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数学と数学教育
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抽象的な関数より、具体的な内包量

 銀林浩『量の世界・構造主義的分析』の第4章を読んでいます。

 正比例関数はすべて y=ax の形をしているわけですが、このときの係数aは、単位入力1に対する出力f(1)で、これは特に正比例関数fの比例定数とよばれています。

 自動車の例でいえば、ガソリン消費量 x リットルを走行距離 y kmに変える働き f は正比例関数で、比例定数 a は x=1 に対する yの値、つまり1リットルのガソリンで走れる距離ということになります。この値が大きいほど同じ1リットルのガソリンで遠くまで走れるので、この内包量は、自動車の走行能率あるいは走行経済性を表すものとみられます。

 こうして、ガソリンの消費量 x リットルに対して自動車の走行距離 y kmを対応させる正比例関数 f から、自動車の走行能率 a km/リットルという内包量が生み出され、

          y=a × x
  
   走行距離=(走行能率)×(ガソリンの量)

という関係が成り立つことがわかりました。

いいかえると,最初に関数fを考えた段階では,fは現実の自動車の機構を介する抽象的な働きであったが,今や走行能率という具体的な意味をもった1個の内包量がその裏付けをすることになった。そして,この働きfは,
       (内包量)×(外延量)
という量の演算(第2用法)によって処理されることになったのである。
 まず,このことは,人間の認識にとって大きな前進であることに注意しよう。抽象的な関数で考えるより,具体的な内包量で判断する方が,はるかに直接的でわかりやすいからだ。関数が1つの量に姿を変えたことは,
       「働き」から「物」へ
移ったわけで,後者を土台にしてさらに先へ分析を進められることをも意味する。たとえば,2台の自動車のどちらが経済的かを比較するのに,いちいち走らせていたのではかなわない。走行能率という1つの量になっていれば,数値をみるだけで直ちに比較できるのである。

(p.143〜144)

       *     *     *

 たとえば、温室効果ガス排出量取引の話において原単位方式という考え方が出てくるのも、生産量あたりの排出量という内包量が1つの指針になりうるからだと思います。総量をおさえたいのであれば、生産量をおさえるか排出率を下げるかのどちらか(あるいはその組み合わせ)になるのでしょうが、生産量をおさえるということは経済成長を阻害することにつながり、それよりも排出率を下げることそのものに目を向けるべきだ、というのが原単位方式を求めている人たちの意見なのだろうとニュースを読む限りでは理解しています。つまり、「生産量あたりの排出量」(排出率)というものが、省エネ努力を示す具体的な数値とみなされるから、原単位方式という発想が起こり得るのでしょう。

 

 

〔2018年3月22日:記事を整理・修正しました。〕

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