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数学と数学教育
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柳宗理は、なぜ「花紋折り」に惹かれたのか。

 『花紋折り―内山光弘の世界』(民芸叢書)は、柳宗理さんの編集・監修になっています。柳宗理さんが内山光弘さんを激励していたことは昨日のエントリ「内山光弘という生き方」に書きましたが、柳宗理さんはいったいどこで内山光弘さんの作品に初めて出会ったのでしょうね。光弘さん本人に初めて会ったのは病室で、光弘さん88歳のときだそうです。病室のベッドの上できちんと正座して、一生懸命、花紋折りを折っておられたそう。その姿に感激するとともに驚いた、と書いておられます。

 上記の本は監修者である柳宗理さんの文章から始まります。これがまず面白い。私は建築やデザインのことはよくわからないので、よくわかる人が読んだらもっと面白いかもしれないし、あまり知らない私だから面白いのかもしれません。

 さて、なぜ柳宗理は「花紋折り」に惹かれたのか?
 それはおそらく、「花紋折り」が大変に“モダーン”な美をそなえていたからだろうと思います。折り紙という伝統的な手法の本質を極めると、非常にモダンな表現になる。ということに柳宗理さんは感銘を受けたのではなかろうか。と、序文から想像しています。

 「花紋折り」は何かの具象ではなく、リアルな表現を求めたものではありません。いわゆる、幾何学的な模様を楽しむものです。正方形あるいは正多角形型の紙の角を一様に折り畳み、中心点で交差させ、互いに入れ子にするのが基本で、この折り型にさらに色々な工夫を加え、色の違う紙を重ねると、様々な幾何学模様が生まれます。なお、この「花紋折り」は、日本で古くから懐紙や小物入れとして使われていた「畳(たとう)紙」と、伝承折り紙の「風車」の折り方に想を得て作り出されたものなのだそうです。

 柳宗理さんは、「花紋折り」の魅力をマックス・ビルの抽象絵画を引き合いに出して語っています。
 その形態は直線的構成によっていて、マックス・ビルの抽象絵画のように、すこぶるモダーンです。マックス・ビルの抽象絵画は、多分に彼自身の美意識感覚によって構成されていますが、花紋折りは、数学的法則のもとに構成され、その法則より自然発生的にその模様が現れるわけです。
 「自然発生的」という感覚は、実際に折ってみるとわかるかと思います。たとえて言うならば、色紙を何度か折って切り込みを入れたあと、開いて模様を楽しむ遊びに似ているかもしれません。最初の条件、あるいはどういう紙を使うかは自分の意志だけれど、そのあとは「自分で創っていく」作業ではないわけです(折るのは自分だけど)。柳宗理さんの言葉を借りれば「論理的で、自然法則に則って」いる。だから、自分で折っているのに、できあがりが楽しみ。

(以下、序文より要約)

// 鶴、兜、あやめ、お三方等、日本の花鳥や道具などを表している日本古来の折り紙は、折り紙という技術によって、それぞれのテーマの特徴をよく捉えて、強調し、単純化し、凝縮化している。紙を折ることによって生まれたその姿は、爽快な簡潔さがある。ところが今日では、かつての折り紙の表現に飽き足らなくなったせいか、いろいろ工夫を凝らした現代折り紙なるものが出現した。動物や人間を巧みにレアリスティックに表現したもの。それらは巧妙に折られてはいるが、技法に懲りすぎてかえって表現が末梢的になり、折り紙の本来の良さである簡明さ、単純で素朴な力強さというものがなく、無理な箇所で折ったり、切り取ったり、刻みを入れたりして、どこか不自然なひ弱い姿になってしまった。//(要約終わり)

 私の個人的な印象(というか個人的状況?)としては、リアルな折り紙のみならず、幾何学的なものも根強い人気があり、どちらも折り紙愛好家のもとで製作され続けてきたのではないかと思いますが(あるいは流行すたりがある?)、テレビで見る「折り紙選手権」などの作品は確かにリアルな現代折り紙で、いまのご時世、折り紙の達人といえばこういうリアル折り紙の達人を指すのかもしれません。それは、「折れる人しか折れない」折り紙だからなのでしょう。ユニット多面体では折り紙選手権にならないか。

 でも、この「花紋折り」は、内山興正さんもおっしゃっていますが、原理は単純だけどきれいに折るのは簡単ではないです(花紋折りの前に紫陽花でもヒーヒー言うくらいの不器用な私だから、あまり参考にならない意見かもしれませんが…^^;)。

 久しぶりに折ってみました↓。久しぶりというか、この形に挑戦したのは初めてかも(ピンクの中央部分が対称になってないし、緑のところ折り目ごまかしているのバレバレ^^;)。

   

 実際に光弘さんがどのように折られていたかはわかりませんが、私の感覚では、普通の折り紙とも少し違っていて、「作図→折り目をつける→折り込む」という作業であり(というか自分はそうしている)、作図と折り目の前半段階がけっこう大事だという気がします。早く折りたくて前半をおざなりにすると、きれいに折れない。これって何かに似ているなぁ〜と記憶を辿っていたら、家庭科で洋服を作ったときのことを思い出しました。型紙をきちんとひいて、ちゃんと裁断するのが大事。でも、型紙作りと裁断って面倒なんだよなぁ。楽しいのはデザイン決めと布選び、そして縫製であり。でも、裁断まで人がやってくれてそれを縫うのは、あまり楽しくないのかもしれないな。

 というわけで、「花紋折り」の魅力はそのモダンな形状にあるわけですが、内山光弘さんの作品群において、「花紋折り」のモダンな形状の魅力を存分に引き出しているのが、「紙」の選択であるように思います。

(つづく)
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