TETRA'S MATH

数学と数学教育
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「量圏」のその先と、森ダイヤグラム

 銀林浩『量の世界・構造主義的分析』(むぎ書房/1975)の章立ては、次のようになっています。

   第1章 量の一般論
   第2章 外延量
   第3章 内包量
   第4章 比例関数
   第5章 微分と積分の意味
   第6章 多次元量と線型写像
   第7章 終曲−ベクトル解析

 そして最後で、「量圏」「線型空間圏」「関数圏」「多様体圏」が、いわゆる“森ダイヤグラム”でまとめられているのです(なお、森ダイヤグラムという名前は出てきません)。

 森ダイヤグラムというのは、森毅先生が考案したダイヤグラムで、次のような形をしています。

   

 この形自体は見かけたことがあったのですが、森毅先生の考案だということは『量とはなにか−供戮硫鮴癲柄島高敬先生)で知りました。右上に向かう矢印は局所化することで、右下に向かう矢印は多次元化することを示しています。たぶん、数教協の高校の先生にはおなじみの図ではないかと思います。

 遠山啓は1960年代に、数学教育の現代化を追求する中で、高校数学の3本柱「微分積分」「線型代数」「記号論理」を提案していました。このうちの微分積分と線型代数の部分を森ダイヤグラムであわすと、

   

となります(たぶん、これが森ダイヤグラムの原形だと思うのですが、詳細は確認できていません)。上の図を見ると、正比例の指導の重要さが強調されていたわけは、将来を展望したうえでのことだったとよくわかります。

 なお、遠山啓と森毅の視点は少しちがっていたそうで、たとえば微分することを

   

というように商のかたちでおさえるのか(遠山啓)、

   

というように積のかたちでおさえるのか(森毅)といった論点があり、正比例の指導のしかた、内包量の指導のしかたにまでさかのぼって、いろいろな議論と結びついていったのだそうです。
 森ダイヤグラムに触発されて、山野煕先生は高校の教材全体の系統図を書いたそうだし、銀林先生はこれを<幾何−図形と空間>についてのダイヤグラムに翻訳したそうです。

 そして、『量の世界・構造主義的分析』の中にも、この形の図は何度も出てきます。






 さらに、最後で次の図が出てくるのです。



 私は途中をとばして結末を最初に見たときに、「それがオチかい!?」という、ちょっと残念な感じを受けました。このダイヤグラムでおさめられる話なのであれば、わざわざ圏という新しいものを持ち出すことはないのではないか、と思ったのです。あるいは、圏って結局そういうものなのかな?(いままでと同じ図で表せるようなことを、少し形をかえて表したものなのかな)とも思いました。屋上屋にまた屋根を重ねる雰囲気は感じないし、構造と素子のことはどうなったんだろう?(

 銀林先生は、
何度も出てきたダイヤグラム(上の図)は,ここにおいても立派に成り立っているのである。
と書いておられるのですが、この図が成り立つところに意味があるのでしょうか。あるいは、この図が成り立たないと逆におかしいということになるのでしょうか……

       *     *     *

 さて。

 圏についてはあいかわらず学び始めた感触さえない状態ですが、ここらでいったん蓋をしてしばらく醸すことにしました。
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