表したとき、OAとOBとのなす角θ(0≦θ≦π)をベクトルa、bのなす角という.また,このとき|a||b|cosθを2つのベクトルab内積といい、記号abまたはabで表す.


 そして、平成9年発行の東京書籍の教科書「数学B」も、ほぼ同じ記述になっています(ただし、平行移動という言葉や、最後の(ab)という表記はなし)。教科書ではこのあと、abのとき内積は0になることや、内積の基本性質、成分表示 ab=a1b1+a2b2 と続き、内積の応用として、法線ベクトル、点と直線との距離、内積と円、中線定理などの図形の性質と内積との関係などが示されています。また、空間におけるベクトルの内積も示されています。

 成分で考えると、内積というのは、対応する位置にある成分どうしをかけあわせて、それらをたす計算に見えます。

 さて、ベクトルは矢線ではなく多次元量で教えるべきと主張していた遠山啓()が出している内積の例には、角度やcosθといったものはまったく現れておらず、「レストランの勘定書」で示されています(『量とはなにか−機戞紳析瑳]瑳辧p222)。この例を使うと、上記の、対応する位置にある成分どうしの積の和としての内積がしっくりしてきます。

 何人かの仲間でレストランに行ったときに、

   コーヒー(70円←!)を注文した人が4人、
   紅茶(60円)を注文した人が6人、
   ライスカレー(120円)を注文した人が7人、
   チャーハン(150円)を注文した人が3人、・・・・

であれば、合計の計算は、

  70×4+60×6+120×7+150×3+・・・

となります。つまり、かけて、たす。これを行列で書けば、

   

となります。『量とはなにか−機p.222で書かれてあるのはここまでなのですが、たとえば、もう1つ他のお店の値段が加われば左側の[  ]内の数値は2行になるのだろうし、別のグループ、あるいは別の日に行った注文数を加えれば、右側の[  ]内の数値は2列になるのでしょう。

 で、ふと思ったこと。

 内積は、2つのベクトルをもとにした計算ですが、出た答えはベクトルではありません。高校の教科書にも、「内積abは、ベクトルではなく実数である」という注意書きがあります。

 しかし、上記のレストランの会計の場合、つまり、ベクトルを多次元量として捉える場合、もとの数値と出てきた数値に大きな違いはないように思えます。どちらの数値も、数あるいは量を表している。さらに、左側の[   ]内の数値の単位は「円」で、出てきた答えの単位も「円」。単位も同じ。

 がしかし、違うこともある。左側の[   ]内の数値は単価なので、より正確には、「円/個」。これに対し、内積の答えとして出てきたものは、合計の金額なので、単なる「円」。
>下に追記あり

 なんだかこのあたり、小学校の算数とつながってきそうな予感がします。

 

 

〔追記〕 上記のような書き方は間違いだとあとで気づきました。[   ]は数値の“組み合わせ”であり、出た答えは1つの金額だから、違う種類のものである……ということが、「ベクトルと実数の違い」に対応するのでしょうね、きっと。では、「数値の組み合わせの要素が1つだったら(1次元だったら)?」と思うわけなのでした。 

遠山啓 | permalink
  

サイト内検索