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数学と数学教育
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存在モデルby郡司を単純にベキ集合の話として考える

 郡司ペギオ−幸夫『時間の正体』の第4章2節でベキ集合の話が出てきます。運動の流れと時間の流れを考えるための、存在のモデルなのですが、そういうことをいったん抜きにして、単純に集合の話として考えています。なお、『時間の正体』に書かれていないことも、私の理解と都合でかなり加えています。

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 X={a,b,c}という集合を考えます。

 そして、集合Xのベキ集合(部分集合をすべて集めた集合)をYとすると、

 Y={Φ,{a},{b},{c},{a,b},{a,c},{b,c},{a,b,c}}

となります。

 これから、とても大胆なことをしたいと思います。XとYを同じものにしたいのです。がしかし、XとYは違うものなのだから、同じものにはなり得ません。せめて同じようなものにできないか? と考えてみたとき、同じようなもの・・・という言い方もなんだか曖昧なので、1対1に対応させられるような関係にできないか?というふうに考えてみます。

 そのためには、要素の数をそろえなければなりません。そこで、集合Yの要素をなんとか3つにできないか考えてみます。集合Yの要素は8こあるわけなので、これを3つにするためには、要素を5つ減らさなくてはなりませんが、単純に減らしてしまうともはや違う集合になってしまうので、減らすというよりも、集合Yの見方を変えて、8つの要素を3つの要素に組み替えることを考えてみます。

 で、せっかくの(!?)ベキ集合なので、Yの要素を0と1の記号で表すことを考えます。どういうことかというと、ベキ集合の要素、つまりXの部分集合を考えるときには、Xの要素a、b、cのそれぞれを含むか含まないかで考えていくことができ、含まないときには0、含むときには1として、abcの順で表していくと、{a}=100,{b,c}=011,{a,b,c}=111というふうに表すことができます。全部の要素をこの方式で表すと、

 Y={000,100,010,001,110,101,011,111}

ということになります。こう表記した上で、要素を3つに減らすために,0と1が混じっているもの、つまり,100,010,001,110,101,011の6つの要素を、「0と1が混じっている」という観点で1つの仲間と考えれば、

 Z={0だけ,0と1が混じっている,1だけ}

というふうに、3つの要素にまとめた集合を作ることができます。

 さて、とりあえず要素数は3つに減らせましたが、要素の重みは違います。何しろ、0と1が混じっているものは、6つを1つにしたものだから、000と111より重いです。このことを、3枚のコインの動きで考えてみます。

 コインの裏を0,表を1として表した場合、3枚のコインを区別した状態では、Yと同じ8つの状態が考えられます。しかし、コインを区別せずに、表と裏の組み合わせだけで考え、しかも、1枚だけ表と1枚だけ裏の場合を表と裏が混じっている状態とみなして同じものと考えると、3枚のコインの状態はZの3通りとみなすことができます。

 しかし、3枚のコインを投げたときの表裏の出方の確率を考えるときには、Yの要素数で考えなければなりません。つまり、000,100,010,001,110,101,011,111のどのならびになるかはそれぞれ1/8なので、これをZの要素で考えると、「0だけ」になる確率が1/8、「0と1が混ざった状態」になる確率が6/8、「1だけ」になる確率が1/8なので、「0と1が混ざった状態」になりやすい、ということが確率的にはいえます。で、000や111を秩序ある状態と考えて、0と1が混ざった状態を乱雑な状態と考えれば、秩序から乱雑さへという運動の流れが出現するというわけです。

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 単純に集合の話だと考えれば、それなりに理解はできるのですが、これって、要素数3の場合にしか言えないことだよなぁと私は思いました。そう思うにいたるまでもかなり時間がかかったのですが。0のみ、0と1の混合、1のみというふうに集合をまとめると、どんな集合のベキ集合の場合も要素は3つに減ってしまうので、もとの集合と要素をそろえられるのは3だけです。もちろん、要素数が増えたら、01111と00011を区別するといったような方法で、“まとめかた”を変えることはできると思うのですが。そもそも、要素数をそろえることにどんな意味があるのか?という根本的な疑問もあります。

 そして、これより少しあとの部分で、今度はもとの集合の要素をベキ集合の要素数にあわせる“増やすバージョン”が出てくるのですが、こちらはスペースの関係で{a,b}という要素2の集合を使っており、「割れる」という方法で{a,a´,b,b´}という集合を作ってあるのです。しかし、同じ方法で{a,b,c}の要素を8こに増やすことはできません。

 ちなみに、“減らすバージョン”の話のあとで、{赤,青}という集合に関する話が、プランクトンを摂食して自らに色をつける動物と、画家が絵を描くときの例で語られています。最初の“減らすバージョン”も要素2の集合で説明してあったら、とりあえずの一貫性はあったのになぁ、と思ってしまう私です。ただしそうなると、要素数の「2」にとても大きな意味ができてしまうわけなのですが。

(つづく)
郡司ぺギオ-幸夫『時間の正体 デジャブ・因果論・量子論』 | permalink
  

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