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数学と数学教育
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鳴川肇「オーサグラフ」/時系列と無限

 オーサグラフは正四面体を介在させて地表を平面展開したものであり、正四面体の展開図は平面を埋め尽くすことができるので、地図そのものをいくらでもどの方向にでも連続させていくことができます。また、連続させた地図のうちの1つ、地球1個分を、いろいろな形で取り出すこともできます。長方形型、平行四辺形型、正三角形型というように。

 連続させられるということは、時系列にそくしたなんらかのデータを1枚の画像に納めることができるということであり、その一例がICCで展示されているISSの軌跡だと思います。

 また、HIVEのプレゼン映像では、開始後31分後くらいで海流図の話が出されていました。 縦方向に月単位、横方向に年単位のデータを配したオーサグラフで、時系列にそくした海流の様子を一望できるのです。これすごいなぁ〜〜

 そうしてふと思い出す、中学数学の図形問題。直方体や円錐の表面を通る最短距離を、展開図を使って求める問題があります。三平方の定理の応用などでよく見かけます。たとえば、円柱の母線ABの点Aから、側面を1周して点Bまでいく場合の最短距離は、側面の展開図である長方形の対角線の長さと考えることができます。また、円柱を2周、3周する場合は、展開図をつなげて考えることができます。説明のために円柱を使いましたが、実際には直方体や円錐などの問題が多いかと思います。

 考えてみれば1周めも2周めも3周めも、通るのは同じ側面上です。しかし、展開図上で考える場合、切り開くことによって、1周めの終わりの点と2周めの始まりの点が分断されます。なので、それをつなげて連続させれば、同じ側面上にある経路を分断することなく、1つの経路として表現できるということになります。

 同じ経路を行き来する場合を考えると、話がもっとわかりやすくなります。母線AB上をAから側面を1周してBまで最短距離で行ったあと、BからAに同じ経路でもどったとき、立体の表面上に現れる道筋は1つですが、連続した2つの展開図では別の線分として表現されます。この経路を何度か往復した場合も、同じことがいえます。

 さて、私はICCの展示をみたとき、「ある地点を出発して、また同じ地点に到着(通過)したとき、それはまったく同じ地点であるか?」というようなことを感じたと書きました()。その、同じ・同じではない、という観点は、素直に考えると時の流れを意識したものだと思います。

 東京を出発して世界一周旅行をして帰ってくる間に、東京で大地震があったかもしれないし、首相が変わったかもしれない。行く前にはつぼみだったアサガオの花が、帰ってくるころにはもう枯れているかもしれない。そういう時の流れが1つの平面上に並列しており、それを一望できることの不思議。

 また、だれかが世界中を旅行している間、私はずっと東京にいたとしたら、その人の旅行の経路を表すシームレスなオーサグラフの中で、私の位置はいくつかの「点」として示されるのだろうか? 考えてみれば、東京を出発した次の瞬間にもう東京は別の東京になっているわけなのですが、その変化はオーサグラフには示されません。

 シームレスでつながるオーサグラフの威力は、地球規模で動く「何か」を表現するときにいちばん発揮されるのでしょう。なるほどISSの軌跡や海流というのはわかりやすいです。いまは世界地図を考えていますが、オーサグラフの原理がさまざまなものに応用できることを考えると、スケールもいろいろに変えることができるように思います。

 さらに思うことは、オーサグラフによる世界地図の連続・繰り返しの作業はいくらでも続けることができるけれど、現実には限りがあり、目的・用途に応じて必要なスパンで区切るのが実際の作業になるということ。つまり、オーサグラフは、原理的には時の流れを無限に表現することが可能であるけれど、それは原理的な話であり、現実として無限につなげることは不可能。

 どこまでいっても行き止まりがないということを、球体はそのままで表現できる。しかし、時系列表現をするために連続させたオーサグラフは、どこまでいっても行き止まりがないことは、約束されているが現実には示せない。同じ曲面上をぐるぐるまわっているだけなのに、永遠にどこかに向かっているように見える。まるで、球体上には存在しないはずの、地の果てがあるかのように。

 少々こじつけではありますが(そして意味が違うけど)、空間的無限と時間的無限のことなども思い出しつつ()、シームレスにつながるオーサグラフの不思議な“世界”について、想いをめぐらせています。

(つづく)

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