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数学と数学教育
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鳴川肇「オーサグラフ」/静止画としての長方形の可能性

 そんなこんなで、ICCでそれなりに面白い体験はできたものの、「もっとオーサグラフの説明をききたいなぁ」という気持ちを抱えて帰ってきた私は、自宅にもどるとさらに検索を続け、HIVEのプレゼン映像にたどりつきました。

 これを視聴したときの感動は、ICCで実物の展示を見たときより、はるかに大きかったです。なんというわかりやすさ、面白さ! うまいプレゼンだなぁ〜〜と思いました。

 どこに面白さを感じたのかを、大きくテーマとして分けてみると、自分にとっては「長方形」「時系列」「人間と球体の関係性」という3つのポイントがあげられそうです。

 まずその1つ、「長方形」について。
 私はこのたびダイマキシオン・マップというものの存在を初めて知りました。少し調べてみて、これをいままで知らなかったなんて…!と自分で思いました。不覚。テトラ愛好家という肩書き(?)を含め、いろんなものを返上したい気分。これはバックミンスター・フラーの発明で、いわゆるフラーレンの(命名のもとになった)フラーさんなのですね。ちなみに、検索途中で松岡正剛さんの『宇宙船地球号操縦マニュアル』にたどりつき、なんだかえらいことになってきちゃったな…とは思っていたのです。

 さて、あまり話を広げると帰ってこれなくなるのでまずはオーサグラフだ。そんなこんなで、球面を長方形におさめる投影法の話においては、メルカトル図法とダイマキシオン・マップの対比がとてもわかりやすいと思いました。長方形におさめながらも、面積や形に歪みがほとんどないオーサグラフは、メルカトル図法とダイマキシオン・マップのいいとこどりをした地図ということになります。

 地図の投影法の種類については、確か中学生くらいのころ何種類か名前と特徴を覚えさせられた記憶があります。メルカトルのほか、モンテカルロ…じゃなかったモルワイデ?グード?正積なんとか心射なんとか等。それぞれに利点と欠点があり、あちらをたてればこちらが立たず…という感じで、結局、目的に応じて投影法の異なる地図を使うのがよろしいしそれしかない、という結論だったのではなかろうか。また、理科として地球を考えたいのなら、球体として地球儀で考えるしかないのかもしれない。

 しかし、メルカトル図法のいいところ=余白がない長方形、の可能性について思いを馳せられたのが、素朴ながら新鮮な体験だったのです。

 たとえばプレゼンの中で、ハイビジョンの1:√3の比率の話が出ていました。これだけ技術が進んで情報化社会になったとしても、私たちは結局、視覚的情報をテレビやパソコン(あるいは携帯電話)の画面という「長方形」の世界でとらえているのではなかろうか。

 同じ長方形の画面上だとしても、立体をぐるぐるまわして視点を変えることにより、立体的に見せることはできます。あるいは、立体視というものもあるかもしれません。でも、基本は、長方形の表面に映し出された世界なのではなかろうか。

 ちなみに、プレゼンでは「テトラパック」という言葉も1回だけ使われていました。テトラパックを開くように、正四面体は長方形に開けるという話の中で。

 しかし、牛乳の三角パックは確かに長方形型に開けるのですが、むしろ話は逆で、長方形型のものを筒型にしたあと、上下を糊付けしていけば三角パックができるという、「平面→立体」の流れがミソだと思うのです。(そう考えると、パットラスはつくづく面白いなぁ!)

 一方、オーサグラフは、その逆をいったのが面白い。球面を平面に投影するために、展開図が平面充填できる正多面体である正四面体を選び、これを介在させるという妙(どういう経緯でオーサグラフが発明されたのかはわからないですが)。

 正四面体というのは、頂点が4つしかないので、頂点が多い正多面体や準正多面体に比べると、「球から遠い」という印象があります。でも、鳴川さんの説明をきいていると、やってできないことはないし、どうしていままでこの考え方はなかったのだろう!?と思えてきます。三角形の分割は96個だそうですが、正四面体なので4の倍数であり、各面が三角形なので3の倍数であることを考えると、12の倍数であることは納得できます。

 さらに、長方形から情報摂取をすることについて考えると、いまのご時勢、静止画よりも動画のほうが圧倒的に情報が多く、何を伝えるにも有効なはずです。立体をぐるぐるまわすのしかり。なによりも鳴川肇さんのプレゼンそのものが、アニメーションの力を物語っています。

 しかし、オーサグラフは、静止画としての地図の可能性を高めたところが、とても面白いと思いました。

(つづく)
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