TETRA'S MATH

数学と数学教育
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ヒュームの原理とジュリアス・シーザー問題

 金子洋之『ダメットにたどりつくまで』のp36に「ジュリアス・シーザー問題」という言葉が出てきます。どうやらこの問題がフレーゲに方向転換を強いたようなのですが、『算術の基礎』の第56節の中に、そのジュリアス・シーザーがちょっとだけ出てきます。
・・・、ある概念に数ジュリアス・シーザーが帰属するかどうか、この周知のガリアの征服者が数か否かを決して決定しえない。
 数ジュリアス・シーザー? なんだそれは。

 そもそもジュリアス・シーザー問題とはなんなのかが知りたかったので検索してみたところ、大西琢朗著『フレーゲの論理主義と数の存在論』という論文を見つけました。シーザー問題についてはp6に書いてあります。要約すると、「ヒュームの原理によって、数詞が片側にしか現れていない文の真理値を決定することはできない。」という問題のようです。

 ヒュームの原理についてはp3に説明があります。


〔ヒュームの原理〕---------------------------------
 N(F)=N(G) iff F eq G.  
 任意の概念FとGについて、概念Fに帰属する数と概念Gに帰属する数が同一であるのは、概念FとGが等数的であるとき、すなわち概念Fの下に属する対象と概念Gに属する対象を一対一に対応づける何らかの関係が存在するときそのときに限る。
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 で、フレーゲ『算術の基礎』第56節にもどりますと、フレーゲは第55節で示したような定式化には満足しえず、特に最後の定義は疑念を引き起こす公算が一番大きいとして、
厳密に言えば、「概念Gに数nが帰属する」という表現の意義を我々が知らないのは、「概念Fに数(n+1)が帰属する」という表現の場合と全く同じことだからである。
と語ります。第55節で示したような定式化で「概念Fに数1+1が帰属する」が何を意味するかを言えるし、これを用いて「概念Fに数1+1+1が帰属する」という表現の意義を述べることもできるけれども、ある概念に数ジュリアス・シーザーが帰属するかどうかを決定しえない、さらには、もし概念Fに数aが帰属し、そしてそれに数bが帰属するならば、a=bでなければならないということを証明しえない、と。
したがって、「概念Fに帰属する唯一の数(die Zahl)」という表現は正当化しえず、そのため、数の相等性を証明するのはそもそも不可能となろう。
 なお、この節ではヒュームの原理は出てきていません。例の第61節、第62節を経て、第63節において、相等性についてのヒュームの原理を示したのち、相等性という関係が現れるのは数の場合だけに限らないことに触れ、基数概念はまだ確立していないこと、我々の意図は「両辺に数がくる等式として見なせる判断について、その内容を形成すること」「相等性を特にこの場合のために説明することではなく、既知の相等性概念を用いて、互いに等しいと見なせるものを獲得すること」であることを確認しています。

 そして第64節では、直線aと直線bの平行の話になっていくのです。

 確かに唐突。そっちに行ったんかい?という印象は否めません。こういうフレーゲの態度をどのように解釈するかをめぐって、ダメットは長大な議論を行っているそうです。

 で、第68節では、「概念の外延としての基数」なるものが出てくるのでした。

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 このあともざっとでいいから読みたかったし、これ以前ももう少しちゃんと読みたかったのですが、『算術の基礎』を図書館に返却する日になってしまいました。1回延長して4週間借りたけれど、あと2週間借りたかったな・・・。でも、この4週間のおかげで、『ダメットにたどりつくまで』の例の4ページが読みやすくなったのではないかと期待しています。結果的に原典にもどったのは正解でした。というわけで、そろそろ金子洋之『ダメットにたどりつくまで』にもどることにします。
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