TETRA'S MATH

数学と数学教育
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内包量は正比例関数を媒介する

 銀林浩『量の世界・構造主義的分析』を読んでいます。きょうはまた第4章にもどります。

 自動車の例では、正比例関数から走行能率という内包量が生み出されることがわかりました。では逆に、内包量があれば正比例関数が生じるのか?という疑問がわいてきます。

 第3章に出てくる直接的な内包量mは、2つの外延量の章y/xなので、y/x=m(内包量の第1用法)より、mx=y(内包量の第2用法)という式が導けます。よって、

          内包量×外延量=外延量

               m×x=y

となり、いま、xとyを変化する量として考えると、これは関数

          f:x |―――→ mx=y

を生み出します。内包量mを一定に保っておけば、これは斉次1次関数だから、正比例関数です。したがって、「内包量は正比例関数を媒介する」ことになります。

 たとえば、物質密度pkg/m^3が一定であると、体積Vm^3に対してその質量pVkgが対応させられます。したがって、密度は体積を質量に変換する関数だということになります。また、発熱量は重さを熱量に変えるし、単価は「もの」を金額に変えるし、斜面勾配は長さ(水平距離)を長さ(鉛直距離)に変えるし、流量は時間を体積あるいは質量に変えます。

 そして、速度は時間を距離に変えます。

このことの意味はきわめて興味深い。実際,運動(あるいは移動)というものは,時間とともに位置を変えることであるから,運動こそは時間を変位に変える働きそのものであるといえる。この働きが格別重要なのは,それが人間認識の最も基本的枠組である時間と空間を互いに変換するからである。

(p.146)

 そんなふうにして、それぞれの内包量について正比例関数が生まれるのですが、内包量をこのように比例定数として解釈することは、正比例関数の理論が確立したから可能となったのであることに注意すべきだ、と銀林先生は書いておられます。

第3章で分析した典型的内包量は,このような関数概念をへずに直接構成されるものなのであって,このように事後的に(à posteriori)のみ正比例関数を生み出すのである。
 こうして,正比例関数,つまり法則があれば内包量が生み出され,逆に内包量は関数の役割をも果たす。ここに,第1章§2(18ページ)に述べた量と法則とのカテゴリ論的からみ合いがある。

(p.147)

 このあとしばらくは、黒表紙や緑表紙など、国定教科書時代の比例教育の問題点について語られており、三数法、帰一法、倍比例の話が続きます。そのなかから、倍比例を採用している第4期国定教科書(緑表紙)の内容、およびそれに対して銀林先生が循環論法であると指摘しているわけを見ていきます。

 

〔2018年3月22日:記事を整理・修正しました。〕

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